#09 殺し屋レグルス
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side.ロー
契約解消から3日が過ぎた。
ビアードの仕事は全く性に合っていないが、皿洗いと掃除だけはなんとかなっている。
余計なことを考えないように集中できるものがあってよかった。
仕事は夕方からで昼間は自由なので、毎日まだ行ったことのないところへ足を運んでいた。
旧ルブニール宮殿にも行ってみたし、王国の中心部にも行ってみた。
記念コインも手に入れた。
雪の結晶と湖に映るオーロラが刻印されたコイン。
スバルと観に行ったな…なんて感傷的になりながら帰路に着いた。
…今日も仕事だ。
~~~~~~~~~~~~~~
「ところでキャプテン、あれからスバルくんには会っていないんですか?」
皿洗いの途中でドリンクを作っているペンギンに訊かれて、睨みつける。
「二度とその名前出すんじゃねえ」
「ひいっ、すいません…」
自然にため息が出ちまう。
俺ってそんなに心配されるほど落ちてるように見えるのか。
「ちょっと遊びに行ってみません?」
シャチが反対側から顔を出して言った。
「なんでだよ」
「ちゃんと言わなきゃ伝わらないものもありますから」
「伝えた」
「え」
「俺はちゃんと伝えた…だから、もう俺にできることは何もねえよ」
ぶっきらぼうに言いながら、カゴいっぱいの皿を乾燥機の中に入れた。
くそっ。
こんな形で終わるとは思っていなくてまだショックから立ち直れていないのに。
あいつは海兵で、俺は海賊。
ずっと一緒にはいられない。
…なのに。
ふとした時に、最後の日の朝、頬にキスされた感触が蘇る。
…思いっきり嫌われた方がまだマシだった…。
「ちょっとちょっとあんたたち!なにシケたツラしてんのよ!客席にシケた空気が伝わっちゃうでしょ?!」
オーナーがキッチンにいる俺たちに言った。
「キャプテンが失恋したのは気の毒だけど!仕事は仕事!ちゃんと割り切ってよね!」
「すいませんっ!」
ペンギンが代わりに謝ると、オーナーはまったくもう、とフンと鼻を鳴らした。
「あと、あんたたち、明後日の夜は空けときなさいよ!」
「何かあるんですか?」
「店閉めてブール=ミッシュのパーティーに行くわよ」
「ブール=ミッシュって、ノースブルーで一番の大富豪の?!」
すっげー!とシャチが騒ぐ。
俺も名前だけは聞いたことがある。
どんな奴なのか知らねえが、パーティー系はガキの頃から苦手だ。
「そうよ!3人まで連れてきていいって言われてんの!ご招待されたんだから絶対空けときなさいよ!」
「りょーかいっす!」
「あとドレスコードちゃんとしていくこと!男は黒タイだから!持ってないならうちにあるの貸してあげるから言いなさいよ!」
「お客様お見送りでーす!」とマリーの声が聞こえた。
「さて、最後のお客様のお見送りよ!!早く出た出た!!」
オーナーに急かされるままに俺たちは勝手口から外に出た。
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「「「ありがとうございました!お気をつけて行ってらっしゃいませ!!」」」
見送りが終わって、さて残りの片付けを終わらせるぞと戻ろうとした時、視界の端にスバルらしき人が映った。
黒い中折れハットに、黒いサングラス。黒いマフラー、黒いフロックコート、黒い革靴、黒いアタッシュケース。
顔は分からないが、背格好や歩き方からしてスバルだ。
通りの向こうの方へ消えていった。
こんな遅くにどこへ行くんだ…?
みんな店に入った後、俺はこっそり後をつけることにした。