世界は2人のもの
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「ジャミル先輩ジャミル先輩」
次の授業で教室に移動する為1人廊下を歩いていると後ろから声がする、その声に呼び止められ聞き覚えのある声に、またか…と思いつつ立ち止まり、振り向くとそこにはいつも厄介事を持ち込んでくる後輩が笑顔で立っていた。
「ってなーんで無視するんですか!」
「お前に関わるとろくな事にならない」
やっぱりユウだったか、と思い無視して歩きだそうとするとこいつは俺の前まで回り込んでくるので仕方なく足を止めてやる。
「酷いなぁ、私はジャミル先輩を勇気付けようと思っただけなのに」
「…はぁ…分かっているのか?俺と居るとお前まであぁ言う目で見られるだぞ」
お前達のことだ、と言わんばかりに自分の近くでこちらをチラチラと見ながら俺の話をしていたであろう生徒を睨みつける。
その生徒達は俺に睨まれるとどこかへと走り去って行った。
それくらいで逃げるなら最初からするな。
「?別にいいですよ、それくらいの事でジャミル先輩とお話出来なくなる方が私は嫌です」
「ッ…お前は本当に変な奴だな」
サラッと恥ずかしいことを言ういつもこの調子な後輩にカリムとは違った疲れを感じる。
だが心のどこかではこの脳天気な後輩に普通に接して貰っているという事実に安心している、のかもしれない、認めたくないが。
「所で何の用だ、くだらない用事なら聞かないからな」
「あ、そうでしたそうでした、ヘーイそこの彼!私とデートしない?」
ウィンクをしながらこちらへ手を差し伸べる後輩に呆れる、やはりろくな事では無かった。
「じゃあな」
「だーから待ってくださいよー!!」
俺はポーズを決めているユウの横をスタスタと早歩きで通り過ぎようとしたが手を掴まれ引き止められる。
すれ違うヤツらが変なものを見るかのようにこいつを見ている事に耐えきれず、思い切り眉を寄せ不機嫌そうな顔を見せるがそれでもニコニコと笑っているユウに、これは1度聞くまで付き纏われるやつだな、と諦め再び歩みを止めて聞いてやる事にした。
「もう一度だけチャンスをやる、きちんと内容を話せ」
「カリム先輩から魔法の絨毯借りたので一緒にドライブに行きません?」
こいつの口から出た人物の名前と物に思わず驚いてしまう。
「はぁ!?あいつはまた…!あれ程絨毯は勝手に使うなと言っていたのに、持ち出す所か勝手に他人に貸すなんて何考えているんだ!?」
頭を抱え考えているとまぁまぁ、と呑気に窘める声が聞こえる。
こいつには価値が分からないだろうから怒ってもしょうがない、とりあえずまだ混乱する頭で話の続きを聞く。
「カリム先輩にジャミル先輩を元気付けたいって言ったら潔く貸してくれました」
「あいつのお人好し具合には本当に頭痛がするよ…それに俺は別に元気が無いわけじゃ」
「嘘です」
先程まで笑っていたこいつが真剣な目をして俺を見る、いつも笑顔しか見せた事のないその真剣な表情に思わず心を見透かされた様な感覚がする。
「最近のジャミル先輩は楽しくなさそうです、バスケをしていても、大好きなダンスをしていても、成績とは裏腹にどんどんジャミル先輩の楽しそうな表情が減って行きます」
バレてない、と思っていた。特にこいつには。
「私は猫を被って居たって、その中で素が出ていた楽しそうにしているジャミル先輩が好きでした、だから今のジャミル先輩はとても見て居られません」
