主人公の名前を決めてください
第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ライフォードが、町を出立して約半年の月日が流れた。
その間、ライフォードはクロスを師匠としエクソシストとしての経験を積んでいた。
今ではお互いの距離も縮まり、『クロス』『ライ』と呼び合う仲にまでなっていた。
そんな二人であったが一つだけ大きな問題があった。
クロスが、予想以上にライフォードとの別れを渋り、中々黒の教団本部に行くことが出来ないのだ。
しかし、ライフォードはそんなクロスを宥めすかし、なんとか黒の教団本部があるイギリスまで来ることができていた。
「…クロス。いい加減に離れてくれませんか?」
ライフォードは、自身を背後から抱き締めて放さないクロスに不機嫌そうに声を上げる。
「…」
クロスは、ピクリとも動かずただ黙ってライフォードを抱き締め続けている。
「クロス?」
「…ハァ~…」
ライフォードの問い掛けにやはり言葉は返って来ず、頭上で大きな溜め息が溢れただけであった。
「何で人の頭上でそんな盛大な溜め息を吐くんですか…」
「いや…」
「…ボクは一人でも平気ですよ?」
「そういうと思ったぜ…」
ひどく不機嫌な様子でぶっきらぼうに言葉が返される。
「何をそこまで悩んでいるんですか?」
「…なぁ…」
「なんですか?」
「もう少しだけ…」
「ここまで来て何を言っているんですか。黒の教団本部に連れて来て下さったんじゃないんですか?」
「…」
ライフォードの言葉にクロスは苦虫でも噛んだかのように盛大に顔を歪めた。
その顔は言外に不服ですと物語っている。
「…クロスが、教団本部を嫌いなことは知っています。それにボクと居ることを好きでいてくれていることも」
「ならッ!」
「だからといってこれ以上の我が儘は聞きませんよ?」
「…ライ」
クロスは、己の腕の中に収まる小さい弟子に向かって殊更優しい声で語りかける。
「甘えてもダメです。ボクはすでに修行を終えているんですよ?それなのに約三ヶ月も貴方の我が儘に付き合って教団行きを先伸ばしにしているんです」
女であればイチコロの色気も同性のそれもまだ幼い弟子には効果を発揮しないようである。
「…だが…」
あしらわれるクロスであったが、そんなことではめげることもなく更に言葉を続けるために口を開く。
「…ボクだってクロスと一緒に居たい気持ちはあります。けれど、ボクも貴方もエクソシストなんです」
しかし、続く言葉を遮ってライフォードは真摯な眼差しをクロスへと向ける。
「解ってる。だが、そんなに急ぐこともないだろう?お前はまだ十(とお)にもならないガキだ」
その真っ直ぐ過ぎる視線にクロスは、目を合わせ続けることができずその頭に顔を埋めた。
「適合者は例え赤ん坊であろうとも教団へと連れて行かれるのが決まりだと。クロスがボクに始めに言ったことじゃないですか…」
「…そんなもん忘れちまったな」
「…まったく…」
まるで駄々っ子のような返事をするクロスにライフォードは小さく溜め息を溢す。
「…どうしても行くのか?」
「はい。ボクにはボクの、クロスにはクロスの役目があるんです」
「…チッ」
ライフォードの言葉に何を言っても引き留めることが叶わないことを悟ったクロスは盛大な舌打ちを鳴らした。
「明日、黒の教団へと向かいます」
「…気を付けろよ?」
「はい。クロスも体に気を付けてくださいね、お酒と女の人は程々にですよ?」
「さぁな」
意趣返しのように惚けて見せるクロスの口元には不敵な笑みが浮かんでいる。
「クロス!」
「フッ…守るかはわからんが覚えておいてやるよ」
クロスは、どこか柔らかな雰囲気を醸し出しながら優しくライフォードの頭を撫でる。
「まったく、貴方という人は…」
「いいか?教団の中でも気を抜くな…信じていいのはエクソシストと自分の目だけだ」
緩んだ空気を引き締めるかのように真剣な声音で告げられる言葉。
「わかっています」
その言葉にライフォードも真摯に頷く。
「…ハァ…寂しくなるな」
「そう言っていただけて光栄ですよ」
「本当に可愛げなくなったなお前…」
「師匠の教育の賜物ですよ」
呆れたようなクロスのの言葉にライフォードは、ニヤリと不敵に笑みを浮かべるとカラカラと笑って見せた。
「ククッ、この減らず口が」
「ハハハッ…クロス。半年間ありがとうございました」
ライフォードは、この半年間の出来事を思い返しながら満足気に笑う。
「ああ…ライ」
クロスも同様の笑みを浮かべながらその言葉を受け止める。
