#09 殺し屋レグルス
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馬車の中、スバルと二人。
無言のまま、ただ馬車の車輪の音と蹄の音だけが響く。
スバルはタバコに火をつけて、ふーっと窓の外に煙を吐き続けている。
危険な香りをバンバン放っていたが、少し落ち着いたようだ。
「お前、本当に海兵なのか?」
「ええ」
しばらくしてスバルはそう言って俺に黒い名刺を渡す。
「『殺し屋 レグルス』…?」
「言ってませんでしたね…僕、副業で暗殺屋さんはじめたんです」
「暗殺屋…?」
「必要ならオプションで情報収集や証拠品の回収・隠滅、隠しカメラの除去、爆弾解体なども受け付けていますので、機会があればご利用ください」
「はじめて聞いたぞそんな仕事」
「人目につく仕事ではありませんからね」
「海兵が副業なんかしていいのか」
「許可は得ました」
ふーっと窓の外に煙を吐く。
「ドフラミンゴの依頼は…」
「守秘義務に反するので言えませんね」
「SMILEってのは」
「守秘義務に反するので言えませんね」
「あと二人ってのは」
「守秘義務に反するので言えませんね」
「…ふざけてるのか」
「ふざけてるのはあなたの方でしょう、僕が言うわけないじゃないですか」
「じゃあオフィーリオっていうのは」
「偽名です」
「レグルスは」
「偽名です」
「スバルも」
「偽名です」
「ツバメは」
「…本名です」
胡散臭え…
スバルにレグルスにオフィーリオにツバメ…
「お前はいくつ名前があるんだ」
「生きていくのに必要なだけ」
スバルは窓の外を眺める。
「だったら…スバルは…俺と住んでたスバルは嘘だったとでもいうのか…?」
「スバルは2月が終わればなくなる人格です。僕のことはもう忘れてください。僕もあなたのことは忘れますから」
「忘れんな」
スバルが虚構だとは思いたくない。
あの時間が嘘だったとは到底思えない。
スバルは無言で窓の外を眺める。
「…これ以上僕に深入りしない方がいい。泣きを見るのはあなたの方です」
「忠告するのが遅かったな」
「………」
スバルは黙った。
馬の蹄が石畳を蹴る音と、車輪の音だけが響く。
それからは会話もなく、やがて馬車がビアードの前まで着いて、二言三言だけかわして、俺は馬車を降りた。
end.