#01 邂逅
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メシの相談をしながら入ったのはワノ国風の洒落た小料理屋だった。
メニューを見たら焼き物、煮物、ご飯ものなど種類がかなり多い。
どれもうまそうだが、どれも金額が高い。
「お前、金はあるのか…?」
「ええ。好きなもの頼んでください。
僕だし巻き卵と、肉じゃがと、おでん盛り合わせと、カレイの煮付けと、冷奴と、ごはん大盛りで」
細えのによく食うな…。
「おにぎりと味噌汁と漬物盛り合わせとぶりの照り焼き」
「もっと頼んでいいんですよ?」
注文してから出されたほうじ茶を啜って彼は言う。
「金出してもらうのにそれは申し訳ねえ」
「人にお金を出してもらう時は素直に甘えとけって祖父が言ってました」
「じゃあサラダでももらおうか」
マスターが前から冷酒を置く。
彼はお猪口に酒を入れて俺のほうじ茶と乾杯した。
「助かりました。ありがとうございます」
「こっちこそ助かった、ありがとう…この辺に住んでるのか?」
「ええ、あと1ヵ月経ったら出ますが」
「そうか」
次々料理が運ばれてくるのを一口食べては「これおいしいですよ」と俺に少し分けてくれる。
淡々と話すしあまり表情は変わらないが、不思議と冷たい印象はなく、心地いい。
自然に箸が進むし、久しぶりにリラックスできた気がする。
「コートかっこいいですね」
「オーダーメイドだ」
「へえ…このマーク好きなんですか?」
「俺の恩人のマークだ」
「恩人?」
「俺の命を助けてくれた人だ…俺は命も心もその人にもらったんだ」
「へえ…あなたをそんな顔にするなんて、優しい人だったんでしょうね」
「ああ…ものすごくドジだけどな」
「あははっ」
彼は笑いながらコートをしげしげと眺めて、白飯を頬張りながらこう言った。
「お兄さん、僕のボディガードをしてくれませんか?」
「ボディガード??」
俺は青年の顔を見た。
「ええ…今一人暮らしをしているのですが、先ほどのような奴によく絡まれるんですよ…出歩くだけでも怖いですし、あまり騒ぎを起こしたくありませんし、何かあったらと思うと不安で…お兄さんのような強い方がいてくださるととても安心なのですが」
「断る」
俺は即答した。
賞金首の海賊が一般人のボディーガードなんて逆に迷惑だろう。
「もちろんタダでとは言いません。謝礼ははずみますよ。1ヶ月の契約で1億ベリーでどうでしょう」
「1億…?!」
思わず大きな声が出そうになる。
「必要なら1週間に2500万ベリーずつお支払いすることも可能ですよ」
なんだこれ、俺ツキすぎじゃねえか…?
1億あれば7000万の修繕費を払えるどころか、クルー達のとりあえず1ヵ月の生活もなんとかなるし、食糧も武器も補充できるし、海水でダメになった家具や設備類を全部買い替えてもお釣りがくる。それ以降の旅の費用も向こう数ヶ月は問題ないだろう。
なんとなく感じていたが、こいつお坊ちゃんか。
「住み込みですから宿に困ることもないでしょうし、必要なら食事も作ります」
「1200万前払いしてもらうことは可能か?」
「分かりました」
よし。船の修理の頭金が1000万。クルー達の1ヵ月の生活費は200万あれば足りるだろう。
「…いいだろう。引き受ける」
「ありがとうございます!僕はスバルと申します」
スバルが右手を差し出すので、俺も手を出して握手した。
「トラファルガー=ローだ」
スバルは少し嬉しそうな顔をして、酒をぐいっと飲んだ。
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「ったく、飲み過ぎだ」
「すみません…」
結局閉店間際まで話し込んでしまったが、スバルは立ち上がれないらしい。
酒が入るごとに緊張が取れていくせいか楽しそうだったから全く気にしていなかったが、確かに少し息苦しそうだし気持ち悪そうだ。
家に送ろうにも道が分からねえし、こいつは道案内すらできねえくらい酔っているし、この通りはさっきのような奴らが多いしでマスターが心配してくれて、2階の部屋に泊めてもらうことになった。
2階のベッドにスバルをおろして、1階に置いてきたコートをハンガーにかける。
ったく、初対面の相手に気を許しすぎだ…。
「お前のボディーガードは大変そうだな」
水を飲ませながら言うと、スバルはへらっと笑う。
「1億ベリー分の仕事はしてもらいますよ」
「仕方ねえな」
「…冗談です…すみません、ローさんとお話しするの楽しかったから、つい…」
「俺も…楽しかったよ」
そう言って布団をかけてやると、気持ちよさそうな幸せそうな顔をして、すう、と寝息を立てはじめる。
「…ロシー、俺、頑張るからな…」
いきなりしゃべりだしたのでびっくりしたが、スバルが寝言を呟いて、涙をこぼしていた。
なんだかその寝顔から目が離せなくなってしまったから、ベッドの脇に座って毛布をかぶって、スバルの寝顔をしばらく眺めているうちに俺も眠りに落ちていった。
end.