始まりと出会いは冬の島
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
冬島、ドラム島
そこは王さまが国民を捨て逃げ出した国
その国にはドラムロックと呼ばれる断崖絶壁の山々が多く存在する
そんなドラムロックの頂上に王無き王城が聳え立つ
そこに住まうは一人の魔女と一匹のトナカイ
雪に覆われる白の世界に一人の少年が舞い降りた
「ドクター!大変だよ!!」
青い鼻をした二足歩行の生き物、名をトニートニー・チョッパーという
チョッパーは、城の門前に倒れる少年を発見するや大声を上げる
それもそのはず、雪の中に倒れる少年は気を失っており、その少年を中心に白い雪がピンクから赤へと色を変えて行くのだから少年の状態の重篤さがうかがえる
「どうしたんだいチョッパー、そんなに大声を出すんじゃないよ」
城の奥から一人の人物がやって来る
名をドクトリーヌ
この城に住まう魔女である
彼女はチョッパーの前に倒れる少年を目にするやその表情を一変させ、眉間に深くシワを刻ませた
彼女にも事の深刻さが理解できたためである
「どうしよう!?」
「とにかくこんなところにいたら凍死しちまう。さっさと中に運びな!即手術だよ!!」
「う、うん!!」
チョッパーは、そう返事を返すと小さかった身体を大人程の大きさに変えて少年を抱き上げた
チョッパーは、見た目よりも更に軽い少年に顔を青ざめさせながらも慎重にされどできるだけ速く、少年を城の中へと運び込んだ
少年の名は、ライフォード・ロランス
イギリス人のエクソシストである
―――
――
―
ライフォードが、目を覚ましたときそこは暖かな部屋のベッドの上であった
「ここは…」
ライフォードは、見たことのない天井に呆然とそう呟く
しかし、その言葉に返答を返す人物は部屋の中にいなかった
「確か、レベル2のAKUMAと戦って…」
ライフォードは、状況の確認のためにそう言葉を発しながらゆっくりと身体を起き上がらせる
途中、縫合されたであろう傷口が痛んだが痛みに慣れているライフォードは僅かに顔をしかめただけだった
時間は、数日前に遡る ―――
ライフォードは、荒れ荒んだ一つの町でAKUMAの殲滅任務に就いていた
姉のように慕っていた同輩でもあるエクソシストを目の前で亡くし、ライフォード自身もその時にかなりの重症を負った
そんな出来事から僅か二週間、ライフォードは心の傷も身体の傷も癒えぬまま任務に赴いていた
同行したファインダーははためく団服の隙間から垣間見える血の滲む包帯に無言で両手を強く握り込んだ
「(ああ、どうしてこのようなことが…まだ、こんなにも幼い少年だというのに…)」
ファインダーは、目の前に立つまだ幼さの残る横顔を見つめて顔を歪ませた
「どうしました?難しい顔をされてますよ?どこかお怪我でも?」
ライフォードは、心配そうにファインダーの顔を覗きこむ
その優しさにファインダーは更に泣きそうな顔でライフォードを見つめ返す
「怪我をされているのはあなた様でしょう?辛くはないのですか?あなたは大切な方を亡くされたばかりと窺いました…」
ファインダーは、やるせない気持ちになんとか蓋をしてライフォードにそう尋ね返す
「Miss.メリッサのことならお気遣い有難うございます…ですが、今僕が立ち止まるわけにはいかないのですよ…」
「しかし…」
「怪我のこともそんなに心配しないでください。少し大袈裟に処置されているだけですから…」
ファインダーの言葉に困ったように苦笑を漏らすライフォードだったが、ファインダーは知っていた
彼の傷は、通常なら絶対安静の状態だということも戦場に立つ理由が誰かの命を守ることに繋がると知っているからの強がりであることも
エクソシストにしかAKUMAは破壊できない
エクソシストが戦えなくなるということはそれだけ力のないファインダーや一般人が死ぬということ
彼は、そんな犠牲を出さないために無理を押して戦っているのだ
「(ああ、何て無力なんだ…せめて…)」
ファインダーは、小さき神の使徒の背を見つめながらどこにいるとも知れぬ神に祈らずにはいられなかった
どうか、この尊き方に心の平穏を…と
