#04 エリスの赤い薔薇
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『ビアード』に入るとペンギンが席まで案内してくれて、席に座るとこの間のマリーとミレーが俺とスバルの両脇に座る。
「「ローさんこんばんは♪」」
「スバルさん、はじめまして!マリーです♪」
「ミレーです♪よろしくお願いしますっ」
「こんばんは、スバルと申します」
きゃあああ〜かっこいいいいい!と二人ともミーハーな声を上げる。
「こういうお店ははじめてですか?」
「はい、だからちょっと楽しみでした」
スバルは二人ににこっと笑うと、二人とも顔を真っ赤にして革のソファーに倒れこんだ。
なんだその作ったような笑顔は。
「私も、スバルさんに会えてうれしいです…!」
「そう言っていただけると嬉しいですね」
「何か飲みますか?」
ミレーが言うと、スバルはメニューを開く。
「ローさん何か飲みますか?」
「俺は飲まねえ。お前飲みたいなら飲め」
「…なんか今日機嫌悪くないですか?」
「別に」
「そうですか…じゃあせっかく来たから1杯だけ…梅酒で」
「はあい♪」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
30分ほど経った頃には、なぜかスバルよりキャストの二人がベロベロに酔っぱらっていた。
「スバルさんってえ、どんな人がタイプなんですか?」
「タイプですか、そうですねえ…優しい人がいいなあ」
マリーが訊くと、スバルは当たり障りなく言う。
「いいなあ」ってなんだ。お前普段そんな言葉遣いしないだろ。猫被ってんの丸わかりだぞ。
「年上?年下?」
「うーん、年上…?」
「ええーっ、意外!」
「僕結構子供なんで、見ていてくれる人がいいなと思ったら年上かなあって」
「そっかー」
「あら、あなたがスバルくん?ペンとシャチが連れてきたっていう」
厚化粧の女が俺とスバルの間に割って入る。
「こんばんは…」
「こんばんは、私ここのオーナーのブルーボーン。あらまあ噂通りのいい男じゃない?」
俺が睨みつけるとブルーボーンはスバルに触れようとした手を引っ込めた。
「あらやだ、怖いわね」
「なんだてめえ」
「ローさん、店の人に喧嘩売るのやめてください」
「ボディーガードなんだから喧嘩くらい売るだろ」
「あら、頼もしいわね」
「すみません…」
「いいのよいいのよ!楽しんでいってね♡」
「ママ、そろそろいつものやつやっちゃいませんか?」
マリーが言うと、ブルーボーンがいいわねえ~!とテンション高く言って立ち上がる。
「ミレー、アレをお願い!あとペンとシャチも呼んできなさい!」
「はーい!」
「なんですか、いつものやつって」
「「「王様ゲエーーーム!!!」」」
「フウーーーーー!!!」
「イエーーーーーイ!!!」
「キャッハーーーーー!!!」
ブルーボーンとマリーとミレーが騒ぎ出す。
「あ、『エリスの赤い薔薇』に出てきたやつだ」
なにワクワクしてんだ。
「お前分かるのか?」
「王様になった人が他の人に命令するんですよね」
「そういうこと~♪さ、くじ引いて引いて!!」
ペンギンとシャチも後ろから来て、みんな一斉にくじを引いた。
「「「「「王様だーれだ!?」」」」」
「あ、俺っす」
ペンギンが割りばしを見せる。
「えっと、じゃあ、2番の人と6番の人がお互いの好きなところを5つ言い合う」
「げっ」
2と書かれた箸を見て思わず声が出る。
「僕6番です」
隣でスバルが箸を見せた。
「おお~同居人同士!」
「キャプテンとスバルくんなら10個にしよっかな」
「おい…」
「いいじゃないですか…こういうことがないと伝えられないこともあるでしょ」
ペンギンが俺の隣で耳打ちした。
「好きなところですか…」
スバルがうーんと考えながら俺の方を向く。
俺は俯いた。
「そんなに考えなくていいよ〜、優しいところ、とか、面白いところ、とかでいいよ!」
ペンギンが楽しそうに言った。
「なるほど、そういうことなら…僕からいきますね。えっと、強いところ、かっこいいところ、頼りになるところ、誠実なところ、賢いところ、真面目なところ、品があるところ、陽気なところ、仲間思いなところ、優しいところ…これで10個ですね」
おお…とみんな声を出す。
よくそんなすぐに思いつくな…
というか、俺のことかっこいいと思ってくれてんのか…。
ペンギンとシャチは感動してる。
「スバルくん、キャプテンのこと、本当によく見てくれてるんだね…っ俺感動した…」
「キャプテンへの愛を感じたよ…俺たちの仲間になって」
「お断りします」
「じゃあ次はローさん!」
みんなが俺を見る。
「…あー…金持ち、ツラがいい、頭がいい………」
