#05 聖域
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今日は一番の見ごろらしく、思った以上に人が多い。
観光整備された山の中を歩いていくと、空が明るくなってくる。
「ローさん大丈夫ですか?」
振り返ってローさんに言う。
「お前こそ、息上がってるんじゃないのか?」
「そんなことありませんよ、毎日トレーニングしてるんですから。ほら、もう少しで山頂ですよ」
山頂に着くと、人がいっぱいだ。
暗闇の中を、水色や紫色の光が明るく照らして、鏡のような湖に映る。
「綺麗ですね」
「ああ…綺麗だな」
そう言って、ざわざわした人混みの中、しばらく無言でオーロラを見ていた。
そっと隣にいるローさんの顔を盗み見ると、どうしてソーセキがI love youを『月が綺麗ですね』と訳したのか分かった気がした。
ふと、目の前のカップルが顔を見合わせていたのが目に入ったかと思うと、そのまま顔を近づけ合ってキスをしたので僕は思わず下を向いた。
そういえばカップルだらけだ。
前に一人で来た時はツアー客ばっかりだったのに。
…いいな。
今夜会う人は、みんな、素敵だ。
みんな、綺麗だけど。
ローさんは特別綺麗だ。
「スバル」
名前を呼ばれて、急に腕を掴まれて引っ張られる。
「えっ…?」
「はぐれる」
一言だけ言ってからも、ローさんはずっと僕の腕を掴んでいた。
掴まれた腕が、熱い。
空なんて見ていられなくて、僕はずっと俯いて、湖に映るオーロラを見ていた。
綺麗だ。
綺麗としか言えない。
胸が張り裂けそうだ。
燃え上がるような真っ赤な薔薇は
枯れることも散ることも褪せることも知らずずっと鮮やかにたった一輪咲いている。
確かに僕の中にあって
僕を支えてくれているはずなのに。
何か、何かが変わっていく。
こんな気持ち、知りたくなかった。