しかし、そんなファインダーの願い空しく廃墟と化した町には大量のAKUMAの姿があった
そして、そのAKUMAの中に時空を歪める能力を持ったAKUMAがいたためライフォードはこの世界へと落とされてしまったのだ
なんとかAKUMAを破壊できたものの元から酷かった傷は開き、更には新しい傷まで重なり、ライフォードは吹雪の中で気を失った
「誰が、ここまでの手当てを?」
ライフォードは、今までのことを整理しながら首を傾げる
「!!何してんだ!?」
考えを巡らしていたところに響いた大声にライフォードは声の主へと視線を向けた
そこには青い鼻に二足歩行の動物、チョッパーがいた
それは、新しい出会い
そして、始まり
神に願いし平穏は違う形で叶えられるのか
それとも? ―――
ライフォードは、突然の大声に目をぱちくりとさせている
「なに起き上がってるんだよ!?まだ、寝てないと!!」
チョッパーは、慌てて持っていた水差しをテーブルの上に乱雑に置くとライフォードへと駆け寄る
「あの…」
ライフォードは、状況に着いていけずに呆けたままチョッパーを見つめた
見たこともない生き物が二足歩行で尚且つ言葉を話していれば誰でも呆然とすることだろう
「ほら、まだ安静にしてないと!!お前ひどい怪我なんだから!!」
ライフォードは、チョッパーに促されてゆっくりとベッドへ横になる
「あの、あなたは…」
ライフォードは、チョッパーに向かって口を開くがチョッパーが返答を返すよりも速く部屋に別の来訪者があった
「騒がしいと思ったら目が覚めたのかい?」
ドクトリーヌ、改めDr.くれははゆっくりとベッドへ足を進める
また、新たな人物の登場にライフォードは目をぱちくりとさせている
「あんたは、少なくともあと3週間は絶対安静さ。なんせ、全治3ヶ月の大怪我だ」
Dr.くれはは、そう言ってベッド脇の椅子に座る
チョッパーは、ベッドの脇でライフォードが起き上がらないように優しく身体を押さえ込んでいる
「……随分とご迷惑をおかけしました」
ライフォードは、Dr.くれはの口ぶりから自分を助け治療したのが目の前の二人であることを理解しベッドに横になったままそう謝罪した
「別に迷惑だなんて思ったらそのまま放っておいたさ」
「有難うございます。自己紹介が遅くなりました…僕は、ライフォード。ライフォード・ロランスと言います」
「わたしゃここで医者をやってるDr.くれはだ。ドクトリーヌと呼びな。そんであんたの側にいるのがチョッパーだ。そいつも医者だよ」
「お、オレ!トニートニー・チョッパー!!」
「おや、珍しいね…こいつが怖がらない何て…」
Dr.くれはは、チョッパーの様子に不思議そうにされど嬉しそうに言葉を発した
その言葉にライフォードは首をかしげる
「何でかわかんないけどライフォードのことは怖くねーんだ…」
チョッパーは、どこかはにかんだ様子でライフォードを見返す
「ま、何でもいいさね」
Dr.くれはは、そう言って仕切り直すかのようにライフォードへと視線を向ける
「あの、ここがあなたの家であることはわかりましたが…その…」
ライフォードは、視線をさ迷わせながら言葉を探す
目の前の現実から今の自身が置かれた状況を鑑みるに自分がイギリスではない別のところにいる可能性が高いとライフォードは考えた
しかし、しゃべる二足歩行の動物などの聞いたこともない
まさか、イノセンスの適合者かと始めは考えたがイノセンスの気配は感じられない
これらのことからライフォードは、Dr.くれはに現在の所在を確認するのに言葉を濁らせてしまった
「…ここは、“名も無き国”さ…」
Dr.くれはは、ライフォードの様子から言いたいことを読み取りそう答えた
その言葉にライフォードの顔に困惑が浮かぶ
「名も無き国?」
「ああ、元はドラム王国って名前だったんだがね…海賊によって滅ぼされちまったんだよ」
「!…海賊ですか?」
Dr.くれはの淡々とした説明にライフォードは再び困惑し始める
AKUMAにならまだしも海賊に一つの王国が滅ぼされるなど聞いたことがないからである
「…どうかしたのかい?」
「あの、突然申し訳ないのですがあればで結構です。世界地図を見させていただけませんか?」
