第一話 学園のはじまり
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自分の部屋の外。
そこには、トワの部屋がある。
同じマンションで暮らしている。
学校でも、家でも、いつも近くにいる。
「……」
それが今は、少しだけ鬱陶しく感じた。
いや。
鬱陶しいというより、自分の目的に、トワを巻き込みたくない。
グレンは、小さく息を吐いた。
コンコン。
「……?」
扉が叩かれた。
「グレン様ー!」
扉の向こうから、小百合の声がした。
「……なんだよ」
返事をすると――
ガチャ。
「失礼します!」
「おい」
小百合が当然のように入ってくる。
その後ろから、時雨も顔を出した。
「失礼いたします、グレン様」
「お前らな……」
「何か?」
「何かじゃねぇよ。ノックした意味あったか?」
「ありましたよ?」
小百合がにこっと笑う。
「一応、グレン様にお声がけしましたから」
「返事しただけだろ」
「はい」
「……」
グレンは呆れたように二人を見る。
「……お前ら、なんでいるんだよ」
「もちろん、グレン様のお世話をするためです」
「いらねぇ」
即答。
「そうおっしゃると思いました」
時雨がにこっと笑う。
「ですが、もう来てしまいましたので」
「帰れ」
「嫌です」
「おい」
二人は当然のように部屋へ入っていく。
「ちょ、お前ら!」
グレンが止めようとするが、二人は全く気にしない。
「まだ、お部屋の片付け済まされてないようですので、私が」
部屋にある段ボール箱を見て、時雨が進んで前に出る。
「待て」
それを制したのはグレン。
「その段ボール箱に何が入ってるか知ってるか?」
「なんでしょうか?」
訊ねる小百合に、グレンは答える。
「エロ本だ」
「え……!?」
驚きと、頬を染める小百合。
「男の部屋に一緒に住むってのは、そういう事だ。わかったらいますぐ出て…」
「だ、大丈夫です」
まさかの小百合の返答に、グレンが間抜けな声を出す。
「は?」
小百合が身じろぎながら、言った。
「そういうことについても、父から話は聞いております。
その、グレン様がトワ様に恥じらぬように、
わたくしを、その、よ、よよよ夜伽のような練習に、と…。
わたくしの、大事な務めであると……」
「おまえの父親は、なに馬鹿なことを言ってんだ!
勝手にトワまで巻き込むな!それに、二人でこっちに、アイツは?」
話を反らし、照れてる小百合の横で冷たい視線の時雨が言った。
「トワ様は、自分のモノがどこにいったかわからなくなると嫌だからと。
私たちを、グレン様のもとへ行かせてくれました」
「アイツ…じゃあ俺も」
「トワ様が、グレン様はそれどころじゃないと」
「っ〜〜」
言い返しようがなくなった。
男にはわからない、女の領域。
せめて一人くらい、従者を男にすればよかったかと後悔する。
「それに、あの箱の中は呪術の研究書ですよね」
時雨にはお見通しのようだ。
「整理します。小百合は夕飯の支度、いい?」
「そうだ!グレン様、夕食はなにが食べたいですか?」
勝手に話が進む従者の二人に、グレンはため息をつく。
そして。
「…カレー…」
そう答えた。
自室で、一人のんびりした時間を過ごす。
騒がしい小百合と時雨を、グレンの部屋に送り出したのは正解だ。
温かい紅茶を飲みながら、これから通うあの学校の事を考えて。
日本で最高峰の呪術学校。
日々の訓練でさえ、生きるか、死ぬかの、瀬戸際を与えられる場所。
そんな、普通の学校じゃない場所に、易々と許嫁を置きたくないのは頷ける。
『お前まで同じ学校じゃなくていいんだぞ?』
グレンに言われたあの言葉は、今でも胸に残っている。
でも、グレンはそれだけじゃない。
トワは膝の上で手を握った。
「……私は、ここにいたいんだけどな」
誰にも聞こえない声。
「私がそうしたいから……」
グレンに選んでもらいたい。
本当は、それだけだった。
親に決められた許嫁だからではなく。
グレン自身に、自分の隣にいてほしいと思ってもらいたい。
けれど――
(今のグレンは……私じゃない人を見てる)
だから、学校のことも遠まわしに言ってる。
「トワ様!いらっしゃいますか!?」
「…?」
一際珍しい、時雨の大きな声がドア越しから聞こえた。
「時雨、どうしたの?」
ドアを開け、事情を聞く。
「グレン様の部屋の片付けと、夕食の準備している間、
グレン様は隣の部屋でお休みになられていると伝えられ行ったのですが、いらっしゃらなくて……」
「!」
「こちらには」
「来てない。グレンが嘘つくなんて珍しいね。何かした?」
時雨が困ったような表情で、言いづらそうに口籠った。
「……少し……申し訳ありません」
「大丈夫、捜そう。小百合は?」
「小百合はいま、先に」
「わかった」
数分後、グレンは上の階にある修練場に行こうと、エレベーターの前で見つかった。
グレンの妙な雰囲気に、トワが聞く。