俺の何がわかる、そう思ったが悲しそうな顔をしているこいつに何も言えなくなった。
「だからカリム先輩にお願いしたんです。あの絨毯凄い物なんですよね?私、ジャミル先輩が一緒にドライブデートしてくれるまであの絨毯返しません」
「は?」
何を言ってるんだ、価値を分かっているなら何を馬鹿なことを…そう考える前にユウは「だって…」と言葉を呟き、次の瞬間目の前にはまるで意思を持っているかのように動く魔法の絨毯が現れた。
「この絨毯私から離れないんですもん!」
絨毯がユウの周りをクルクルと嬉しそうに飛び回っている。
「…完全に懐かれたな」
「いやいやこれはきっとジャミル先輩とドライブデートしないと許さないって言ってるんです!だから!」
絨毯が房ユウをの頬を擽るように撫でて遊んでいる、まるで俺にユウと一緒に来なければ一生この子と一緒に居るぞ、というように。
「分かった、分かった、行ってやるよ、だが、次の授業もあるから少しだけだ、うわっ!?」
言い切るのを待たず、顔を上げると目の前に居た筈の彼女と絨毯が居なくなっており突然後ろから足に突進され後ろに倒れそうになり思わず目を瞑るが、次に手に伝わった感触は柔らかい物だった。
その感触を感じ、目を開けた時にはもう地面からは足が離れ、顔を上げると視界は空でいっぱいだった。
「わー!!!すごいすごい、ジェットコースターみたい!」
「おい絨毯!無理やり乗せるやつがあるか!」
俺達を乗せて凄いスピードで上昇しながら前へ進む絨毯に思わず怒るが、隣で喜んでいるこいつを見てまぁ良いかと思ってしまう自分が居た。
振り落とされないように安定した体制を取るために座りなおすと俺は質問をなげかけた。
「所でどこへ行くつもりだ?」
「ふふ、それは着いてからのお楽しみです!」
猛スピードで駆け抜けている為、隣にいるこいつに聞こえるように大声で話しかける。
久しぶりに出した大声は少しだけ気持ちが良かった。
どこへ向かっているかも分からない俺はやることも無く、視線を絨毯へと落とし、今までに起きた出来事を思い返す。
思えばこうして考えるのは初めてかもしれない、暫く物思いに耽っているとゆっくり絨毯が減速する。
「ジャミル先輩、着きました。見て下さい」
やっとか、と思い隣の声を合図に目線を前へ向ける、そこには──
そこには世界が広がっていた。
人魚が泳いでいる綺麗な青い海、青々とした木々が生い茂る森、色鮮やかな花が咲き乱れる花畑には妖精が飛び回っている、大きな城と街並みが綺麗な国には人が沢山溢れている、標高の高い山がいくつあり、雪が降っていたり、鳥が飛んでいたり、魔道力で動いている機械が飛んでいたり。
彼女が連れてきた場所は様々な国や場所が見える途方も無く高い、絨毯でなければ絶対に来れないであろうこの世界の全てが見えるのではないかと思える程の場所であった。
まさに目の前に広がる"世界"に俺は思わず息を飲む。
「すごい、な…」
「ですよね、凄いですよね!最初、絨毯に世界が見える場所に行きたいって言った時そんな場所ある訳ないかと思ってたんですけど、ここに連れて来られた時私もびっくりしちゃいました!」
どこを見ても1面広がるこの光景に、今まで過ごして来た時間を忘れて見入ってしまう。
「ねぇ、先輩」
暫く眺めていると隣から声が聞こえ、そちらに目をやるといつの間に立ち上がって居たのであろうか、ユウが俺を見ていた。