「別に構いやしないが…チョッパー」
神妙な顔をしたライフォードにDr.くれはは、そう答えるとチョッパーへ視線を向ける
「うん!今、取ってくる!!」
チョッパーは、そう答えると勢いよく部屋から飛び出して行った
「…さてと、今のうちに聞いときたいことが2、3あるんだがね?」
徐に口を開いたDr.くれはにライフォードは真剣な面持ちで視線を合わせた
どこか張りつめた空気が辺りに漂う
「…まず、あんたいくつだい?」
Dr.くれはから発せられた予想外の問いかけにライフォードは僅かに目を見開いた
「どうしたんだい?」
「いえ、予想していた問いと随分違っていたもので…」
「フンッ…あんたが何処から来たのかより私はあんたがどういった経緯でそんな怪我を負ったのかって方が気になるんでね…それに見たところ15にも満たないようなガキがどうすれば全治3ヶ月もの怪我を負うのかねぇ?」
「やはり、この傷の治療はお二人が…」
「ああ、私らがやったものさ…チョッパーは、あまりの傷のひどさに途中から泣き出して使い物になりゃしなかったがね」
「…重ね重ねご迷惑をおかけしました」
ライフォードは、Dr.くれはの言葉に苦笑を浮かべながら謝罪を口にする
「そんなことはどうでもいいんだよ。それで?あんたの年は?…どこでそんな怪我をこさえてその上録な治療もせずに動き回ってたんだい」
Dr.くれはは、眉間にシワを深く刻ませながらライフォードに再度問いかける
「クスッ…Miss.くれは。あなたは随分と腕の良いお医者様のようですね」
ライフォードは、Dr.くれはの断言する口ぶりから困ったように苦笑を漏らす
「ドクトリーヌと呼びな。ほら、さっさと答えな」
「僕は、今年13になりました。怪我は仕事で負ったものです」
「それだけじゃないはずだ…」
Dr.くれはは、重々しい口調でそう促す
「本当にそれだけです。それと、怪我の治療はちゃんと行われてましたし…仕事の方が忙しくて休むことが…」
ライフォードの言葉をDr.くれはは遮った
「医者の目を嘗めんじゃないよ」
「!!」
ライフォードは、Dr.くれはの真剣な眼差しに口を閉ざす
「…あんたの身体は動けるような状態じゃなかった…それ程の大怪我をしておきながら尚、あんたは戦い続けていたんじゃないのかい?…傷が治りきる前に新たな傷をこさえるような生活をしてきたんだろ…」
「…」
ライフォードは、ただ黙ってDr.くれはの話を聞いていた
その医者としての真摯な瞳にライフォードは、口を開けないのだ
「あんたの身体はそう言ってる…全く、たかだか13のガキが何をそんなに死に急いでんだい」
Dr.くれはは、大きな溜め息と共にそう締め括る
ライフォードは、苦笑を浮かべながらも口を開く
「死に急いでいるつもりはないのですが…」
Dr.くれはは、そう呟いたライフォードの顔を見つめ更に口を開く
「それと、あんたが知りたがっていることだがね?」
「え?」
急な話の転換に戸惑った声を上げるライフォード
そんなライフォードにDr.くれはの口から衝撃的な爆弾が発せられる
「ここはあんたがいた世界とは違う、異世界ってやつさ」
Dr.くれはの言葉にライフォードは目を見開き固まった
「何だい?大方の予想はついていたんだろう?」
「異世界…」
「ここは、グランドラインにある冬島さ…ま、今日から少なくとも3週間はベッドの中だ。ゆっくりとこの世界のことでも勉強するんだね」
Dr.くれはは、驚き言葉のでないライフォードの様子にニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてそう告げる
ライフォードは、なんと反応してよいかわからずに苦笑を浮かべながらも無言を貫いた
「チョッパー、ライに色々と教えてやんな」
Dr.くれはは、いつの間にかライフォードを愛称で呼ぶようにしたようでニヤリと笑ったまま部屋の入り口で聞き耳を立てていたチョッパーへとそう告げた
これにはチョッパーも思わず飛び上がって驚き、こっそりと部屋の中へと視線を向けた
そこには、目を見開いて驚くライフォードと椅子に腰かけて意気揚々と笑っているDr.くれはの姿があった
