#10 ブール邸にて
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side.ロー
ブール邸の大広間にはすでに人がたくさん集まっていた。
シャンデリアが輝く下で、シャンパンやワインやたくさんの料理が並んだ円卓がそこかしこにあり、礼服を着た男女が立食を楽しんでいる。
奥のステージでは12歳くらいの可愛らしい女の子がピアノを演奏している。
「ミッシュ〜!」
ブルーボーンが白いタキシードを着て白いひげをたくわえた70代くらいの恰幅のいい男に手を振る。
こいつがブール=ミッシュか。
「おや、久しぶりだな、ブルーボーン!」
「久しぶり~♪今日はご招待ありがとう!こちらうちのスタッフよ!」
「そうかそうか、今日は来てくれてありがとう!ゆっくり楽しんでくれたまえ!今日はスペシャルゲストも呼んでいるからな!」
ホッホッホ、とミッシュは笑いながらシャンパンを口に含んだ。
「え~誰誰!?」
「この演奏の後に舞台に上がる…ワシの一番お気に入りのバイオリニストじゃよ…そろそろ準備せねば」
「やだあ楽しみ♡」
ブール=ミッシュが舞台の方へ行くと、さて!今日は飲むわよ〜!とブルーボーンはそばの円卓に置かれたグラスに早速シャンパンを注いで、向こうのほうにいる人たちの中に入って行った。
「相変わらずすごいなオーナー…」
「パーティー慣れしてるな」
ペンギンとシャチもそうこぼしつつ食べ物を皿に盛り始めた。
「さて、次はバイオリンとピアノのセッションです…バイオリニストは神童…ノエルくんに来てもらいました…!」
ミッシュがマイクでそう言うと、会場が一気に湧く。
「ねえ、彼、素敵じゃない?」
「ほんと!かわいいわね♡」
「あとで声かけてみない?」
女のひそひそ話す声がそばで聞こえてステージを見た。
スバルじゃねえか…!!!
いつもと発している雰囲気は全然違うが、黒いタキシード姿のスバルがバイオリンを持って立っていた。
「えー、ノエルくんがまだ幼いころにコンクールで見たことがあったのですがね、それから一気にファンになってしまいましてね…」なんて少し長話があってから、演奏に入る。
スバル…いや、ノエルはピアノの少女に少し目線を送って、一呼吸する。
バイオリンの音が響く。
その瞬間、広間にいる客が全員ステージにくぎ付けになったのが分かった。
聞いたことがあるがよく知らない曲。
艶っぽく美しいメロディー。
少し軽快なピアノが重なって、バイオリンはそれに乗るように華やかに、ますます色艶を増していく。
ものすごく耽美で綺麗だ…。
2~3曲演奏してお辞儀をすると、会場は拍手喝采。
すぐにスバルの前には何人か集まってきていて、少女と一緒にあの美しい笑顔で対応していた。
「スバルくん、上手かったですね」
ペンギンが横でシャンパンを飲みながら言った。
「ちょっと妬けちゃいますね♡」
「うるせえ」
「話に行かないんですか?」
「ああ…」
今更何を話せばいいのか分からず、俺はただ少し離れたところからずっとスバルを眺めていた。
少し時間が経って人が散ってから、ピアノの少女と何やら話している。
スバルが簡単な手品で手のひらから赤い薔薇を出して少女に差し出すと、彼女が顔をほんのりと赤くして喜んでいるのが見えた。
二人の距離がどんどん近くなる。
眺めていると、ふとこっちの方を向いたスバルと目が合った。
スバルは目を見開いて驚いている。
そりゃあそうだ。まさか俺が来ているなんて思わないだろう。
ノエルなんて偽名を使っているってことは、仕事か…?
スバルは少女に手を引かれ、はっとして、二人でなにやら会話しながら庭の方へ歩いていく。
俺とすれ違うと、振り返って、少し困ったようにほほ笑みかけた。