「悩んでる時って自分の世界ってなんてちっぽけなんだって思いますよね、でも、元気出してください、だって、だって世界はこんなにも広いんですから!」
そう言い残すとユウは両腕を広げて笑顔を浮かべ絨毯から落ちていった。
「!!!ッ、ユウ!!!!!」
いくら下が海とは言え、落ちたらタダじゃ済ま無い、突然の行動に絨毯に乗っている事も忘れ、思わず手を伸ばしユウの手を掴もうとするが、届かない。
覚悟を決める間もなく俺は絨毯から飛び降り、そのまま彼女と一生に真っ逆さまに落ちて行く。
空中に投げ出された俺は必死にユウの手を掴もうと腕を伸ばす、真っ逆さまに落ちていくこいつはそれに気付くとこちらに腕を伸ばしてくる、俺はその手を掴み、落ち行くユウの手を引き、彼女の頭の後ろに手を置き、腰を引き寄せ力強く抱きしめた。
良かった、間に合った、そう考えたが口から出た言葉は違うものだった。
「おま、お前はアホか!?馬鹿か!?前から馬鹿だアホだと思っていたがここまで馬鹿だとは思わなかったぞ!?おい、聞いているのか!!!!」
叫ぶ様にユウを怒鳴るが、彼女はそんなの気にしていないかの様に大声で笑っている。
「あはは!今のジャミル先輩凄くいい顔してますよ!鏡で見せてあげたいくらい!」
「何呑気なこと言ってるんだ!!!」
「ねぇ、先輩!空だってこんなに青い!見てください、素敵な世界ですね!」
共に落ちるユウの言葉に不意に上を向く、そこには太陽が輝き雲が流れる、青い空が拡がっていた。
頭上に広がる広大な青空は俺達2人を包み込むかのように拡がっており一瞬だけ目を奪われた、空をこんな気持ちで見るのはいつぶりだろうか、そう呑気に考えてしまう程、空はとても綺麗だった。
「ねぇ、先輩!私、先輩の事大好きです!猫を被っていた、本当はとっても優秀で、内心私のことめちゃくちゃ馬鹿にしていた先輩の事が大好きです!」
彼女が大声で叫ぶ、空から目線を彼女に落とすと、彼女は泣きながらそれはそれは綺麗な涙を流していた。
重力に逆らいユウの涙が俺の頬へと降り注ぐ。
落ちているという事を忘れるくらい、2人だけの時間が流れていた。
俺はユウの気持ちにも、自分の気持ちはとうの昔に気付いていた。
しかし立場の事で気付かないフリをしていた。
でも、それも今日でお終いだ。
俺の為にここまでしてくれた彼女、俺を、ジャミル・バイパーという1人の人間をここまで愛し、思い焦がれる彼女。
出す答えは勿論ひとつ。
「あぁ!俺も、俺に懐いてる癖に面倒事ばっかり持ってくるのに、目が離せなくて俺にいっつも心配ばっかりかけさせるお前のことが世界で1番好きだ!!!」
こんな大声告白してるのなんて世界で俺達だけだろう、俺は今までの気持ちを吐き出すよう、ユウに思いをぶつける様に叫んだ。
「わーい!ジャミル先輩と両思いー!うれしー!」
一世一代の告白にいつものように呑気な言葉と共に笑う彼女にこんな状況なのに、という感情は湧かなかった。
俺も相当舞い上がっているのだろう、涙は止まり心から喜びの表情を浮かべているユウの唇に思いっきり口付けしてやった。
「へっ?」
突然の出来事に顔を赤くしハトが豆鉄砲くらったような表情で固まるユウ。
してやったり、だ。
「いつもやられっぱなしだったからな、でも覚悟しろよ、もう我慢はしないと決めたんだ、容赦してやらないからな!!」
そう答える俺はきっと彼女が望んでいた以上の最高の笑顔をしていただろう。
〜fin〜
え?その後?