こうして、否応なしにライフォードの異世界生活が幕をあげたのであった
そこは王さまが国民を捨て逃げ出した国
その国にはドラムロックと呼ばれる断崖絶壁の山々が多く存在する
そんなドラムロックの頂上に王無き王城が聳え立つ
そこに住まうは一人の魔女と一匹のトナカイ
雪に覆われる白の世界に一人の少年が舞い降りた
「ドクター!大変だよ!!」
青い鼻をした二足歩行の生き物、名をトニートニー・チョッパーという
チョッパーは、城の門前に倒れる少年を発見するや大声を上げる
それもそのはず、雪の中に倒れる少年は気を失っており、その少年を中心に白い雪がピンクから赤へと色を変えて行くのだから少年の状態の重篤さがうかがえる
「どうしたんだいチョッパー、そんなに大声を出すんじゃないよ」
城の奥から一人の人物がやって来る
名をドクトリーヌ
この城に住まう魔女である
彼女はチョッパーの前に倒れる少年を目にするやその表情を一変させ、眉間に深くシワを刻ませた
彼女にも事の深刻さが理解できたためである
「どうしよう!?」
「とにかくこんなところにいたら凍死しちまう。さっさと中に運びな!即手術だよ!!」
「う、うん!!」
チョッパーは、そう返事を返すと小さかった身体を大人程の大きさに変えて少年を抱き上げた
チョッパーは、見た目よりも更に軽い少年に顔を青ざめさせながらも慎重にされどできるだけ速く、少年を城の中へと運び込んだ
少年の名は、ライフォード・ロランス
イギリス人のエクソシストである
―――
――
―
ライフォードが、目を覚ましたときそこは暖かな部屋のベッドの上であった
「ここは…」
ライフォードは、見たことのない天井に呆然とそう呟く
しかし、その言葉に返答を返す人物は部屋の中にいなかった
「確か、レベル2のAKUMAと戦って…」
ライフォードは、状況の確認のためにそう言葉を発しながらゆっくりと身体を起き上がらせる
途中、縫合されたであろう傷口が痛んだが痛みに慣れているライフォードは僅かに顔をしかめただけだった
時間は、数日前に遡る ―――
ライフォードは、荒れ荒んだ一つの町でAKUMAの殲滅任務に就いていた
姉のように慕っていた同輩でもあるエクソシストを目の前で亡くし、ライフォード自身もその時にかなりの重症を負った
そんな出来事から僅か二週間、ライフォードは心の傷も身体の傷も癒えぬまま任務に赴いていた
同行したファインダーははためく団服の隙間から垣間見える血の滲む包帯に無言で両手を強く握り込んだ
「(ああ、どうしてこのようなことが…まだ、こんなにも幼い少年だというのに…)」
ファインダーは、目の前に立つまだ幼さの残る横顔を見つめて顔を歪ませた
「どうしました?難しい顔をされてますよ?どこかお怪我でも?」
ライフォードは、心配そうにファインダーの顔を覗きこむ
その優しさにファインダーは更に泣きそうな顔でライフォードを見つめ返す
「怪我をされているのはあなた様でしょう?辛くはないのですか?あなたは大切な方を亡くされたばかりと窺いました…」
ファインダーは、やるせない気持ちになんとか蓋をしてライフォードにそう尋ね返す
「Miss.メリッサのことならお気遣い有難うございます…ですが、今僕が立ち止まるわけにはいかないのですよ…」
「しかし…」
「怪我のこともそんなに心配しないでください。少し大袈裟に処置されているだけですから…」
ファインダーの言葉に困ったように苦笑を漏らすライフォードだったが、ファインダーは知っていた
彼の傷は、通常なら絶対安静の状態だということも戦場に立つ理由が誰かの命を守ることに繋がると知っているからの強がりであることも
エクソシストにしかAKUMAは破壊できない
エクソシストが戦えなくなるということはそれだけ力のないファインダーや一般人が死ぬということ
彼は、そんな犠牲を出さないために無理を押して戦っているのだ
「(ああ、何て無力なんだ…せめて…)」
ファインダーは、小さき神の使徒の背を見つめながらどこにいるとも知れぬ神に祈らずにはいられなかった
どうか、この尊き方に心の平穏を…と
しかし、そんなファインダーの願い空しく廃墟と化した町には大量のAKUMAの姿があった
