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犬に生まれて大学生の薬研くんに飼われたい

 洗ってもらって、足の裏まできれいなとき、ちょっとだけ薬研くんの部屋に上げてもらえます。本当はダメなのかもしれませんが、吠えなければバレません。
 一番ふわふわな犬を見てください、薬研くん。今ならすっごくいいにおいもしますよ。嗅いでいいですよ。
 足元にまとわりつくと、こら、と言われます。それでも手は撫でてくれているので、迷惑じゃないはずです。
 部屋いっぱい薬研くんの匂いがして、ここに住めたらなぁといつも思います。彼が大学を卒業したら、そうなるのかもしれません。

 犬の大きさは、ちょうど薬研くんの膝の少し下です。お布団のそばで、膝の裏をつんと押してみます。

「うわ、コロ、何すんだ!」

 かくっと支えをずらされて、薬研くんがお布団に膝をつきました。チャンスです。
 太ももに前脚を乗せて、お腹に鼻先を突っ込みます。薬研くんの優しい匂いがしました。

 薬研くんはやせ気味で、ごはんをもらっている身としては心配になります。いざとなったら、い、犬を……食べて……いいですよ……。
 勝手に想像して、くぅんと元気のない声が出てしまいました。おとなしくなった犬を不思議に思って、薬研くんがわしわし撫でてくれます。
 ああ、なでなでが上手い。ちょっと力強いのが、いい具合なのです。

 手をぺろぺろ舐めても、すっかり慣れた薬研くんは驚きませんでした。それどころか、優しく笑ってくれます。

「お前、こんなに大きくなるまで、よく野良やってられたなぁ」

 つい前のめりにお腹へ前脚を乗せると、薬研くんが「う」と鈍い声で唸りました。いけない、薬研くんは繊細なんです。大きな犬は乗せられません。

 薬研くんに飼ってもらえたんですから、しばらく野良犬だったのは運命です。
 薬研くんの隣へ足をついて、顔に擦り寄ります。「おい待て」と聞こえましたが、犬に日本語が全部伝わると思わないでほしいです。
 薬研くんのほっぺたを思いっきり舐めてもいいのは、飼い犬の特権ですね!


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