主人公の名前を決めてください
序章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あの後、ライフォードはクロスからより詳しい情報を教えられた。
エクソシストとは何なのか、イノセンスとは何なのか。
勿論、クロスの所属する黒の教団についても詳しい説明がなされた。
クロスにエクソシストになるように言われたライフォードは急ぎ領地の引き継ぎ作業へと取りかかった。
まずは、ロランス家の当主の座を叔父へと引き継ぐための準備からだ。
「ライ、本当に行ってしまうのかい?」
精悍な紳士然とした男性は、眦を下げ悲しげな表情で自身の甥へと視線を向ける。
「はい。僕はエクソシストになります。それに、叔父上にならばこの町を安心して任せることができますから」
「お前にそう言ってもらえるとは嬉しいね…」
その決意に満ちた表情に男性は、反対することもできずに人知れず拳を握った。
幼い甥を戦場へと見送らなければいけない心情は計り知れない。
「…では、引き継ぎの作業も粗方終わりましたので少し出掛けてきます」
「ああ、気を付けるんだよ」
叔父の見送りを受け、ライフォードは屋敷を後にする。
向かう先は、屋敷の裏手に位置する森である。
陰鬱とした雰囲気を醸し出す薄暗い森を目の前にライフォードはとある言葉を思い返していた。
『いいか?お前がもし、この町を離れるようなことがあれば森の遺跡に行くんだよ』
「(…父さん。貴方にはこうなることがわかっていたんですか?)」
脳裏を過る父の姿に永久に明かされない疑問を心の中で溢す。
「…光の王の遺跡」
ライフォードは、目の前に聳え立つ古代の遺跡にポツリと吐息を漏らす。
一つ深呼吸をすると意を決して遺跡の中へと歩を進めた。
静寂の中、ライフォードの足音だけが遺跡内に木霊する。遺跡の中はまるで迷路のように入り組んでおり、おいそれと最深部へは到達できないような造りとなっている。
しかし、ライフォードはまるで何かに導かれるかの如く迷いなく歩みを進めて行く。
そして、たどり着いたのは遺跡の最深部となる一室。
そこは、外からの光など入ってこないはずの場所にも関わらず、部屋の中心に位置する台座はまるでスポットライトを当てられたかのように照らされていた。
その台座には白と黒の玉が嵌め込まれた石板が置かれていた。
「“我が名の元に…我が力の元に…この地で眠りしモノたちよ。我が呼び掛けに応えよ”」
ライフォードは、台座の上に安置されていた石板に触れ、彫られている言葉を読み上げる。
次の瞬間、目も眩むようなまばゆい光が瞬き台座も石板も消え失せ、代わりというかのように二人の青年が姿を表した。
その見た目は青年の形を象る二人は、淡い輝きをその身に纏い、全身から放たれるオーラはけっして人のモノではなかった。
『『我らが主。幾千年の間、貴方様のお越しをお待ちしておりました』』
二人は、そう言葉を紡ぐと恭しく頭を垂れ、ライフォードの前に跪いた。
一人は、黒髪にエメラルドの瞳、黒い軍服のような装いの胸元には逆さ十字の黒曜石が煌めいている。
一人は、白髪にピジョン・ブラッドの瞳、白い軍服のような装いの胸元には十字のムーンストーンが煌めいている。
「…」
ライフォードは、突然の出来事に自身に向かって跪く二人を前に言葉を失う。
父には外界(そと)で力を使ってはならない。その為、外で戦うために必要な力を遺跡に行けば与えられると言われていた。
しかし、この二人は自分を待っていたと言った。
それは、主となる者の来訪を待ちわびていたと言う意味か、それとも別の意味でなのか。
ライフォードには、判断がつかない。
しかし、今この場で行うことは変わらない。
ここには力を求めてやって来たのだから…。
「…僕はここに力を求めてきた」
『『存じております』』
『我らがその力でございます』
『貴方様の盾となり、刃となり力となりましょう』
『『存分に我らをお使いください』』
二人は、一度顔を上げライフォードの目を真っ直ぐに見つめ、力強くそう言葉を紡ぐと再び恭しく頭を垂れた。