指を折りながら考える。
「…真面目、品がある、陽気…」
「それ僕が言ったの丸々パクってません?」
「うるせえ」
やべえ、出てこねえ。
出てくるけどあんま言いたくねえ…。
なんとか絞り出す。
「………あー………かわいいところもある…」
「!」
スバルがちょっとびっくりしているのが視界の端に映る。
「よく喋るから会話に困らねえ…メシがうめえ…女にモテるのは腹立つが色気はあるし…掴みどころがねえから分かんねえな…ああ、きれい好きだなお前、これで10個か」
「キャプテン、11個言っちゃってます…」
「…!」
「というか掴みどころがないも入れたら12個言ってます」
「それはカウントされねえだろ」
「よく喋ると会話に困らねえとか、女にモテると色気があるを分けたら14個言っちゃってます」
…ドジった。
やべえ。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「改めて言葉にしてもらえると嬉しいものですね」
スバルは少し微笑んで、オレンジジュースを飲むと「ちょっとお手洗いお借りします」と言って席を立った。
…全く動じてねえ…。
「え~~~なになに!?キャプテンってスバルくん好きなの!?」
「声がデケエ!」
ブルーボーンが隣で騒ぐ。
「そっかぁ~、そりゃああんな可愛い子と一緒に住んでたら好きになっちゃうわよねえ~」
「きっかけとかあったんですか?」
マリーもミレーもノリノリだ。
ブルーボーンなんか俺の肩組んできやがった。
「だから好きじゃねえって」
「またまたあ…素直に認めちゃいなさい!『恋はいつもハリケーン』だしね!」
「なんじゃそりゃ」
「好きなら好きって言っちゃったほうがいいわよ?とくにスバルくんなんて絶対そう。鈍感なくせにモテるのが一番厄介!はやくツバつけときなさい」
ツバって…。
「あなたねえ、もしかして同性だからって引け目感じてるんじゃないの?」
「え」
いきなりブルーボーンに図星をつかれた。
「ナンセンスよそんなの!そこを気にする子だったらそもそも縁がなかったってだけよ!」
そうよそうよ!とマリーとミレーが後ろから加勢してくる。
「ローくんには特別にいいこと教えてあげるわ」
ブルーボーンはそう言って煙草に火をつけた。
「あなた、家のことスバルくんに任せっきりだったりしない?」
「え…皿洗いはしているが、それ以外はそこまで…」
「あー、そこだわ。そこ。そこ変えるだけでスバルくん落とせる」
「え」
「「「「ええっ!?」」」」
俺だけじゃなく他の4人も驚いた。
「スバル君は器用そうだし身の回りのことなんでもやってくれるかもしれないし、苦だとも思ってないかもしれないけどね、キャプテンだからってそれに甘えて亭主関白してたら絶対ダメよ。
逆に普段からお皿洗うだけじゃなくて掃除手伝ったり料理一緒に作ったり洗濯したりもそうだし、買い物に行ったら荷物持ってあげたり、地味かもしれないけど、そうやって地道に自分を大事にされ続けられるとすごく弱いわよあの子」
「そうなのか…」
いつも朝起きたら全部終わってるから全然考えたことなかった…。
「世の中の人間みんなそうだけど、スバルくんは特にそう!
あなたもかっこいいけど、あの子だって超イケメンなんだから。しかもイケメン!ってだけで女の子が落ちちゃうレベルのイケメンだからね。あのレベルになると一目惚れなんてされまくってるのよ。プレゼントなんてもらい飽きてるのよ。かっこいいから好きになりました付き合ってくださいはもう100万回聞いてるのよ。
そんな薄っぺらいことするんじゃなくてね、日頃からずっと24時間365日どれだけ愛してるかよ。『愛してる貯金』で勝負しなさい」
なるほどな…。
「あなた実は超有利なのよ?一緒に住んでるってだけで勝ち組なんだから、その自覚持ちなさいよ?」
「何の話ですか?」
「きゃあああああ!」
後ろからスバルがひょこっと出てきて、ブルーボーンがビビってこっちに倒れてきた。
「すみません、ちょっと長居しすぎてしまいました、おあいそお願いします」
「えー、もう帰っちゃうの!?」
「もう21時過ぎてますし、本を読みたいので」
「健康的ね…」
「そっかー、また遊びに来てね♪」
「はい、マリーさん、ミレーさん、ブルーボーンさん、ありがとうございました」
スバルは伝票を見て財布から何枚か札を出した。
「お前大丈夫か?」
「心配いりませんよ」
「いや金じゃなくて、体調だ」
「えっ」
「トイレ長かったから…酔ってねえ?」
「大丈夫ですよ…」
「そうか、ならいいんだが」
俺はスバルにコートを渡すと、スバルは俯いた。
その様子を見ていた店の女どもがニヤニヤしながら何か話していた。