そして、そのAKUMAの中に時空を歪める能力を持ったAKUMAがいたためライフォードはこの世界へと落とされてしまったのだ
なんとかAKUMAを破壊できたものの元から酷かった傷は開き、更には新しい傷まで重なり、ライフォードは吹雪の中で気を失った
「誰が、ここまでの手当てを?」
ライフォードは、今までのことを整理しながら首を傾げる
「!!何してんだ!?」
考えを巡らしていたところに響いた大声にライフォードは声の主へと視線を向けた
そこには青い鼻に二足歩行の動物、チョッパーがいた
それは、新しい出会い
そして、始まり
神に願いし平穏は違う形で叶えられるのか
それとも? ―――
ライフォードは、突然の大声に目をぱちくりとさせている
「なに起き上がってるんだよ!?まだ、寝てないと!!」
チョッパーは、慌てて持っていた水差しをテーブルの上に乱雑に置くとライフォードへと駆け寄る
「あの…」
ライフォードは、状況に着いていけずに呆けたままチョッパーを見つめた
見たこともない生き物が二足歩行で尚且つ言葉を話していれば誰でも呆然とすることだろう
「ほら、まだ安静にしてないと!!お前ひどい怪我なんだから!!」
ライフォードは、チョッパーに促されてゆっくりとベッドへ横になる
「あの、あなたは…」
ライフォードは、チョッパーに向かって口を開くがチョッパーが返答を返すよりも速く部屋に別の来訪者があった
「騒がしいと思ったら目が覚めたのかい?」
ドクトリーヌ、改めDr.くれははゆっくりとベッドへ足を進める
また、新たな人物の登場にライフォードは目をぱちくりとさせている
「あんたは、少なくともあと3週間は絶対安静さ。なんせ、全治3ヶ月の大怪我だ」
Dr.くれはは、そう言ってベッド脇の椅子に座る
チョッパーは、ベッドの脇でライフォードが起き上がらないように優しく身体を押さえ込んでいる
「……随分とご迷惑をおかけしました」
ライフォードは、Dr.くれはの口ぶりから自分を助け治療したのが目の前の二人であることを理解しベッドに横になったままそう謝罪した
「別に迷惑だなんて思ったらそのまま放っておいたさ」
「有難うございます。自己紹介が遅くなりました…僕は、ライフォード。ライフォード・ロランスと言います」
「わたしゃここで医者をやってるDr.くれはだ。ドクトリーヌと呼びな。そんであんたの側にいるのがチョッパーだ。そいつも医者だよ」
「お、オレ!トニートニー・チョッパー!!」
「おや、珍しいね…こいつが怖がらない何て…」
Dr.くれはは、チョッパーの様子に不思議そうにされど嬉しそうに言葉を発した
その言葉にライフォードは首をかしげる
「何でかわかんないけどライフォードのことは怖くねーんだ…」
チョッパーは、どこかはにかんだ様子でライフォードを見返す
「ま、何でもいいさね」
Dr.くれはは、そう言って仕切り直すかのようにライフォードへと視線を向ける
「あの、ここがあなたの家であることはわかりましたが…その…」
ライフォードは、視線をさ迷わせながら言葉を探す
目の前の現実から今の自身が置かれた状況を鑑みるに自分がイギリスではない別のところにいる可能性が高いとライフォードは考えた
しかし、しゃべる二足歩行の動物などの聞いたこともない
まさか、イノセンスの適合者かと始めは考えたがイノセンスの気配は感じられない
これらのことからライフォードは、Dr.くれはに現在の所在を確認するのに言葉を濁らせてしまった
「…ここは、“名も無き国”さ…」
Dr.くれはは、ライフォードの様子から言いたいことを読み取りそう答えた
その言葉にライフォードの顔に困惑が浮かぶ
「名も無き国?」
「ああ、元はドラム王国って名前だったんだがね…海賊によって滅ぼされちまったんだよ」
「!…海賊ですか?」
Dr.くれはの淡々とした説明にライフォードは再び困惑し始める
AKUMAにならまだしも海賊に一つの王国が滅ぼされるなど聞いたことがないからである
「…どうかしたのかい?」
「あの、突然申し訳ないのですがあればで結構です。世界地図を見させていただけませんか?」
「別に構いやしないが…チョッパー」
