第2話
❀ 場地水都 ❀
悪夢は突然やってきた。ずっと皆で馬鹿をやる楽しい日々が続くと思っていたのに、まさかこんなにも簡単に壊れてしまうなんて──。
「一虎」
強固なガラスの向こうで俯いている少年の名前を呼ぶ。最早何を言っても彼には届かないだろうが、これを最後にしばらく会えないのだから言いたいことは全部伝えたい。
「お前は馬鹿だよ、大馬鹿だ。取り返しの付かないことをした。絶対許されることじゃない」
「おい水都…!!」
後ろから掴みかかってくる弟の手を乱暴に振り払うと、私はもう一度彼に視線を移した。相変わらず下を向いたままでこちらを見ようともしない、生きているけど死んでいるような魂の抜け殻だ。
「一虎」
もう一度彼の名前を呼ぶ。東卍の仲間は皆好きだけど、その中でもコイツとは特別仲が良かった。圭介が間にいたからというのもあるだろうが、あのメンツの中で一番気兼ねなく話せるのがこの少年だった。
「お前は間違いを犯したけど、やり直せるチャンスを与えられた。…しっかり償って出ておいで」
窃盗殺人、しかもその被害者がマイキーの兄である真一郎くん。あの人には良くしてもらったから私もショックだったけど、かと言って一虎を恨むことはできない。
「良いか、約束だ。絶対、戻ってくるんだぞ。私は…私たちは待ってるからな。お前の帰りを、待ってるからな」
頑なに顔を上げない一虎と目を合わせるべくしゃがみ込んだ私の目に映ったのは、堰を切ったように流れ出す大粒の涙だった。その涙が何を意味するのかは分からないが、私の声が多少なりとも届いたなら今はそれで良い。
「…またな、一虎」
本当はお前を殴り飛ばしてやりたい。そしてその後、思いっ切り抱き締めたい。今は叶わぬ願いだけど、2年後必ず実現してやるから。だから絶対、帰ってくるんだぞ。私達の元に、帰ってくるんだぞ。
悪夢は突然やってきた。ずっと皆で馬鹿をやる楽しい日々が続くと思っていたのに、まさかこんなにも簡単に壊れてしまうなんて──。
「一虎」
強固なガラスの向こうで俯いている少年の名前を呼ぶ。最早何を言っても彼には届かないだろうが、これを最後にしばらく会えないのだから言いたいことは全部伝えたい。
「お前は馬鹿だよ、大馬鹿だ。取り返しの付かないことをした。絶対許されることじゃない」
「おい水都…!!」
後ろから掴みかかってくる弟の手を乱暴に振り払うと、私はもう一度彼に視線を移した。相変わらず下を向いたままでこちらを見ようともしない、生きているけど死んでいるような魂の抜け殻だ。
「一虎」
もう一度彼の名前を呼ぶ。東卍の仲間は皆好きだけど、その中でもコイツとは特別仲が良かった。圭介が間にいたからというのもあるだろうが、あのメンツの中で一番気兼ねなく話せるのがこの少年だった。
「お前は間違いを犯したけど、やり直せるチャンスを与えられた。…しっかり償って出ておいで」
窃盗殺人、しかもその被害者がマイキーの兄である真一郎くん。あの人には良くしてもらったから私もショックだったけど、かと言って一虎を恨むことはできない。
「良いか、約束だ。絶対、戻ってくるんだぞ。私は…私たちは待ってるからな。お前の帰りを、待ってるからな」
頑なに顔を上げない一虎と目を合わせるべくしゃがみ込んだ私の目に映ったのは、堰を切ったように流れ出す大粒の涙だった。その涙が何を意味するのかは分からないが、私の声が多少なりとも届いたなら今はそれで良い。
「…またな、一虎」
本当はお前を殴り飛ばしてやりたい。そしてその後、思いっ切り抱き締めたい。今は叶わぬ願いだけど、2年後必ず実現してやるから。だから絶対、帰ってくるんだぞ。私達の元に、帰ってくるんだぞ。