第1話
❀ 場地水都 ❀
その日の夜、弟は怪我をして帰ってきた。暴走族って時点で喧嘩は避けて通れないことだが、私のいない間に酷い目に遭っていたのかと思うと不甲斐なかった。
「災難だったな。中学生一人に多数なんてダッセぇ奴ら」
「本当にな。散々だったぜ」
「マイキーが来てくれて良かったな」
「…そうだな」
青くなった背中に軟膏を塗りながら小さくため息をつく。きっと私なら負けなかったとか、そもそもマイキーは自分の愛車くらい自分で面倒見ろやとか、言いたいことは山ほどある。でも一番言いたいのは、やっぱりいつも決まっているのだ。
「体は大事にしなよ。あまり母さんを心配させるな」
「…分かってる」
「そ。なら良い」
もちろん母さんも心配してるけど、きっと一番心配してるのは私だ。恥ずかしいからいつもこんな言い方しかできないけど、本当は誰よりもお前のことを心配してる。これくらいならまだ良いけど、いつか取り返しのつかないことになる日が来るかもしれないと恐れている。
「ごめんな圭介、今日行けなくて」
側にいてやれなくてごめん。守ってやれなくてごめん。次は絶対私も行くから。お前を一人にはしないから。
「水都…。俺たちといるの嫌じゃないか?」
「は?何言ってんだ急に」
「いや…お前最近付き合い悪いからさ」
きまり悪そうにそっぽを向いた彼に、私は思わず吹き出してしまった。駄目だこればかりは我慢できない。だってコイツ、とんだ勘違いしてるんだもの。
「ふっ…、はっははははは…!」
「なっ…!お前何笑ってんだよ!」
「いや…だってお前…馬鹿なんだもん」
「はぁっ!?喧嘩売ってんのかゴリラ!」
「ゴリラは辞めてくれ腹痛い…!」
これを笑わずにいられるか?私が皆を嫌いになるなんて有り得ないのに、そんな盛大な勘違いしているコイツが滑稽で仕方ない。
「馬鹿だなぁ圭介。私が東卍を離れるわけないだろ?…確かに生徒会も好きだけど、私の一番は東卍だよ」
「…本当か?」
「私がお前に嘘ついたことあった?」
「バリバリあるだろうが。何言ってんだ雌ゴリラ」
「誰がゴリラだこのバカが」
ああ、ようやくいつもの調子に戻った。やっぱり私たちはこういうのが合ってるね。私はお前とこうやって口喧嘩してる時が一番楽しいんだ。東卍が一番だけど、その中でもお前は特別なんだよ。お前が立ち上げた最高のチーム、私から離れるなんて有り得ないんだよ。
その日の夜、弟は怪我をして帰ってきた。暴走族って時点で喧嘩は避けて通れないことだが、私のいない間に酷い目に遭っていたのかと思うと不甲斐なかった。
「災難だったな。中学生一人に多数なんてダッセぇ奴ら」
「本当にな。散々だったぜ」
「マイキーが来てくれて良かったな」
「…そうだな」
青くなった背中に軟膏を塗りながら小さくため息をつく。きっと私なら負けなかったとか、そもそもマイキーは自分の愛車くらい自分で面倒見ろやとか、言いたいことは山ほどある。でも一番言いたいのは、やっぱりいつも決まっているのだ。
「体は大事にしなよ。あまり母さんを心配させるな」
「…分かってる」
「そ。なら良い」
もちろん母さんも心配してるけど、きっと一番心配してるのは私だ。恥ずかしいからいつもこんな言い方しかできないけど、本当は誰よりもお前のことを心配してる。これくらいならまだ良いけど、いつか取り返しのつかないことになる日が来るかもしれないと恐れている。
「ごめんな圭介、今日行けなくて」
側にいてやれなくてごめん。守ってやれなくてごめん。次は絶対私も行くから。お前を一人にはしないから。
「水都…。俺たちといるの嫌じゃないか?」
「は?何言ってんだ急に」
「いや…お前最近付き合い悪いからさ」
きまり悪そうにそっぽを向いた彼に、私は思わず吹き出してしまった。駄目だこればかりは我慢できない。だってコイツ、とんだ勘違いしてるんだもの。
「ふっ…、はっははははは…!」
「なっ…!お前何笑ってんだよ!」
「いや…だってお前…馬鹿なんだもん」
「はぁっ!?喧嘩売ってんのかゴリラ!」
「ゴリラは辞めてくれ腹痛い…!」
これを笑わずにいられるか?私が皆を嫌いになるなんて有り得ないのに、そんな盛大な勘違いしているコイツが滑稽で仕方ない。
「馬鹿だなぁ圭介。私が東卍を離れるわけないだろ?…確かに生徒会も好きだけど、私の一番は東卍だよ」
「…本当か?」
「私がお前に嘘ついたことあった?」
「バリバリあるだろうが。何言ってんだ雌ゴリラ」
「誰がゴリラだこのバカが」
ああ、ようやくいつもの調子に戻った。やっぱり私たちはこういうのが合ってるね。私はお前とこうやって口喧嘩してる時が一番楽しいんだ。東卍が一番だけど、その中でもお前は特別なんだよ。お前が立ち上げた最高のチーム、私から離れるなんて有り得ないんだよ。