#07 聖バレンタインデー
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「そろそろおいとましますね」
「ええ…」
スバルさんは涙を拭いて立ち上がって、店のドアの前まで歩いて、振り返った。
「お手紙、読ませていただきました」
「!」
「ごめんなさい…アンリさんのお気持ちには応えられません…それなのに、このような形で来てしまって、申し訳ありませんでした」
「いえ…お気になさらず…」
「お気持ち、嬉しかったです…ありがとうございます」
スバルさんは泣き腫らした顔で、綺麗に笑った。
ああ、私の恋は終わってしまった。
スバルさんがドアに手をかけようとした時、急にドアが勢いよく開いて飛びのいた。
「邪魔するぜ」
野蛮そうな男の人が十数人。
「シャルパンティエ=シャルルがいると聞いて来たんだが?」
「父は留守ですが、何か御用ですか…?」
私がそう言うと、ずいっと私に迫って顎を掴まれた。
「ひゃっ…!」
「ほう?あんたが娘か…なかなかいい女じゃねえか…」
スバルさんが私を男から引きはがして後手に庇ってくれる。
「なんだてめえ…!」
「アンリさんに触るな!」
男がスバルさんの頬を殴ろうとしたのを、スバルさんは受け止めて、代わりに相手の頬を殴り倒した。
「スバルさん…!」
向かってくる男を殴って次々にのしていく。
「スバルさん…!!」
「おい…この女連れて行くぞ」
「ラジャーっ!」
「待て!!!」
あの物静かなスバルさんとは思えないほど大きな声に、私がビクッとしてしまう。
「あぁ?!なんだ小僧!やる気か?!」
「…アンリさんを連れて行く必要はない。人質なら、シャルパンティエ=シャルルの弟子である僕一人で十分だ!」
「なに?!お前がシャルルの弟子?!」
「古代文字なら僕も読める。人質としての価値はアンリさんより高いと思うが?」
「ほう?そう来たか…」
スバルさんはボスらしき男と睨み合う。
「船長、惑わされてはいけません!娘を人質にしてシャルルを乗せた方がいいに決まっています!」
「まあ待てよジャック…」
船長は鼻がくっつきそうなほどスバルさんに顔を近づけて威嚇する。
「俺に交渉を持ちかけるなんざいい度胸してやがる…もちろん俺はお前のことを覚えているぞ、『ゴーストマリーン』さんよぉ…」
「…!」
「俺はお前に復讐するためにここまで立て直してきたんだよ…いいだろう、連れてってやる…ただしその女もだ。二人とも連れて行け!」
「ラジャー」
「待ってください!」
私は海賊に掴まれながら精一杯大きな声を出すと、船長は今度は私の方をちらりと見る。
「スバルさんは連れて行かないで!私だって古代文字は読めるわ!私一人でいいでしょう?!」
「そういう話じゃあねえんだよ、お嬢ちゃん…こいつはなあ、3ヶ月前、俺らの船を117隻沈めた上に仲間を5832人殺しやがったんだ…」
「え…?!」
どういうこと…?!
「まさかこんなところで会えるとは思ってなかったぜ?海兵さんよお…きっちり落とし前つけてもらおうか…」
「海兵…?」
「交渉決裂だな…」
スバルさんはそう言うと、私を掴んでいた海賊をこかし、コートを脱いで私に渡す。
「アンリさんは2階へ…左のポケットに僕の大好きな本が入っていますから、決着がつくまで読んでいてください」
「!」
私はポケットに本ではなく、何かもう少し重たくてゴツゴツしたものが入っていることに気づいた。
電伝虫だわ…!
「心配しないで。僕、結構強いんですよ」
スバルさんはニコッと笑いかけると、襲いかかってくる大男をものすごい力で店の外へ殴り飛ばした。
「スバルさん…死なないでくださいね」
私は彼の背中にそう言い残して2階へ上がった。