#01 邂逅
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side.ロー
あれは俺が21歳…ハートの海賊団を結成して5年目の冬。
ノースブルーのとある島でのことだった。
目的の島にたどり着く前に海軍に追われ、なんとか撒いたのだが航路が大幅に逸れてしまった。
おまけに砲撃で船尾を壊されてしまって船の修理が必要になり、やむをえず近くの島に停泊することにしたのだが…
「金がなくなっただと?!」
今造船所の前でペンギンとシャチから報告を聞いてガックリと肩を落としている。
「海軍に船尾やられて金庫が水浸しで…」
「ふやけてなんも残ってないです…」
「…そうか」
くそっ、それで修繕できると思ってたのに。
ってことは修繕費以前に使える金すら残ってねえってことだ。
俺はため息をついた。
どうするんだ…金ができるまで預かってもらうことはできるが、それも1ヵ月まで。それを過ぎれば廃船になると船大工が言っていた…。
ポーラータングとクルー達のためになんとしても1ヵ月以内に7000万ベリーを用意しなければいけない。
だが海賊を襲撃して財宝を奪うにしても、船がない状態で襲撃するのは危険すぎる。万が一のことがあった時に逃げられない。
「でもこの島、ログがたまるのに1ヵ月かかるから、その間にバイトでもすれば…」
「バーカ、修繕費が7000万だぞ?!それ以外にもダメになった備品の買い換えもしなきゃなんねえのに、そんな簡単に貯まるわけねえだろ!」
「うう…じゃあ賞金首捕まえるしかないかあ」
「賞金首捕まえたところで俺たちまで捕まっちまうよ、今や『死の外科医』トラファルガー=ローのハートの海賊団だからな!」
「うわあーーー八方塞がり!」
ペンギンとシャチも頭を抱えてる。
「お前らは宝を盗めそうな海賊やマフィアがいねえか探せ。見つかったら俺に連絡しろ。くれぐれも深追いはするな、見つけるだけだ、いいな」
「キャプテンは…?」
「策を考える。とりあえず船は預かっといてもらってくれ」
俺はそう言うと一人街の中へ歩いていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
焦る気持ちはあるが、こんな時は一旦考えるのをやめた方がいい。
ぶらぶらしてたら何か思いつくだろう。
ログが貯まるのに1ヵ月かかるなら久しぶりにゆっくりできる。
それから動いても遅くはない。
夕日が沈みかけて薄暗くなってきた頃、雪がちらちらと降ってきた。
足跡だらけだった石畳の商店街がまた白く覆われていく。
通りの街灯に一つ一つ点灯夫が火をつけていくと、柔らかく温かい明かりが雪の街を包んでいく。
幻想的な街だ。
フレバンスとどことなく似た空気を感じるな、と懐かしんでいると、近くでドカッと殴るような音がして、大男が路地裏から吹っ飛んできて飛び退いた。
「テメェ…やってくれるじゃねえの…!」
鼻血を出して地面に倒れた男がまた立ち上がって路地裏に走っていく。
喧嘩か…?いや、もっとヤバい空気だ…。
壁に隠れて覗いてみると、大男が3人。1人はさっきぶっ飛ばされていた巨漢。もう1人の筋骨隆々な奴が細い青年を歯がいじめにして、もう1人の金髪の男が青年の方に近づいていく。
「おい、顔はやめとけよ、上玉なんだからよぉ」
「何言ってやがる?この綺麗な顔が痛みと屈辱と快感でボロボロに歪むのがいいんじゃねえか!…すぐにヨくなんだから、大人しくしとけ…っぎゃああああ!!!」
ボキボキボキ…と音がして、金髪の男の叫び声が上がる。
「テメエ…!!」
「頭ぁ、どうします?!」
「仕方ねえ、殺してでも連れて行くぞ!」
「へいよ」
男たちが隠していたドスを構えた。
これ以上は危ない…。
「シャンブルズ!」
奥の方で傷だらけになっている青年と手元の石を入れ替えると、男たちが一斉にこちらを向いた。
ふらりと青年が腰を抜かして尻もちをつく。
「下がってろ」
青年を後ろ手に庇いそう言って、俺は鬼哭を抜いた。
「ぐああ!」
「ぐおっ!」
「がっ…!」
男たちを切り刻んで、頭のパーツを3つ壁にぶつけてやると全員気絶した。
瞬殺だった。
「大丈夫か?」
腰を抜かしたままの青年に手を差し出すと、青年は驚いたように俺を見上げた。
おそらく俺と同い年くらいだ。
背は170前後。
柔らかそうな黒い猫毛に大きな青い猫目。
男と思えないほど白い肌。
青あざや切り傷擦り傷だらけでも美しく整った顔立ち。
雪でぐしょぐしょになった黒のピーコートの下に、はだけた白いシャツとボタンの取れた厚手のカーディガンを着て、細身の黒のパンツに編み上げのブーツを履いている。
学者や医者のような雰囲気はあるが、多分違う。
「手当てしてやる。とにかく安全な場所へ行くぞ」
「っ!!」
俺が青年の腕を掴むと、彼はびくっとして、腕を振りほどいた。
「…あ……ごめんなさい…」
「いや、こっちこそいきなり悪かった…」
青年は立ち上がって雪を払う。
今、腕を掴んだ時、硬かった…?
「気にしないでください、これくらいすぐ治りますから」
「そんなわけがないだろ、とにかく見せろ」
「本当に大丈夫です」
「俺は医者だ、黙って言うこと聞いとけ!」
俺が俯く青年をすぐそばにあった店の軒下のベンチに座らせ、顔をこちらに向けた時だった。
「………え?!」
さっきまであった顔の青あざがない。
腫れも、唇が切れていたのも治っている。
なんでだ…!?
あり得ないことが起こっているぞ…。
青年は大きく綺麗な瞳で俺を見つめるから、俺は吸い込まれそうになって、はっとして目を逸らす。
「…問題ないならよかった…何かあったらすぐ病院に行けよ」
俺は青年のことが少し気になりつつ、その場を立ち去ろうとした。
「待ってください!」
青年に呼び止められ、立ち止まる。
「あの…もし良ければ、お礼に何かごちそうさせてくれませんか?」
「!…いいのか?」
「もちろんです。何が食べたいですか?」
青年は美しくほほ笑んだ。
ラッキー!飯食う金なかったから今日はメシ抜きにしようとしていたところだったんだ。
次いつ食えるか分からねえ。ここは遠慮なくご馳走になっておこう。
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