「グレン、何かあった?」
「いや、別に」
そういう割には、少し楽しそうだった。
そこには、トワの部屋がある。
同じマンションで暮らしている。
学校でも、家でも、いつも近くにいる。
「……」
それが今は、少しだけ鬱陶しく感じた。
いや。
鬱陶しいというより、自分の目的に、トワを巻き込みたくない。
グレンは、小さく息を吐いた。
コンコン。
「……?」
扉が叩かれた。
「グレン様ー!」
扉の向こうから、小百合の声がした。
「……なんだよ」
返事をすると――
ガチャ。
「失礼します!」
「おい」
小百合が当然のように入ってくる。
その後ろから、時雨も顔を出した。
「失礼いたします、グレン様」
「お前らな……」
「何か?」
「何かじゃねぇよ。ノックした意味あったか?」
「ありましたよ?」
小百合がにこっと笑う。
「一応、グレン様にお声がけしましたから」
「返事しただけだろ」
「はい」
「……」
グレンは呆れたように二人を見る。
「……お前ら、なんでいるんだよ」
「もちろん、グレン様のお世話をするためです」
「いらねぇ」
即答。
「そうおっしゃると思いました」
時雨がにこっと笑う。
「ですが、もう来てしまいましたので」
「帰れ」
「嫌です」
「おい」
二人は当然のように部屋へ入っていく。
「ちょ、お前ら!」
グレンが止めようとするが、二人は全く気にしない。
「まだ、お部屋の片付け済まされてないようですので、私が」
部屋にある段ボール箱を見て、時雨が進んで前に出る。
「待て」
それを制したのはグレン。
「その段ボール箱に何が入ってるか知ってるか?」
「なんでしょうか?」
訊ねる小百合に、グレンは答える。
「エロ本だ」
「え……!?」
驚きと、頬を染める小百合。
「男の部屋に一緒に住むってのは、そういう事だ。わかったらいますぐ出て…」
「だ、大丈夫です」
まさかの小百合の返答に、グレンが間抜けな声を出す。
「は?」
小百合が身じろぎながら、言った。
「そういうことについても、父から話は聞いております。
その、グレン様がトワ様に恥じらぬように、
わたくしを、その、よ、よよよ夜伽のような練習に、と…。
わたくしの、大事な務めであると……」
「おまえの父親は、なに馬鹿なことを言ってんだ!
勝手にトワまで巻き込むな!それに、二人でこっちに、アイツは?」
話を反らし、照れてる小百合の横で冷たい視線の時雨が言った。
「トワ様は、自分のモノがどこにいったかわからなくなると嫌だからと。
私たちを、グレン様のもとへ行かせてくれました」
「アイツ…じゃあ俺も」
「トワ様が、グレン様はそれどころじゃないと」
「っ〜〜」
言い返しようがなくなった。
男にはわからない、女の領域。
せめて一人くらい、従者を男にすればよかったかと後悔する。
「それに、あの箱の中は呪術の研究書ですよね」
時雨にはお見通しのようだ。
「整理します。小百合は夕飯の支度、いい?」
「そうだ!グレン様、夕食はなにが食べたいですか?」
勝手に話が進む従者の二人に、グレンはため息をつく。
そして。
「…カレー…」
そう答えた。
自室で、一人のんびりした時間を過ごす。
騒がしい小百合と時雨を、グレンの部屋に送り出したのは正解だ。
温かい紅茶を飲みながら、これから通うあの学校の事を考えて。
日本で最高峰の呪術学校。
日々の訓練でさえ、生きるか、死ぬかの、瀬戸際を与えられる場所。
そんな、普通の学校じゃない場所に、易々と許嫁を置きたくないのは頷ける。
『お前まで同じ学校じゃなくていいんだぞ?』
グレンに言われたあの言葉は、今でも胸に残っている。
でも、グレンはそれだけじゃない。
トワは膝の上で手を握った。
「……私は、ここにいたいんだけどな」
誰にも聞こえない声。
「私がそうしたいから……」
グレンに選んでもらいたい。
本当は、それだけだった。
親に決められた許嫁だからではなく。
グレン自身に、自分の隣にいてほしいと思ってもらいたい。
けれど――
(今のグレンは……私じゃない人を見てる)
だから、学校のことも遠まわしに言ってる。
「トワ様!いらっしゃいますか!?」
「…?」
一際珍しい、時雨の大きな声がドア越しから聞こえた。
「時雨、どうしたの?」
ドアを開け、事情を聞く。
「グレン様の部屋の片付けと、夕食の準備している間、
グレン様は隣の部屋でお休みになられていると伝えられ行ったのですが、いらっしゃらなくて……」
「!」
「こちらには」
「来てない。グレンが嘘つくなんて珍しいね。何かした?」
時雨が困ったような表情で、言いづらそうに口籠った。
「……少し……申し訳ありません」
「大丈夫、捜そう。小百合は?」
「小百合はいま、先に」
「わかった」
数分後、グレンは上の階にある修練場に行こうと、エレベーターの前で見つかった。
グレンの妙な雰囲気に、トワが聞く。
「グレン、何かあった?」
「いや、別に」
そういう割には、少し楽しそうだった。