あなたと異星交流

 学校から二十分ほど歩くと辿り着く駅から仲間たちと電車に乗り、自宅の最寄り駅を通り過ぎてさらに二駅先のちょっとしたターミナルで下車し、駅に隣接するショッピングモールを練り歩く。これが小春の金曜日の放課後の過ごし方だった。流石この辺りではそこそこ大きい駅ということで、今まで同じ電車に乗っていた人々が半分くらいわさわさと電車から降りて行く。小春も仲間たちと塊になって扉をくぐりエスカレーターを待つ長蛇の列に体をねじ込んだ。
 県内屈指の何かとゆるゆるな高校に通う小春とイツメンのみゆ、明里、アヤちゃんは見ためこそ派手だがほぼ毎日一限から六限まで授業に参加している真面目ちゃんだ。そんなもん当り前じゃないかと思うかもしれないが、うちの高校では2年生の時点でそれを完遂できている者は半分程度である。
 そんな小春たちも、というべきかそんな小春たちらしくというべきか迷うが、毎週金曜日はこうして四人で派手に遊びまわる。駅に着くなり、何の相談もなく彼女たちは駅に隣接するモールのゲームコーナーに向かった。
 最近のプリクラ機というのは昔よりも加工の度合いが強いというのはあちらこちらで噂されているが、プリクラ機が何台もあるようなお店だと更にメイクができるドレッサーのようなものが備えられている場合も多い。小春たちも例外なく、プリクラ機に並ぶ前にドレッサーに並ぶ。順番が来ると、まるで舞台裏の楽屋のように横並びでメイクを直す。というか、学校ではできないような派手なメイクに変えるといった方が正しいかもしれない。
 メイクが終わるとやっとプリクラ機に並び、きゃいきゃい言いながら中に入ってポーズをとったりしいるうちに、四人で遊んでいる間に小春がいちばん輝ける瞬間がだんだんと近づいてくるきた。小春は胸がどきどきしているのを悟られないように、他の三人がカーテンをで終わってから小春もカーテンを出た。呼吸が浅くなり、利き腕がじんわりと温かくなってきた。
 プリクラの醍醐味と言えば、先述のバチバチの顔面加工もそうだが、それと並ぶのはらくがきというやつである。プリクラのらくがきはさっきまで撮影していた部屋とは異なる隣の部屋に移り作業する。四人のお気に入りのプリクラ機のらくがき部屋には椅子が二つしかないが、左の席にはアヤちゃんがいて右の席は空けられていた。
「小春、時間なくなっちゃうから、早く」
 明里に促され平然とした態度で右の席に座ったが、小春の心の中は熱くなっていた。
 小春に言わせればプリクラのらくがきとは奥の深いものである。自分たちの顔やしぐさのかわいさを阻害しないようにしつつ、できる限りキラキラにして、更に制限時間もある。プリクラの画像はスマホに送ることもできるので、スマホに送って家で時間をかけてらくがきすることもできるのである。しかし、この制限時間内にらくがきを完成させ、印刷させることができるとプリクラ界ではステータスとなっている部分があるのである。小春は四人でプリクラを撮るといつもらくがきの役を任され、アヤちゃんと小春で一対二程度で分担する。
 小春はそれが嬉しかった。高校生になって、派手な見た目からみゆに誘われて初めてプリクラにらくがきしたときから、小春は初めて「あそび」を褒められたと思った。
 制限時間がやってきて、印刷したもののが出てくるところに立って待つ。やがてシール状になった写真が出てきて、仲間たちがその出来に顔を綻ばせ、さっそくスマホケースに挟んだり財布にしまったりしている。それを見てたときの胸の熱さは、いつも小春を奮い立たせるのであった。
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