あぁ、もちろん無事だった。
俺たちのやりとりを一通り見ていた絨毯が良いタイミングで現れ助けて行ったよ。
そのまま学園に戻ったら、次の授業はとっくに始まっていて教室に入ると2人揃って仲良く怒られてしまってな。
でもユウがずっと笑っているものだから俺もつい釣られて笑ってしまい、それを見た先生が何を思ったのか良かったなと言いそれ以降お咎め無しだった。
放課後、絨毯が戻ってきたカリムが俺達におめでとう!幸せになるんだぞ!今夜は宴だ!と騒いでいた。
全く…言われなくても勿論、幸せになるさ。
次の授業で教室に移動する為1人廊下を歩いていると後ろから声がする、その声に呼び止められ聞き覚えのある声に、またか…と思いつつ立ち止まり、振り向くとそこにはいつも厄介事を持ち込んでくる後輩が笑顔で立っていた。
「ってなーんで無視するんですか!」
「お前に関わるとろくな事にならない」
やっぱりユウだったか、と思い無視して歩きだそうとするとこいつは俺の前まで回り込んでくるので仕方なく足を止めてやる。
「酷いなぁ、私はジャミル先輩を勇気付けようと思っただけなのに」
「…はぁ…分かっているのか?俺と居るとお前まであぁ言う目で見られるだぞ」
お前達のことだ、と言わんばかりに自分の近くでこちらをチラチラと見ながら俺の話をしていたであろう生徒を睨みつける。
その生徒達は俺に睨まれるとどこかへと走り去って行った。
それくらいで逃げるなら最初からするな。
「?別にいいですよ、それくらいの事でジャミル先輩とお話出来なくなる方が私は嫌です」
「ッ…お前は本当に変な奴だな」
サラッと恥ずかしいことを言ういつもこの調子な後輩にカリムとは違った疲れを感じる。
だが心のどこかではこの脳天気な後輩に普通に接して貰っているという事実に安心している、のかもしれない、認めたくないが。
「所で何の用だ、くだらない用事なら聞かないからな」
「あ、そうでしたそうでした、ヘーイそこの彼!私とデートしない?」
ウィンクをしながらこちらへ手を差し伸べる後輩に呆れる、やはりろくな事では無かった。
「じゃあな」
「だーから待ってくださいよー!!」
俺はポーズを決めているユウの横をスタスタと早歩きで通り過ぎようとしたが手を掴まれ引き止められる。
すれ違うヤツらが変なものを見るかのようにこいつを見ている事に耐えきれず、思い切り眉を寄せ不機嫌そうな顔を見せるがそれでもニコニコと笑っているユウに、これは1度聞くまで付き纏われるやつだな、と諦め再び歩みを止めて聞いてやる事にした。
「もう一度だけチャンスをやる、きちんと内容を話せ」
「カリム先輩から魔法の絨毯借りたので一緒にドライブに行きません?」
こいつの口から出た人物の名前と物に思わず驚いてしまう。
「はぁ!?あいつはまた…!あれ程絨毯は勝手に使うなと言っていたのに、持ち出す所か勝手に他人に貸すなんて何考えているんだ!?」
頭を抱え考えているとまぁまぁ、と呑気に窘める声が聞こえる。
こいつには価値が分からないだろうから怒ってもしょうがない、とりあえずまだ混乱する頭で話の続きを聞く。
「カリム先輩にジャミル先輩を元気付けたいって言ったら潔く貸してくれました」
「あいつのお人好し具合には本当に頭痛がするよ…それに俺は別に元気が無いわけじゃ」
「嘘です」
先程まで笑っていたこいつが真剣な目をして俺を見る、いつも笑顔しか見せた事のないその真剣な表情に思わず心を見透かされた様な感覚がする。
「最近のジャミル先輩は楽しくなさそうです、バスケをしていても、大好きなダンスをしていても、成績とは裏腹にどんどんジャミル先輩の楽しそうな表情が減って行きます」
バレてない、と思っていた。特にこいつには。
「私は猫を被って居たって、その中で素が出ていた楽しそうにしているジャミル先輩が好きでした、だから今のジャミル先輩はとても見て居られません」
