#04 エリスの赤い薔薇
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side.ロー
1階で『海の戦士ソラ』を見つけたので、ずっと読んでいる。
少しは気がまぎれるかと思ったが、心の奥底ではまだ何かチリチリと燃えているのを感じる。
…気に食わねえ。
なんであいつ、アンリに優しいんだ。
なんて考えはじめると止まらない。
スバルを俺だけのものにしたい。
いつの間にか、どういうわけか、独占欲が大きくなってしまっている。
…俺もあいつも男なのに。
どう考えても男に向ける感情じゃない。
『あー…あの…それって…』
『惚れちゃってたりしません…?』
そんなわけねえ。
俺が、スバルを…好きだなんて、認めるわけにはいかねえ…。
認めたくねえ。
アンリを見ていると、こんなことで悩む俺が腹立たしくなってくる。
女ってだけで有利だ。おまけにアンリはスバルと趣味が合うようだし…。
『僕はアンリさんいいと思いますよ?内気ですが知的で優しい方ですし』
…俺かあいつかどっちかが女だったら、もっと簡単だったのだろうか。
「ローさん、終わりました!買い物行きましょう」
「ああ…」
そんなことを考えているとスバルとアンリが降りてきて『海の戦士ソラ』を元に戻す。
「あ、『海の戦士ソラ』じゃないですか」
「知っているのか」
「はい、僕も子供の頃よく読みました」
スバルは懐かしいな、と1巻の本の表紙を眺めて、また元に戻すと、アンリに礼を言って古書堂を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~
「今日はどうしたんですか」
道を歩いている途中、スバルが俺の顔をのぞき込むので、俺は顔を逸らす。
「別に」
「感じ悪かったですよ。アンリさん困ってたじゃないですか」
「感じ悪くて悪かったな」
「もう…」
「それより、珍しいな、こんなところまで来るなんて」
アンリ古書堂から20~30分ほど歩いて、気が付くと街の中心部のショッピングモールまで来ていた。
「ステラさんのプレゼントを買うんです」
「プレゼント…?」
「13日にステラ珈琲5周年記念パーティーがあるので、お祝いです。ローさんも選ぶの手伝ってください」
そう言って女が好きそうな日用雑貨の店に入る。
当たり前だが男二人で入ると好奇の目で見られているのを感じる。
正直早く出たいが「真面目に選んでくださいよ」とがっちり腕をホールドされてしまった。
まあいい。店の外で一人でいる方が目立つし、仕方ない。
「カップやスプーンはこだわりありそうですもんね…」
スバルは気にせず食器を眺めている。
こいつはこういう店にいてもあまり違和感はないが…こいつは周囲を気にすることはないのだろうか、と思いながら、俺も店内を見回す。
ふと、棚に寝そべっているシロクマのぬいぐるみが目に留まった。
ぬいぐるみと言うには大きいが、抱き枕にしては少し小さめのサイズだ。
オレンジの服を着て、つぶらな瞳で、ふかふかしていそうだが、女性客が多い中で俺があれを持っているのは絵面的にまずい。
「あ!これ!これにしましょう!」
スバルが隣で小さなスノードームを手にしていた。
こっちも中には雪の中にシロクマがいるような可愛らしいデザインだ。
「あ、これもかわいいですね」
俺が見ていたシロクマのぬいぐるみもなんの恥ずかしげもなく掴んで一緒にレジに持っていき、会計を済ませた。
「どうぞ」
店を出てから、ぬいぐるみの入った紙袋を俺に渡した。
「あれっ、ずっと見てたからこういうの好きなんだと思ったのですが、違いましたか?」
「いや…違わねえ…ありがとう」
「もうすぐ半月なので、福利厚生です。こちらこそ、いつもありがとうございます」
ふふっと笑ってシロクマを持ってるスバルを見ると、アンリのことなんかどうでもよくなってしまって。
こんなことで機嫌がよくなる俺って単純だな、と心の中で笑った。