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第3話

✾ 場地圭介 ✾




 水都はいつでも俺の味方でいてくれる。あの日も俺の決意に口を出さなかった。いつもは悪態ばかり付く彼女だが、結局最後は俺の意思を尊重してくれる。誰よりも俺を分かってくれていて、誰よりも頼りになる──それが場地水都という人間だった。


「眼鏡かけとけば頭良くなるとか本気で思ってんの?」
「何言ってんだよ、みーちゃん。良くなるに決まってんじゃん」
「マイキー…お前頼むからいい加減な事言わないでくれ。あいつ馬鹿だからすぐ真に受ける」
「おい聞こえてんぞ水都!!馬鹿バカうるせぇよ!!」
「馬鹿に馬鹿と言って何が悪いんだか」
「とか言いながら付き合ってくれてるんだから、良い姉ちゃんじゃねぇか」
「さすがドラケン。よく分かってる」


 今日はマイキーたちと渋谷に来ている。留年が決まっておふくろが泣いたものだから、次は絶対大丈夫だと安心させたくて、どうすれば良いかマイキーに相談した。その結果返ってきた答えが「眼鏡かけとけば頭良くなるよ」だったものだから、とにかくそれっぽく見せたくて眼鏡を買いに渋谷まで出てきたのだ。


「中学で留年とかウケる〜。みーちゃんは優秀なのになんでお前馬鹿なの?脳みそ全部持ってかれた?」
「うるっせぇわマイキー!!いい加減聞き飽きたわその台詞!!」


 水都が優秀なのは俺が一番よく知ってる。そしてそれは決して才能だけじゃなくて、彼女の人並み外れた努力の賜物であることもよく知ってる。俺たちが遊び疲れて寝てる時間でも、あいつの部屋にはいつも灯りがついている。時々疲れて屋上で居眠りしてるアイツの姿は、きっと俺しか知らないはず。母ちゃんですら、知らないはず。


「少しは私を見習えよ圭介ぇ。場地が馬鹿に変わらねぇようにな!…あ、もう手遅れか」
「ぎゃはははっ!!今の良いな水都!馬鹿圭介は傑作だぜ!!」
「うるせぇぞゴリラ!!ドラケンも笑ってんじゃねぇ!!」


 ああ、やっぱり仲間とこうやって馬鹿言ってる時間が一番楽しい。あんな事件を起こしちまってどうなることかと思ったが、相変わらず馬鹿言い合えてる今が楽しくて仕方ない。
 きっとこれも水都のおかげだ。一緒になってマイキーに訴え続けてくれた姉のおかげだ。罪は必ず償うから許してくれ、そう言って一緒に頭を下げてくれた彼女のおかげだ。




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