俺の何がわかる、そう思ったが悲しそうな顔をしているこいつに何も言えなくなった。
「だからカリム先輩にお願いしたんです。あの絨毯凄い物なんですよね?私、ジャミル先輩が一緒にドライブデートしてくれるまであの絨毯返しません」
「は?」
何を言ってるんだ、価値を分かっているなら何を馬鹿なことを…そう考える前にユウは「だって…」と言葉を呟き、次の瞬間目の前にはまるで意思を持っているかのように動く魔法の絨毯が現れた。
「この絨毯私から離れないんですもん!」
絨毯がユウの周りをクルクルと嬉しそうに飛び回っている。
「…完全に懐かれたな」
「いやいやこれはきっとジャミル先輩とドライブデートしないと許さないって言ってるんです!だから!」
絨毯が房ユウをの頬を擽るように撫でて遊んでいる、まるで俺にユウと一緒に来なければ一生この子と一緒に居るぞ、というように。
「分かった、分かった、行ってやるよ、だが、次の授業もあるから少しだけだ、うわっ!?」
言い切るのを待たず、顔を上げると目の前に居た筈の彼女と絨毯が居なくなっており突然後ろから足に突進され後ろに倒れそうになり思わず目を瞑るが、次に手に伝わった感触は柔らかい物だった。
その感触を感じ、目を開けた時にはもう地面からは足が離れ、顔を上げると視界は空でいっぱいだった。
「わー!!!すごいすごい、ジェットコースターみたい!」
「おい絨毯!無理やり乗せるやつがあるか!」
俺達を乗せて凄いスピードで上昇しながら前へ進む絨毯に思わず怒るが、隣で喜んでいるこいつを見てまぁ良いかと思ってしまう自分が居た。
振り落とされないように安定した体制を取るために座りなおすと俺は質問をなげかけた。
「所でどこへ行くつもりだ?」
「ふふ、それは着いてからのお楽しみです!」
猛スピードで駆け抜けている為、隣にいるこいつに聞こえるように大声で話しかける。
久しぶりに出した大声は少しだけ気持ちが良かった。
どこへ向かっているかも分からない俺はやることも無く、視線を絨毯へと落とし、今までに起きた出来事を思い返す。
思えばこうして考えるのは初めてかもしれない、暫く物思いに耽っているとゆっくり絨毯が減速する。
「ジャミル先輩、着きました。見て下さい」
やっとか、と思い隣の声を合図に目線を前へ向ける、そこには──
そこには世界が広がっていた。
人魚が泳いでいる綺麗な青い海、青々とした木々が生い茂る森、色鮮やかな花が咲き乱れる花畑には妖精が飛び回っている、大きな城と街並みが綺麗な国には人が沢山溢れている、標高の高い山がいくつあり、雪が降っていたり、鳥が飛んでいたり、魔道力で動いている機械が飛んでいたり。
彼女が連れてきた場所は様々な国や場所が見える途方も無く高い、絨毯でなければ絶対に来れないであろうこの世界の全てが見えるのではないかと思える程の場所であった。
まさに目の前に広がる"世界"に俺は思わず息を飲む。
「すごい、な…」
「ですよね、凄いですよね!最初、絨毯に世界が見える場所に行きたいって言った時そんな場所ある訳ないかと思ってたんですけど、ここに連れて来られた時私もびっくりしちゃいました!」
どこを見ても1面広がるこの光景に、今まで過ごして来た時間を忘れて見入ってしまう。
「ねぇ、先輩」
暫く眺めていると隣から声が聞こえ、そちらに目をやるといつの間に立ち上がって居たのであろうか、ユウが俺を見ていた。
「悩んでる時って自分の世界ってなんてちっぽけなんだって思いますよね、でも、元気出してください、だって、だって世界はこんなにも広いんですから!」
そう言い残すとユウは両腕を広げて笑顔を浮かべ絨毯から落ちていった。
「!!!ッ、ユウ!!!!!」