神妙な顔をしたライフォードにDr.くれはは、そう答えるとチョッパーへ視線を向ける
「うん!今、取ってくる!!」
チョッパーは、そう答えると勢いよく部屋から飛び出して行った
「…さてと、今のうちに聞いときたいことが2、3あるんだがね?」
徐に口を開いたDr.くれはにライフォードは真剣な面持ちで視線を合わせた
どこか張りつめた空気が辺りに漂う
「…まず、あんたいくつだい?」
Dr.くれはから発せられた予想外の問いかけにライフォードは僅かに目を見開いた
「どうしたんだい?」
「いえ、予想していた問いと随分違っていたもので…」
「フンッ…あんたが何処から来たのかより私はあんたがどういった経緯でそんな怪我を負ったのかって方が気になるんでね…それに見たところ15にも満たないようなガキがどうすれば全治3ヶ月もの怪我を負うのかねぇ?」
「やはり、この傷の治療はお二人が…」
「ああ、私らがやったものさ…チョッパーは、あまりの傷のひどさに途中から泣き出して使い物になりゃしなかったがね」
「…重ね重ねご迷惑をおかけしました」
ライフォードは、Dr.くれはの言葉に苦笑を浮かべながら謝罪を口にする
「そんなことはどうでもいいんだよ。それで?あんたの年は?…どこでそんな怪我をこさえてその上録な治療もせずに動き回ってたんだい」
Dr.くれはは、眉間にシワを深く刻ませながらライフォードに再度問いかける
「クスッ…Miss.くれは。あなたは随分と腕の良いお医者様のようですね」
ライフォードは、Dr.くれはの断言する口ぶりから困ったように苦笑を漏らす
「ドクトリーヌと呼びな。ほら、さっさと答えな」
「僕は、今年13になりました。怪我は仕事で負ったものです」
「それだけじゃないはずだ…」
Dr.くれはは、重々しい口調でそう促す
「本当にそれだけです。それと、怪我の治療はちゃんと行われてましたし…仕事の方が忙しくて休むことが…」
ライフォードの言葉をDr.くれはは遮った
「医者の目を嘗めんじゃないよ」
「!!」
ライフォードは、Dr.くれはの真剣な眼差しに口を閉ざす
「…あんたの身体は動けるような状態じゃなかった…それ程の大怪我をしておきながら尚、あんたは戦い続けていたんじゃないのかい?…傷が治りきる前に新たな傷をこさえるような生活をしてきたんだろ…」
「…」
ライフォードは、ただ黙ってDr.くれはの話を聞いていた
その医者としての真摯な瞳にライフォードは、口を開けないのだ
「あんたの身体はそう言ってる…全く、たかだか13のガキが何をそんなに死に急いでんだい」
Dr.くれはは、大きな溜め息と共にそう締め括る
ライフォードは、苦笑を浮かべながらも口を開く
「死に急いでいるつもりはないのですが…」
Dr.くれはは、そう呟いたライフォードの顔を見つめ更に口を開く
「それと、あんたが知りたがっていることだがね?」
「え?」
急な話の転換に戸惑った声を上げるライフォード
そんなライフォードにDr.くれはの口から衝撃的な爆弾が発せられる
「ここはあんたがいた世界とは違う、異世界ってやつさ」
Dr.くれはの言葉にライフォードは目を見開き固まった
「何だい?大方の予想はついていたんだろう?」
「異世界…」
「ここは、グランドラインにある冬島さ…ま、今日から少なくとも3週間はベッドの中だ。ゆっくりとこの世界のことでも勉強するんだね」
Dr.くれはは、驚き言葉のでないライフォードの様子にニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてそう告げる
ライフォードは、なんと反応してよいかわからずに苦笑を浮かべながらも無言を貫いた
「チョッパー、ライに色々と教えてやんな」
Dr.くれはは、いつの間にかライフォードを愛称で呼ぶようにしたようでニヤリと笑ったまま部屋の入り口で聞き耳を立てていたチョッパーへとそう告げた
これにはチョッパーも思わず飛び上がって驚き、こっそりと部屋の中へと視線を向けた
そこには、目を見開いて驚くライフォードと椅子に腰かけて意気揚々と笑っているDr.くれはの姿があった
こうして、否応なしにライフォードの異世界生活が幕をあげたのであった
1/1ページ