#08 契約解消
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家を出た足で最初に向かったのはペンギンとシャチの職場『ビアード』。
店は開いていたが、バレンタインデーでオールした後らしく、客席はクラッカーを鳴らした後の紙吹雪やらコスプレの服やら割れたボトルやらで散らかり放題で、オーナーもキャストも机に突っ伏して寝ていた。
「キャプテン!おはようございます」
ペンギンとシャチが奥からひょっこり出てくる。
「スバルくんと、どうなりましたか?」
俺は空いている席を見つけて座ると、スーツケースを机にバンと置いた。
「クビになった」
ペンギンもシャチも何も言えず俺の様子をただ見つめる。
「修理代問題ねえ。半月分の給料と手切れ金で4000万、退職金と失業保険で2000万包んでもらった」
「手切れ金…」
「2000万って…」
ペンギンもシャチも何も言えずにいる。
「あいつなりに考えた結果だろ。クビにはなったがクルー含めて俺が困らねえようにはしてくれた」
「でも、キャプテンそれでいいんですか?」
ペンギンが訊いた。
「いいもなにも、雇い主のあいつが決めたんなら仕方ねえだろ…1ヵ月の契約が半月になっただけだ。必要な金はもらえたし、問題ねえよ」
「でも…」
「住む場所はねえから、悪いがお前らの寮を使わせてもらうぞ」
「だったらウチで働いてもらわなきゃ困るねえ」
俺らの後ろでブルーボーンがゆらゆらと起き上がって、ペンギンとシャチがげっ、と飛び退く。
「働かざる者食うべからず!うちの寮使わせて欲しいんなら働きな!」
酒臭え。
「俺は接客は…「いいから働きな!!んなとこでワイン飲んでんじゃないよ!!ほらさっさと着替える!まずは片づけからやってもらうよ!!」
ほら行った行った!とずるずるバックヤードへ引きずられていった。
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無理矢理ギャルソンみたいな格好に着替えさせられて、キッチンで皿洗いをやらされる羽目になった。
別に働かなくても金はあんのに…と思いつつ、言われたとおりに皿を洗い続けていると、余計なことを考えなくなってくるから逆に良かったかもしれない。
「キャプテンすごいですね、皿を一枚も割らずに洗えるなんて!」
シャチが俺の方をチラチラ見ながらドリンクの準備をして言う。
「なめてんのかテメェ」
「なめてませんよ、びっくりしたんですよ、一日目からいい感じじゃないですか」
「皿洗いはスバルの家で毎日やってたからな」
俺がそう言うと、そっすか、とだけ言って表にドリンクを持って行った。
「キャプテン、大丈夫ですか…?」
ペンギンが心配そうに訊いてくる。
「別に問題ねえよ…」
今は何も考えたくねえ。
俺はひたすら皿とグラスを洗い続けた。