第1話
❀ 場地水都 ❀
私には双子の弟がいる。馬鹿で喧嘩っ早くて手のかかる、でも誰よりも仲間思いで単純な奴。アイツのアホ加減には毎回呆れるけど、何故か放っておけなくて気が付けばいつも一緒にいた。弱いくせに喧嘩ばかりするものだから、危なっかしくて目が離せない。コイツは弱くて馬鹿だから私が守ってやらなきゃ、いつのまにかそう思うようになっていた。
「おーい水都 !今日浜までひとっ走りしようぜ!」
「何言ってんだお前。宿題終わってんのか?」
「んなもん知らねぇよ!良いから行こうぜ、皆が待ってる!」
「…だからお前は馬鹿なんだよ」
「あ?なんか言ったかゴリラ」
中学に上がっても弟は相変わらず馬鹿だった。でも私は彼のそんなところに不本意ながらも救われている。
そう、例えば友達ができた。最初は私と弟二人だけだったのに、近所だということもありいつの間にかマイキーとつるむようになり、続いてドラケン、三ツ谷、一虎、パーちんと仲間が増えていった。今となってはその7人で東京卍會という暴走族を立ち上げ、日々そこら中を走り回っていた。
「お前、こんな美人な姉ちゃんに向かってゴリラはねぇだろ?」
「お前それ自分で言ってて恥ずかしくねぇの?」
「別に?」
だって事実じゃん。そう言った私に「うぜぇ」とわざとらしく顔をしかめた弟は、日誌を書いていた私の右手を掴むと勢いよく顔を近付けてきた。
「なぁ早くしろよ。こっちは待ってんだよ」
「いや、私今日は無理だから。生徒会の仕事がある」
「はああっ!?」
「うっせぇ至近距離で大声出すな」
「お前最近付き合い悪過ぎ!生徒会とか意味分かんねぇ」
「何言ってんだよ。喧嘩してバイク走らせるだけが不良じゃないだろ?学校では優等生、でも実は不良ですって奴の方がカッコいいじゃん」
「いや意味わかんねぇ。そんなことの為にあんな真面目組織入るとかアホ過ぎる」
「お前にだけは言われたくねぇわ」
私と弟は正反対。だけどやっぱり似ている。そりゃそうだ、だって私たち双子だもの。二卵性だから顔はそこまで似てないけど、私たちは二人で一人だと思ってる。だから私が、彼の足りないところを補うんだ。
「私抜きで行ってきな。楽しんでおいで」
「…こんな時だけ姉貴ヅラすんなよ」
「良いじゃないか。姉貴なのは事実なんだから」
そう、コイツは馬鹿だから。勉強できないから。学校での生活態度も良くないから。
「場地水都 は優等生。その優等生の弟が、お前なんだよ」
「なんだよ急に気持ち悪い」
「 ならさっさと行け。邪魔なんだよ」
「けっ!!つまんねー奴!」
思いっ切り顔をしかめて舌を出すと、弟は一目散に教室から出ていった。相変わらず落ち着きのない奴だけど、あの明るさが弟の魅力だと思う。
「…さて、私も行きますか」
ようやく日誌を書き終わった。アイツは毛嫌いしてるみたいだけど、私は結構生徒会を気に入っている。だってだって、なんかエリートみたいでカッコいいもの。
「そうよ、私は場地水都。学校では優等生、でも外では東京卍會の特攻隊長。どっちも私でどっも好き!」
誰もいない教室でバク転した私は、そのまま廊下に飛び出すと勢いよく走り出す。廊下は走るななんてよく言うけど、誰も見てなければ問題ない。
「人生楽しくいかなくちゃね!!」
生徒会の皆が好き。東京卍會の皆が好き。テストで満点取るのが好き。皆でバイクを走らせるのも好き。全部全部、大好きよ。どうか永遠に、こんな日々が続きますように。
私には双子の弟がいる。馬鹿で喧嘩っ早くて手のかかる、でも誰よりも仲間思いで単純な奴。アイツのアホ加減には毎回呆れるけど、何故か放っておけなくて気が付けばいつも一緒にいた。弱いくせに喧嘩ばかりするものだから、危なっかしくて目が離せない。コイツは弱くて馬鹿だから私が守ってやらなきゃ、いつのまにかそう思うようになっていた。
「おーい
「何言ってんだお前。宿題終わってんのか?」
「んなもん知らねぇよ!良いから行こうぜ、皆が待ってる!」
「…だからお前は馬鹿なんだよ」
「あ?なんか言ったかゴリラ」
中学に上がっても弟は相変わらず馬鹿だった。でも私は彼のそんなところに不本意ながらも救われている。
そう、例えば友達ができた。最初は私と弟二人だけだったのに、近所だということもありいつの間にかマイキーとつるむようになり、続いてドラケン、三ツ谷、一虎、パーちんと仲間が増えていった。今となってはその7人で東京卍會という暴走族を立ち上げ、日々そこら中を走り回っていた。
「お前、こんな美人な姉ちゃんに向かってゴリラはねぇだろ?」
「お前それ自分で言ってて恥ずかしくねぇの?」
「別に?」
だって事実じゃん。そう言った私に「うぜぇ」とわざとらしく顔をしかめた弟は、日誌を書いていた私の右手を掴むと勢いよく顔を近付けてきた。
「なぁ早くしろよ。こっちは待ってんだよ」
「いや、私今日は無理だから。生徒会の仕事がある」
「はああっ!?」
「うっせぇ至近距離で大声出すな」
「お前最近付き合い悪過ぎ!生徒会とか意味分かんねぇ」
「何言ってんだよ。喧嘩してバイク走らせるだけが不良じゃないだろ?学校では優等生、でも実は不良ですって奴の方がカッコいいじゃん」
「いや意味わかんねぇ。そんなことの為にあんな真面目組織入るとかアホ過ぎる」
「お前にだけは言われたくねぇわ」
私と弟は正反対。だけどやっぱり似ている。そりゃそうだ、だって私たち双子だもの。二卵性だから顔はそこまで似てないけど、私たちは二人で一人だと思ってる。だから私が、彼の足りないところを補うんだ。
「私抜きで行ってきな。楽しんでおいで」
「…こんな時だけ姉貴ヅラすんなよ」
「良いじゃないか。姉貴なのは事実なんだから」
そう、コイツは馬鹿だから。勉強できないから。学校での生活態度も良くないから。
「
「なんだよ急に気持ち悪い」
「 ならさっさと行け。邪魔なんだよ」
「けっ!!つまんねー奴!」
思いっ切り顔をしかめて舌を出すと、弟は一目散に教室から出ていった。相変わらず落ち着きのない奴だけど、あの明るさが弟の魅力だと思う。
「…さて、私も行きますか」
ようやく日誌を書き終わった。アイツは毛嫌いしてるみたいだけど、私は結構生徒会を気に入っている。だってだって、なんかエリートみたいでカッコいいもの。
「そうよ、私は場地水都。学校では優等生、でも外では東京卍會の特攻隊長。どっちも私でどっも好き!」
誰もいない教室でバク転した私は、そのまま廊下に飛び出すと勢いよく走り出す。廊下は走るななんてよく言うけど、誰も見てなければ問題ない。
「人生楽しくいかなくちゃね!!」
生徒会の皆が好き。東京卍會の皆が好き。テストで満点取るのが好き。皆でバイクを走らせるのも好き。全部全部、大好きよ。どうか永遠に、こんな日々が続きますように。
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