#03 無自覚な恋
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せっかく自由な時間があるなら少しあいつらに顔を出しておくかと思って、ペンギンとシャチが働いているガールズバー『ビアード』に行くと、まだ夕方なのに空いている女がいないほど忙しいようで、ペンギンとシャチが俺の席についた。
「すいません、せっかく来てくれたのに」
「バレンタイン前で繁忙期なんですよ」
ペンギンが酒を持ってきて3人分席に置いた。
「別に構わねえよ、お前らに顔出そうと思ってただけだから」
「「キャプテン…」」
「乾杯するか」
「「はいっ!」」
乾杯!と樽のジョッキをぐいっと飲む。
久しぶりに酒を飲んだな。
「どうですか、スバルくんとは」
ペンギンが俺に訊いてきた。
「ああ、まあまあうまくやってはいる…」
「?うまくやってはいる、けど…?なんですか?」
俺が少し言いよどんだので、シャチが不思議そうに訊いた。
「あいつって本当に男なのか…?」
「「…は?」」
二人とも訳が分からないというふうに答える。
俺も自分で言って訳が分からない。
「ふとした時に女に見えるんだよな…」
「それは…溜まってるんじゃねっすか?」
そうなのか…?
いや、そうか。男に対してこいつ女だろって思うって確かにヤバいな…。
「例えばどんな時ですか?」
「俺のためにコーヒー淹れてくれた時とか…飯を食ってるときとか…俺が皿洗うっつったらすげえ嬉しそうにしたりとか…嬉々として蘊蓄語ってるときとか…黙って本読んでるときはすげえ綺麗だし…ああ、寝顔はマジで女だぞあいつ…メシうまいし家事能力高いし、後は…」
俺が思い出しながら羅列していくと、ペンギンとシャチが顔を見合わせた。
「あー…あの…それって…」
「惚れちゃってたりしません…?」
「そんなわけないだろ、俺はそっちの趣味はねえぞ?」
「男が好きというより、好きになった人がたまたま男だっただけの話じゃないですか?」
ペンギンがそう言うけど、絶対違うと思う。
「女に見えるというより、キュンとするとか、ドキドキするとか、かわいく見えるの間違いじゃないですか?」
「…ドキドキ…?」
シャチがそう言うけど、そう言われるとますます分からねえ。
「…いや、やっぱあいつ女だろどう考えても医学的に…顔も顎も小さすぎるし、腰細すぎだし、軽すぎるし」
「なんでスバル君の腰の細さに目が行くんですかキャプテン…」
「見てねえ」
「抱き着いたんですか…」
「抱き着いてねえ…階段から落ちそうになってたから受け止めただけだ」
俺がそう言うと、ペンギンとシャチが同時にため息をついて頭を抱えた。
「なんか…惚気にしかきこえないから俺たちへのダメージ半端ないんですけど…」
「なんでお前らがダメージ受けてるんだ」
「「こんばんは~」」
向こうから店子が2人来て、ペンギンとシャチが席を空けて俺の両脇に座った。
「キャプテン、キャストのマリーちゃんと、ミレーちゃん」
「「よろしくお願いしまーす♪」」
かんぱーい♡と二人とも樽ジョッキにグラスをすこしつけて、一口飲んだ。
「なになに?スバルくんの話してたの?」
「スバルくんって、あのスバルくんですか?!」
二人ともキャーキャー騒ぎはじめた。
「仲良いんですね!この間お兄さんと歩いてたの見ましたよ!」
マリーがグラスのカクテルを飲みながら俺にすり寄ってくる。
「この人俺らのキャプテンなんだけど、今スバルくんのボディーガードやってるんだよ」
「ボディーガード?!」
「なにそれかっこいい!」
二人の店子がキャーキャー騒ぎ出した。
「お兄さん騎士って感じで強そうだし!スバルくん本当に王子様じゃん!雰囲気合いまくり~!」
「ってことは住み込み?!やば!スバルくんと同棲なんて羨ましすぎる…!いいなあー!」
「イケメン2人の同棲っていいよね〜目の保養~って感じ!」
「スバルくんってやっぱり私生活も王子様なんですか?」
お坊ちゃんではあるが王子様ってなんだ。
あいつそんなにかっこいいか…?
「ほらキャプテン、これが女子から見たスバルくんですよ。超絶イケメンですよ、かっこいい王子様ですよ、男でしょどう考えても」
ペンギンが俺に言って、そうか、とは思ったが。
店子の二人がやたら腕を絡めたり膝に手を置いてきたりするが、全くその気にならないのがなぜか気になってしまって、それをごまかすように残りの酒をあおった。