いくら下が海とは言え、落ちたらタダじゃ済ま無い、突然の行動に絨毯に乗っている事も忘れ、思わず手を伸ばしユウの手を掴もうとするが、届かない。
覚悟を決める間もなく俺は絨毯から飛び降り、そのまま彼女と一生に真っ逆さまに落ちて行く。
空中に投げ出された俺は必死にユウの手を掴もうと腕を伸ばす、真っ逆さまに落ちていくこいつはそれに気付くとこちらに腕を伸ばしてくる、俺はその手を掴み、落ち行くユウの手を引き、彼女の頭の後ろに手を置き、腰を引き寄せ力強く抱きしめた。
良かった、間に合った、そう考えたが口から出た言葉は違うものだった。
「おま、お前はアホか!?馬鹿か!?前から馬鹿だアホだと思っていたがここまで馬鹿だとは思わなかったぞ!?おい、聞いているのか!!!!」
叫ぶ様にユウを怒鳴るが、彼女はそんなの気にしていないかの様に大声で笑っている。
「あはは!今のジャミル先輩凄くいい顔してますよ!鏡で見せてあげたいくらい!」
「何呑気なこと言ってるんだ!!!」
「ねぇ、先輩!空だってこんなに青い!見てください、素敵な世界ですね!」
共に落ちるユウの言葉に不意に上を向く、そこには太陽が輝き雲が流れる、青い空が拡がっていた。
頭上に広がる広大な青空は俺達2人を包み込むかのように拡がっており一瞬だけ目を奪われた、空をこんな気持ちで見るのはいつぶりだろうか、そう呑気に考えてしまう程、空はとても綺麗だった。
「ねぇ、先輩!私、先輩の事大好きです!猫を被っていた、本当はとっても優秀で、内心私のことめちゃくちゃ馬鹿にしていた先輩の事が大好きです!」
彼女が大声で叫ぶ、空から目線を彼女に落とすと、彼女は泣きながらそれはそれは綺麗な涙を流していた。
重力に逆らいユウの涙が俺の頬へと降り注ぐ。
落ちているという事を忘れるくらい、2人だけの時間が流れていた。
俺はユウの気持ちにも、自分の気持ちはとうの昔に気付いていた。
しかし立場の事で気付かないフリをしていた。
でも、それも今日でお終いだ。
俺の為にここまでしてくれた彼女、俺を、ジャミル・バイパーという1人の人間をここまで愛し、思い焦がれる彼女。
出す答えは勿論ひとつ。
「あぁ!俺も、俺に懐いてる癖に面倒事ばっかり持ってくるのに、目が離せなくて俺にいっつも心配ばっかりかけさせるお前のことが世界で1番好きだ!!!」
こんな大声告白してるのなんて世界で俺達だけだろう、俺は今までの気持ちを吐き出すよう、ユウに思いをぶつける様に叫んだ。
「わーい!ジャミル先輩と両思いー!うれしー!」
一世一代の告白にいつものように呑気な言葉と共に笑う彼女にこんな状況なのに、という感情は湧かなかった。
俺も相当舞い上がっているのだろう、涙は止まり心から喜びの表情を浮かべているユウの唇に思いっきり口付けしてやった。
「へっ?」
突然の出来事に顔を赤くしハトが豆鉄砲くらったような表情で固まるユウ。
してやったり、だ。
「いつもやられっぱなしだったからな、でも覚悟しろよ、もう我慢はしないと決めたんだ、容赦してやらないからな!!」
そう答える俺はきっと彼女が望んでいた以上の最高の笑顔をしていただろう。
〜fin〜
え?その後?
あぁ、もちろん無事だった。
俺たちのやりとりを一通り見ていた絨毯が良いタイミングで現れ助けて行ったよ。
そのまま学園に戻ったら、次の授業はとっくに始まっていて教室に入ると2人揃って仲良く怒られてしまってな。
でもユウがずっと笑っているものだから俺もつい釣られて笑ってしまい、それを見た先生が何を思ったのか良かったなと言いそれ以降お咎め無しだった。
放課後、絨毯が戻ってきたカリムが俺達におめでとう!幸せになるんだぞ!今夜は宴だ!と騒いでいた。
全く…言われなくても勿論、幸せになるさ。
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