#05 聖域
夢小説設定
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side.ロー
ブルーボーンの言ってたことを実行しようと思っていつもより1時間早く起きてみたら、リビングでスバルが片手腕立て伏せをしていた。
「2999…3000…ふう…おはようございます」
スバルが爽やかに言う。
こんなに寒いのに上は紺のタンクトップ1枚、下はグレーのジャージ。
真っ白な肌に汗が流れている。
「早いですね」
「お前、毎日筋トレしてんのか?」
「ええ、体は資本ですから」
「…何時に起きているんだ?」
「5時くらい?」
「早すぎだろ」
「色々やることあるんですよ」
いきなり難関だぞ。
5時起きはさすがに無理だ…。
「まだ朝ごはんできてませんし、もう少し寝てていいですよ」
「いや…」
眠いけど起きる。
料理はマジでできねえが…いやこういうのってできねえならやらねえ方がよくねえか…?
昔料理できなすぎてペンギン達に散々言われて皿洗い担当になったくらいだからな…だが喜んでもらえるなら…
「どうしたんですか?」
「いや、その…」
俺が言い淀むとスバルは不思議そうに俺を見て、シャワー浴びてきますね、と着替えを持って風呂場に入っていった。
…肌、真っ白だったな…じゃなくて。
せっかく起きたんだから何かやろう。
米はボタンを押すだけでできる状態っぽいし、多分この鍋の中に入ってんのをあっためて、あとは漬物を切って卵焼きと焼き魚か。
とりあえず炊飯器のボタンは押しておこう。
…卵焼きは分かんねえけど焼き魚ならできっかな。
冷蔵庫にあるのは鮭と鯖。
朝はいつも鮭だ。
…これってそのまま網焼きのとこに入れたらいいのか…?
あいついつもどうしてたっけ…まあいいか。足りなかったらあとで塩振ればいいし。
…で、これってどこがスイッチだ?
あ、これか?ついたついた。
…どれくらい待てばいいんだ?
確かガキの頃野宿してた時は…魚を棒に刺して、焚き火の周りに刺して…あれはうまかったが結構時間かかったんだよな…魚って生で食うとやばいからな…しっかりめに焼かねえと…
「ローさん大丈夫ですか?!」
10分か15分ほどでガラッと風呂場の扉が開いて、腰にバスタオルを巻いただけの状態でスバルが慌てて出てくると、俺を押しのけて火を止めた。
「何してるんですか?!」
「何って、魚を…」
「焦げてるじゃないですか!!!」
網焼きのとこを開けると、焦げた鮭が2切れ。
「うーん、焦げたとこ削ぎ落とせばいけるか…お腹空いてたんですか?」
「いや…」
「着替えてくるのでちょっと待っててください」
スバルは怒ることもバカにすることも呆れることもなくいつも通り淡々とそう言って脱衣所に入ると、いつものシャツとカーディガンと黒のパンツに着替えて出てきた。
「もしかして、手伝おうとしてくれたんですか?」
「えっ」
「いつもより起きるのがかなり早いから、何かやろうとしてるのかとは思ったのですが…」
「…まあ、その…全部お前がやってるから…」
「…ありがとうございます」
ふふっと笑ってスバルが言った。
「でもローさんいつもより早起きだから眠いでしょ?あと残りの味噌汁と煮物をあっためて卵焼いておにぎり作るだけですがゆっくりしててください」
「おにぎりってどう作るんだ?」
「へ…?」
「おにぎり」
スバルがぽかんとすると、タイミングよくご飯の炊ける音がした。
「一緒に作りましょうか」
スバルは炊飯器の蓋を開けて中身を混ぜる。
ボウルに半分移して、そっちにはかつおぶしとごまを混ぜる。
俺の好きな具材だ。
「これくらい手に乗せて」
「ああ」
「右手をこうかさねて」
「こうか」
「はい、で、こうです」
「…?」
隣でスバルの手を見ながらやっているが、何がダメだったのかスバルの綺麗な三角と全然違う丸々したのが出来上がって、スバルが思わず声を出して笑った。
「爆弾じゃないですかそれ!」
「うるせえ…」
「どうやって海苔巻くんですかこれ!あっはっはっはっは!」
こいつこんなふうに笑うのか…。
爆笑したとこ、はじめて見た。
「笑いすぎだ」
「はははっ…ふう、面白かった。食べましょうか」
食卓に皿を並べて、いただきます、と手を合わせた。
「僕、家のことやるの全然苦じゃないですよ」
スバルが煮物を食べながら言った。
「苦じゃないというか、ルーティーンを崩したくないんです」
「そうか」
「ええ、だからあまり考えなくていいですよ。いつもやってくれてるように朝起きたら布団干すのと、週2のゴミ捨てと、お皿洗うのと、お風呂の掃除と、洗濯物溜まってたら洗濯してくれたら助かります」
「分かった」
「あ、でも今日おにぎり作るの楽しかったから、いつもより15分くらい早く起きて、一緒におにぎり作りませんか?」
スバルがすげえ幸せそうな顔でそう言うから、こいつにはかなわねえなと心の中で思った。