#05 聖域
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side.スバル
トラファルガー=ローをボディーガードに雇ってもうすぐ半月が立とうとしている。
彼は思った以上に気の合う奴だ。
医者だからか知らないが、読書家で勉強家だ。
コーヒーも和食も好きみたいだし、ぶっきらぼうだが言葉遣いは汚くない。食べ方や立ち居振る舞いからも育ちの良さが見て取れる。
ボディーガードにかこつけて襲おうもんなら返り討ちにしてやるつもりだったが、今のところその必要はなさそうだ。
だが少し困っていることがある。
「俺の仲間にならねえか」
「お断りします」
ローさんが焼いた焦げた焼き鮭をつつきながら、僕はいつも通りさらっと答えた。
僕が古代文字を勉強しているのを知ったからか、僕をしきりに海賊の仲間に誘うようになった。
最初は冗談だと思って流していたけど、どうやら本気で船に乗せたいらしい。
勉強していると言ってもどんなものでも正確に読み解ける訳ではない。勉強してみてわかったが、じつに奥が深い分野だ。
「なぜだ?」
「嫌なもんは嫌です」
「ペンギンもシャチもお前なら大歓迎だが」
「だから嫌ですって。古代文字ならシャルル博士の方が間違いなく読めますし、彼の方が適任ですよ」
「俺はお前がいい」
まっすぐ目を見て言い切られても困る。
「古代文字は船の中でも勉強できるだろ」
「どうして僕なんですか?」
「…お前といると楽しいからだが」
「そんな理由で?」
「相性は大事だろ。うちも大所帯になってきたからな、俺や他のクルーと面倒を起こすようなめんどくさい奴は乗せたくない」
「ふうん、海賊って強さが基準だと思ってました」
「強さは大事だが、強くなくても他の才能がある奴もいるし、弱さをカバーできる強い奴もいるからな」
「なるほど…どちらにしろ乗る気はありませんので、もうその話しないでくださいね」
ごちそうさまでした、と手を合わせて、食器をシンクに持っていった。
「今日は一日家にいるので、あなたも休日ということで」
「毎日休日みたいなもんだが」
「もしものことが起こらないのはいいことですよ。せっかく島に上陸したのに僕につきっきりで観光地もどこにも行けていないでしょう?今日は色々見てまわってください。なかなかいい街ですよ」
自分の分を洗い終わって振り返るとすぐ後ろにローさんが立っていた。
「お前も行かねえか」
「それだといつもと変わらないじゃないですか」
「そうだが」
「休日も一緒がいいなんて…僕のこと大好きなんですか」
「ちげえよバカ」
僕が揶揄うとローさんは少し照れて顔を逸らした。
なんだよその反応…。
「案内しろっつってんだよ」
「分かりましたよ」
なーんかこの人海賊っぽくないんだよなあ…。