#09 ツバメが旅立つ頃に
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side.コビー
ツバメさんがいなくなってから1年が経とうとしていた。
僕は18歳。
少尉だった僕は大佐になって、あの時以上に忙しく飛び回っていた。
ツバメさんは、今どうしているだろうか。
どこにいるのかも、何をしているのかも、誰といるのかも、生きているのか亡くなっているのかもわからないのは時に重くのしかかってくるけど、僕だって、負けていられない。
海軍大将になると約束したから。
あの日、朝起きたら、ツバメさんはもういなくなっていた。
それ以外は恐ろしいほどいつも通りの朝だった。
結婚指輪も、ケースの中に入ったまま。
ただツバメさんだけがいない部屋で、彼女の残り香の残った布団で眠った。
はじめて朝稽古を休んだ。
朝、ツバメさんがしてくれたように、コーヒーを淹れてみた。
やっぱり彼女のようにうまく作れなくて、ミルクを多めに入れてごまかした。
窓枠に座って、枕元に置いてあった煙草を吸ってみた。
むせてむせて仕方なかった。
でも、そこから見る朝日をバックにした稽古の風景を見ると、泣きたくなってしまった。
それから僕は、あの部屋に住むようになった。
帰りを待つと言ったけど、本当は分かってた。
もう帰ってこないってこと。
それでも、帰りを待ちたかった。
『世界中飛び回る渡り鳥なのに、海軍本部の軒先にだけ年中住んでいる鳥の名前』
注意して見たことはなかったけど、あれから本部の正面玄関を通るときに、口を開けて待っている雛鳥に親鳥が餌を運んでいる様子を毎回眺めるようになった。
ツバメを見つけるたびに、不器用だけど優しかった彼女を思い出す。
窓から入ってくる僕をいつも出迎えてくれた。
僕が落ち込んでいるとカフェオレを作ってくれた。
戦場で子供を助けようとして大怪我をしていたこともあった。
この気持ちも、いつかはなくなってしまうのだろうかと思っていたけど、どこにいても彼女のことを思い出す。
結婚指輪をいまだに大事にコートのポケットに入れているからか、僕の方は気持ちは全く変わっていないけれど。
ツバメさんは、僕のことなんて忘れてしまっているだろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~
「センゴクさん、コビーです」
「入れ」
センゴクさんの部屋に入ると、いきなりアルバムのような大きな本を渡された。
「お前に縁談が来ているのだが」
縁談。
大佐になってから増えたな。
中身を見ても全然興味がわかない。
「僕は結婚はしませんよ」
淡々と告げると、センゴクさんは少し心配そうな顔をした。
気を遣ってくれているのは分かるけど、僕ってそんなに落ちているように見えるのだろうか。
今の僕は、ツバメさんの帰りを待つことと、ツバメさんとの約束を守ることしか考えていないから。
他の人となんて、考えられなかった。
ツバメさんがいなくなってから1年が経とうとしていた。
僕は18歳。
少尉だった僕は大佐になって、あの時以上に忙しく飛び回っていた。
ツバメさんは、今どうしているだろうか。
どこにいるのかも、何をしているのかも、誰といるのかも、生きているのか亡くなっているのかもわからないのは時に重くのしかかってくるけど、僕だって、負けていられない。
海軍大将になると約束したから。
あの日、朝起きたら、ツバメさんはもういなくなっていた。
それ以外は恐ろしいほどいつも通りの朝だった。
結婚指輪も、ケースの中に入ったまま。
ただツバメさんだけがいない部屋で、彼女の残り香の残った布団で眠った。
はじめて朝稽古を休んだ。
朝、ツバメさんがしてくれたように、コーヒーを淹れてみた。
やっぱり彼女のようにうまく作れなくて、ミルクを多めに入れてごまかした。
窓枠に座って、枕元に置いてあった煙草を吸ってみた。
むせてむせて仕方なかった。
でも、そこから見る朝日をバックにした稽古の風景を見ると、泣きたくなってしまった。
それから僕は、あの部屋に住むようになった。
帰りを待つと言ったけど、本当は分かってた。
もう帰ってこないってこと。
それでも、帰りを待ちたかった。
『世界中飛び回る渡り鳥なのに、海軍本部の軒先にだけ年中住んでいる鳥の名前』
注意して見たことはなかったけど、あれから本部の正面玄関を通るときに、口を開けて待っている雛鳥に親鳥が餌を運んでいる様子を毎回眺めるようになった。
ツバメを見つけるたびに、不器用だけど優しかった彼女を思い出す。
窓から入ってくる僕をいつも出迎えてくれた。
僕が落ち込んでいるとカフェオレを作ってくれた。
戦場で子供を助けようとして大怪我をしていたこともあった。
この気持ちも、いつかはなくなってしまうのだろうかと思っていたけど、どこにいても彼女のことを思い出す。
結婚指輪をいまだに大事にコートのポケットに入れているからか、僕の方は気持ちは全く変わっていないけれど。
ツバメさんは、僕のことなんて忘れてしまっているだろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~
「センゴクさん、コビーです」
「入れ」
センゴクさんの部屋に入ると、いきなりアルバムのような大きな本を渡された。
「お前に縁談が来ているのだが」
縁談。
大佐になってから増えたな。
中身を見ても全然興味がわかない。
「僕は結婚はしませんよ」
淡々と告げると、センゴクさんは少し心配そうな顔をした。
気を遣ってくれているのは分かるけど、僕ってそんなに落ちているように見えるのだろうか。
今の僕は、ツバメさんの帰りを待つことと、ツバメさんとの約束を守ることしか考えていないから。
他の人となんて、考えられなかった。