一章.怖めず臆せず
何度繰り返しても、命を摘み取る作業は慣れないし心が痛む。
まだ心がある事に安心しながらも、無くなったほうが楽なのにと思う。
「ルトゥー、追加兵が来たぞ。今回は戦闘員は居ないみたいだ」
璃一が水筒を持って現れる。
手渡された水筒に口を付けると、乾いた体に水が染み込むようで飢えていた事を知る。
「…戦闘員が減っていることを上層部は知らないのか?」
水筒を傍らに置くと、軍帽を手に取り剥がれてしまった徽章部分を指でなぞる。
璃一は少し迷ったように、飛行帽を脱ぎ口を開く。
「知っては居るだろうが…どうやら帝国上がりのとある親王がこれ以上の兵員の導入を無理矢理に止めているらしいと聞いた。しかも、そいつが此処に来たと」
そのシンノウとやらが、事実を知る人物なのかそれとも戦況を憂いた結果かは分からないが、無駄に人が死ぬよりはいいなと思った。
「点呼ー!点呼ー!全人員、整列!」
基地長の怒鳴り声。
行かなければ、と立ち上がろうとすれば璃一に目で制される。
そういえば、今後は朝礼等に出なくともいいと言われたのだった。
どんな奴らが来たのか見たい気もしたが、トラウマが蘇り暴れてしまえば元も子もない。
大人しく椅子に座り直し「結果を楽しみにしておく」と璃一に伝え、そっと目を閉じる。
璃一が出て行った気配を感じ、目を開く。
一冊だけ部屋にある本を手に取り、適当なページを開き読もうとするが中々焦点が合わない。
この所能力を酷使したせいかなと思い出し、窓の外からいつものように山を見る。
―嗚呼、これは確実に色が落ちてきている
道理で、焦点が合わなくなる訳だ。
どうしたものかな、と考えていれば入団式をしている方で歓声が上がる。
珍しいな、と視線をそちらに向けてみれば悲しいかな。
己の逃れられない因果を呪う。
「今回は、大丈夫だと思ったんだがな。」
敢えて突き放そうか。
それとも、最初から印象が悪くなるようにしようか。
どんな事をしてもいつも 近付いてくるし、いつの間にか落ちてしまう。
「……会わないのが第一だな」
そう決めてはみるが、無意味なのだろうなと。
そもそも、彼女は覚えているだろうか。
五体満足なのだろうか。
関わらなければ、彼女は死なずに済むのではないかと淡い希望を抱いているはずなのに、心配ばかりが浮かぶ。
悶々と思考を巡らせていれば、ドタバタと廊下を走る音が。
「ルトゥー!!いい知らせと悪い知らせが!!」
息を切らせてやって来た、璃一がドアを蹴破る勢いで入ってきた。
「大体のことは予想が付いている…焦ることではないさ。いずれはこうなっていただろうから。…それはそうと…」
「第一遊撃隊帰還!!負傷者一名!繰り返す!第一遊撃隊帰還!!負傷者一名!」
言葉を紡ぎかけた所で、鳥が見知った者の声で鳴いて回る。
ー第一遊撃隊は確か、シキシマとスラヴァが居たはず…
璃一の顔をチラリと見てみれば、顔色が悪く今にも吐きそうな表情をしていた。
窓の外では、第一遊撃隊の兵士が何やら叫びながら荷車を引いていて、入団式に集まった兵士らも、バタバタと動き出しそんなに重症なのかと心配になる。
璃一にアイコンタクトで行くように促す前に、いつの間にやら彼は荷車の方に駆けていた。
荷車を見るなり璃一は混乱したように、横たわっていた人物を抱えると医務室の方へフラフラと頼りない足取りで歩き出す。
兵士等が何やら言っているがそれを鬼の様な形相で振り払う。
璃一一人では少し不安だと思いながら、深呼吸をして部屋を出た。
まだ心がある事に安心しながらも、無くなったほうが楽なのにと思う。
「ルトゥー、追加兵が来たぞ。今回は戦闘員は居ないみたいだ」
璃一が水筒を持って現れる。
手渡された水筒に口を付けると、乾いた体に水が染み込むようで飢えていた事を知る。
「…戦闘員が減っていることを上層部は知らないのか?」
水筒を傍らに置くと、軍帽を手に取り剥がれてしまった徽章部分を指でなぞる。
璃一は少し迷ったように、飛行帽を脱ぎ口を開く。
「知っては居るだろうが…どうやら帝国上がりのとある親王がこれ以上の兵員の導入を無理矢理に止めているらしいと聞いた。しかも、そいつが此処に来たと」
そのシンノウとやらが、事実を知る人物なのかそれとも戦況を憂いた結果かは分からないが、無駄に人が死ぬよりはいいなと思った。
「点呼ー!点呼ー!全人員、整列!」
基地長の怒鳴り声。
行かなければ、と立ち上がろうとすれば璃一に目で制される。
そういえば、今後は朝礼等に出なくともいいと言われたのだった。
どんな奴らが来たのか見たい気もしたが、トラウマが蘇り暴れてしまえば元も子もない。
大人しく椅子に座り直し「結果を楽しみにしておく」と璃一に伝え、そっと目を閉じる。
璃一が出て行った気配を感じ、目を開く。
一冊だけ部屋にある本を手に取り、適当なページを開き読もうとするが中々焦点が合わない。
この所能力を酷使したせいかなと思い出し、窓の外からいつものように山を見る。
―嗚呼、これは確実に
道理で、焦点が合わなくなる訳だ。
どうしたものかな、と考えていれば入団式をしている方で歓声が上がる。
珍しいな、と視線をそちらに向けてみれば悲しいかな。
己の逃れられない因果を呪う。
「今回は、大丈夫だと思ったんだがな。」
敢えて突き放そうか。
それとも、最初から印象が悪くなるようにしようか。
どんな事をしても
「……会わないのが第一だな」
そう決めてはみるが、無意味なのだろうなと。
そもそも、彼女は覚えているだろうか。
五体満足なのだろうか。
関わらなければ、彼女は死なずに済むのではないかと淡い希望を抱いているはずなのに、心配ばかりが浮かぶ。
悶々と思考を巡らせていれば、ドタバタと廊下を走る音が。
「ルトゥー!!いい知らせと悪い知らせが!!」
息を切らせてやって来た、璃一がドアを蹴破る勢いで入ってきた。
「大体のことは予想が付いている…焦ることではないさ。いずれはこうなっていただろうから。…それはそうと…」
「第一遊撃隊帰還!!負傷者一名!繰り返す!第一遊撃隊帰還!!負傷者一名!」
言葉を紡ぎかけた所で、鳥が見知った者の声で鳴いて回る。
ー第一遊撃隊は確か、シキシマとスラヴァが居たはず…
璃一の顔をチラリと見てみれば、顔色が悪く今にも吐きそうな表情をしていた。
窓の外では、第一遊撃隊の兵士が何やら叫びながら荷車を引いていて、入団式に集まった兵士らも、バタバタと動き出しそんなに重症なのかと心配になる。
璃一にアイコンタクトで行くように促す前に、いつの間にやら彼は荷車の方に駆けていた。
荷車を見るなり璃一は混乱したように、横たわっていた人物を抱えると医務室の方へフラフラと頼りない足取りで歩き出す。
兵士等が何やら言っているがそれを鬼の様な形相で振り払う。
璃一一人では少し不安だと思いながら、深呼吸をして部屋を出た。
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