そして、真剣な眼差しを己の手から離れていく弟子へと向けた。
「はい?」
「これだけは覚えておけ。俺はあそこが嫌いだがお前にならいつでも会いに行ってやる…いつでも俺を呼べ」
クロスはいつになく真剣な面持ちでライフォードへと言い聞かせるかのように言葉を紡ぐ。
「クスッ…はい。頼りにしています」
ライフォードは、クロスの言葉に素直に礼を述べ、その顔に朗らかな笑みを浮かべた。
翌日。
ライフォードはクロスからお手製のゴーレムを受け取り、黒の教団へと向かった。
「…(確かに嫌な視線ですね…クロスが嫌うのも解る気がします)」
ライフォードは、自身に向けられる無遠慮な視線に内心でそう呟いた。
エクソシストを人とは思っていない人間の目。
エクソシストはAKUMAに対抗するための武器と考えていることが透けて見えるようであった。
「(己の目を信じよ…確かにこんなところでは油断が命取りになりかねませんね)」
自室へと案内されたライフォードは、そんなことを内心で溢しながらベッドへと身を預けた。
ライフォードの入団に黒の教団の幹部たちは喜びの声を上げた。まだ、年端も行かぬ子供ながらシンクロ率も89%と高く、何より自ら戦う意思もある。
体のいい駒が手に入ったと…。
───
──
─
正式な入団から更に時間は過ぎ、ライフォードは過酷な任務をこなす日々を送っていた。
「ッ…はぁ、無茶をさせるものです」
ライフォードは、自身の腕に巻かれている血の滲む包帯を見つめ溜め息混じりにそんなことを呟く。
その怪我はつい先日、AKUMAの殲滅作戦を一人でこなした際のものである。
「…この傷が塞がるまではそこまで無理はできませんね…」
ライフォードは、疲れを感じさせる溜め息と共にそんなことを呟くと俯かせていた顔を上げ、とある場所へと足を向けた。
【コンコンコンッ…】
ライフォードは、一つの部屋を訪れると優しく扉をノックする。
「!ライお兄ちゃんッ!!」
ノック音を聞き付けて中から勢い良く飛び出してきた一つの影。
それは黒い艶やかな髪をツインテールにした幼い少女であった。
彼女はリナリー・リー。
ライフォードが、この教団に来て暫く経った頃、このリナリーがエクソシストに連れられてやって来た。
イノセンスに適合したというだけで唯一の肉親から引き離され泣いていたリナリーにライフォードが優しく話しかけたのが出会いであった。
「リナリー、ただいま帰りました」
「お帰りなさい!!」
「リナリー、少し苦しいですよ」
ライフォードは、力の限りぎゅうぎゅうと抱きついてくるリナリーに苦笑を浮かべながらそう声をかける。
「あっ!ご、ごめんなさい!!…」
「いいえ、大丈夫です。それより、すみませんでした。三日もリナリーを一人にしてしまって…」
「…寂しかった…」
今度はゆっくりとライフォードの体に縋り付くようにリナリーが抱きついてくる。
余程一人の時間が辛かったようだ。
「すみません。さ、今日はもう任務もありませんから沢山お話しましょう?」
「うんっ!!」
教団で過ごすようになってライフォードの顔から徐々に笑みが消えていった。
過酷な任務の連続、周囲の視線に、味方のいない環境がライフォードを徐々に変えていったのだ。
そんなライフォードが初めから笑顔で接していた少女がリナリーである。
表情が薄れて行くライフォードを知っていた周囲は少なからず驚いたことだろう。
そんな経緯からリナリーは、殊更ライフォードに懐き、その心を開いている。
勿論、ライフォード自身も時間があれば足繁くリナリーの元を訪れていた。
リナリーが少しでも孤独を感じずに済むようにと。
過酷で劣悪な環境に指標を見失いかけていたライフォードにリナリーの存在は正に道標となった。護るべきものの存在は、ライフォードの心の拠り所となり、そんなライフォードの存在が幼い少女の心を確かに救ったのである。
そうしてすり減っていた心にわずかな余裕が出来ることで周りにも目を向ける事が出来るようになったライフォードは、教団という四面楚歌な環境にも自身を案じる存在がいることを認識する。
それは、今まで無心でこなして来た任務の中で守り、救ったファインダー達である。
イノセンスに選ばれなかった彼らはそれでも身命を賭してエクソシストをサポートする職務をこなしている。
そんな彼らとも徐々に交流を重ね、彼らの為人(ひととなり)を知っていけば故郷の人々が思い起こされた。
ライフォードは、リナリーやファインダーの存在に故郷の人々への思いを重ね、護るべきものとして更なる茨の道を歩むこととも辞さない覚悟であった。
1/1ページ