#13 別れ
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ツバメが着替えて玄関を見に行ってからすぐに階段をドタドタ駆け上がって、ばんと部屋のドアを開けて戻ってきた。
「ローさん、さっさと着替えてどっかで2時間くらい時間潰してきてください!」
「?」
ツバメは焦った様子で何万か入った茶封筒を俺に渡す。
「なんなんだいきなり…」
「じいちゃん来ちゃったんですよ!」
「はあ…?」
「うちのじいちゃん!もう玄関にいるんです!」
下から「俺だーーー、おらんのかーーー?!」とじいさんの声と、ドンドンドンとドアを強く叩く音が聞こえる。
「…ああ…挨拶しねえとな…」
「馬鹿!!」
「ぶへっ!」
右ストレートをお見舞いされる。
「海賊と住んでるなんて知ったらローさんもろともぶっ殺されますから!さっさと能力で着替えて能力で出てってください!」
「いるなら出てこい!!」
「やべっ!!!」
「ぐほおっ!!!」
部屋のドアが開くと同時に収納の中に押し込まれる。
「なんだ、寝とったのか」
「さっきまでな」
クローゼットの隙間からこっそり様子を伺う。
仏のセンゴク…ツバメのじいちゃんが海軍元帥ってのは本当だったのか…。
「全く、想像通り堕落しとるな」
「いいだろ、昨日までずっと飛び回ってたんだから」
「ほう………?いっちょ前にキスマークなんぞつけおって」
「!見んじゃねえよクソジジイ!つかいきなりなんだよ、こっち来るなら連絡くらいしろよ」
「ああ、今日はお前に話があってきた…トラファルガー=ローの居場所は分かったか?」
「いや、まだだ、あいつ全然尻尾出しやがらねえ…期限内にできるかなあ…」
「そうか…まあいい、引き続きトラファルガー=ローを追ってくれ」
「承知しました」
「最後の任務が成功しようが失敗しようが、どちらにしても適合率98%で合格だ」
センゴクがツバメに何やら封筒を渡した。
「まさかここまでやるとは思わんかったぞ…」
「ま、俺にかかればこんなもんよ?」
「『殺戮の鬼才』とはよく言ったもんだ…まったく末恐ろしい奴だ…」
何の話だ…?
「復帰したら晴れて正式にSPADE配属だが、表向きには辞表提出済みのSWORD入隊ということになっている。お前もそっちの方が気楽だろう」
「まあ、そうだな…配属決まったらドリィみたいに自由にやっていいんだろ?」
「ある程度はな」
「俺表向きはフリーの殺し屋でやっていこうと思うんだ」
「殺し屋だと?」
センゴクが眉間に皺を寄せると、ツバメはセンゴクにあの黒い名刺を渡した。
「見てくれよ、名刺作ったんだぜ」
「『殺し屋レグルス』…?」
「さすがに本名は載せられなかったけどさ、かっこいいだろ?俺が半月で任務全部こなせたのはこの名刺のおかげだよ」
「どういうことだ…?」
「全体的に裏の人間じゃねーと入れねえところに入り込まねえといけねえのが多かったからさ。無名だからこういうのがねえとターゲットまでのツテも作れねえし情報も取れねえし、とりあえず肩書きがあれば信用してもらいやすい世界だからな。意外と海賊の情報もたくさん入ってくるんだ、面白かったよ」
「なるほど…確かにお前は海賊よりこっちの方が向いているだろうな」
センゴクは名刺をしげしげ眺めてから言った。
「用件はそれだけだが…お前の配属の件は他言無用じゃ。絶対に人には言うな。俺とお前しか知らんことだ。もちろん海軍の人間にも、ガープにもおつるにも言ってはならんぞ」
「分かった」
「あと恋人に関してとやかくは言わんが…避妊は忘れるなよ」
「分かってるようるせえな」
「あと2月に入ってから金遣いが荒すぎる。女か男か知らんが貢ぎすぎだ!」
「うるせえな、それこそ俺の勝手だろ!」
「1200万の次は50万!その次は6000万!桁がおかしいぞ!何に使っとるんだ?!」
「俺がいいと思ったんだからいいだろ。金はなくなったら稼げばいい」
「…お前の仕事量が異常すぎて給与額が普通じゃないことを先に教えるべきだったな…まあいい、困ったことがあったら連絡しろ…1日には帰って来い」
「ああ」
「身体には気をつけろよ」
「ああ」
部屋のドアを開けて階段を降りていく音がして、そっとクローゼットをあける。
「なんだ、殺し屋になるのか、お前」
「外に行けと言ったはずですが?」
「無理だろ」
「…3月から正式に殺し屋です」
「そうか」
「表立った行動はできませんが、今の立ち位置よりも自由が利くから、適性テストを受けることにしたんです。
この方が僕の裁量で仕事ができる…海兵には変わりないので次に会ったら敵同士ではありますが…それも状況次第、僕の気分次第です」
ツバメが俺にニヤリと笑いかけた。
こいつはこいつなりにいろいろ考えてくれていたのかと思うと、嬉しくなる。
「…やっぱりお前、俺の船に乗れよ」
「嫌ですよ、僕はローさんとはイーブンでいたい」
ツバメは煙草に火をつけた。
「殺して欲しい奴がいるなら殺してあげますし、とってきてほしい情報、開けたい金庫や牢屋やドア、解体して欲しい爆弾、特定したいアジト、などがあれば、10万ベリーで代行します」
「安いな」
「スバルくん割引です。他の奴らに吹っかけるから成立する金額です」
「僕はローさんのそばにいたいけど、その前に海軍将校ですから。
僕は僕の正義を貫ける場所から、あなたを守ります」
「そうか」
「愛してますよ、ローさん」
そう言って煙草をふーっと吹くツバメに、あの人が重なった。