「…僕とッ…僕と共に来いッ!!」
ライフォードは、二人の言葉に一度ぐっと唇を引き結び、声高らかにそう言い放つ。
その瞳には新たな決意と覚悟が浮かんでいた。
『『ハッ!御心のままに』』
ライフォードの言葉に二人の青年はそう応えるとその姿は一瞬にして装飾具へと変化した。
「これはピアス?」
そこにはムーンストーンの十字のピアスと黒曜石の逆さ十字のピアスがふわふわと不思議なオーラを放ちながら存在していた。
その二つのピアスはゆっくりとライフォードへと近づきその耳に収まった。
「痛くない…?」
かなりの痛みを覚悟していたライフォードであったが思っていた痛みなど訪れることなくその両耳に存在するピアスに呆然と呟いた。
『『主。我らに真名を…』』
「“シフォン”…“ゲイル”…」
ライフォードは、十字のピアスに触れながら【シフォン】と逆さ十字のピアスを触れながら【ゲイル】と名付けた。
『『我らのすべてをもって貴方様をお護り致します』』
まるで囁くような優しい声がピアスを通して伝わる。
その囁きにライフォードは、両耳のピアスに触れながら柔らかな笑みを浮かべた。
───
──
─
屋敷に戻ると玄関口で一服していたクロスと鉢合わせた。
「?…どうかしましたか?」
ライフォードは、自身の顔をじっと見つめるクロスに首を傾げながら問いかける。
「いや、何があった?」
「え?」
「顔つきが変わったな…ん?そのピアス…」
「はい。イノセンスです」
クロスの唐突な言葉に呆気にとられながらも両耳のピアスについて答える。
「!…そうか」
クロスは、ライフォードの返答に一瞬だけ驚いたように目を見開いたが直ぐになにか考え込むような表情で重苦しくそう返す。
「…非常事態の時以外は僕のこの力を使うわけに行きませんから…」
「だが、どこでイノセンスを?」
クロスは、訝しげに眉根を寄せると鋭い視線をライフォードへと向ける。
「父が生前に町を離れることがあれば森の遺跡に行くようにと…力を与えてくれるだろうと」
「なるほどな…(しかし、イノセンスがこいつに適合するかどうかを知っていたのか?…いや、イノセンスに選ばれることに法則などない。予測は不可能だ…でばら何故そんな言葉を?)」
ライフォードの言葉にクロスはさらに疑問の渦へと没入していく。
イノセンスにはまだまだ解明されていないなぞが多く存在している。
イノセンスを発動するために必要な人間との適合条件もその謎の一つである。
「?…」
「…(まぁ、何にせよ切り札は最後まで取っておくべきだよな)」
いくら考えても答えの見つからない疑問にとりあえずの終止符を打ち、なんとか思考を切り替える。
「あの…」
「おい」
ライフォードの言葉を遮り、クロスは口を開く。
「はい!」
ライフォードは、緊張した面持ちで僅かに背筋を伸ばした。
「イノセンスの発動はできるのか?」
「はい。大丈夫です」
「コントロールは?」
「問題なく」
クロスの言葉に淡々とけれど淀みなく答えるライフォード。
「ほう…(先程適合したにも関わらず発動もコントロールも問題ないと…随分と自信があるようだな)」
ライフォードの返答に僅かに関心した様子のクロスは、その口元に愉しげな笑みを浮かべていた。
「後は慣れだと思います」
「なるほど」
「…あの」
「明後日には出発だ。準備を怠るな…」
再びライフォードの言葉を遮るように口を開くクロス。
その視線は鋭くライフォードを見据えていた。
「はいッ!」
「さてと…」
クロスは、やることはやったと言わんばかりにポツリとそう溢したかと思うと煙草の火を踏み消して町の方へと向かって歩き出す。
「…またお酒か…」
ライフォードは、そんなクロスの背を見つめ苦笑を溢すのであった。
───
──
─
そして、日はあっという間に過ぎ、旅立の日。
「ライさまー!お元気でー!!」
「いつでも戻って来てくださいねーっ!!」
「待ってますからーっ!!」
ライフォードとクロスは、町の全住民たちから見送られながら町を後にした。
ライフォード・ロランス。年齢7歳。
エクソシストになることを決意した少年は生まれ故郷に別れを告げて旅立った。