第一話 学園のはじまり
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学校からの帰り道。
小百合と時雨が少し前を歩き、グレンとトワはその後ろを並んで歩いていた。
しばらくして、グレンが口を開く。
「……お前」
「ん?」
「今日、深夜に殺気立てただろ」
トワの足が、ほんの少し止まりかける。
「……」
「朝から何回か出てたぞ」
「……そんなに?」
「そんなにだ」
「でも……」
トワは少しだけ不満そうにグレンを見る。
「だって、グレンにいきなり攻撃してきたし」
「だからって、お前まで敵意出すな」
「私は何もしてないよ」
「目がしてた」
「……」
「お前、分かりやすいんだよ」
「グレンに言われたくない」
「なんでだよ」
「グレンだって、嫌いな相手にはすぐ顔に出るじゃん」
「俺はいいんだよ」
「ずるい」
「ずるくねぇ」
グレンはため息をつく。
「いいか。あいつは柊だ」
「知ってる」
「だったら余計なことするな。俺との関係が知られたら面倒だろ」
「……」
トワは少し黙る。
「……分かってるよ」
「ならいい」
グレンはそれだけ言って、前を向いた。
けれどトワは、少しだけ俯く。
「……でも」
「なんだよ」
「グレンが攻撃されて、何とも思わないのは無理だよ」
「……」
「避けられたのに、わざと受けたでしょ」
グレンの足が一瞬だけ止まる。
「……見てたのか」
「ずっと見てた」
「……」
「グレンが何考えてるかくらい、分かるよ」
グレンは何も言わなかった。
少し先で、小百合と時雨が振り返る。
二人が話しているのを確認すると、また前を向いた。
「……だからって、殺気立てるな」
「はいはい」
「返事が軽い」
「分かったって」
トワは少し笑う。
「もう気をつける」
「……ならいい」
再び二人は歩き出す。トワは隣を歩くグレンを見た。
「でも、深夜って……変な人だね」
「……ああ」
「グレンにあんなに普通に話しかけてた」
「……」
「グレンも、途中から敬語やめてたし」
「うるせぇ」
「ふふ」
「笑うな」
マンションについた一行。玄関の扉が開く。
「お疲れ様でした、グレン様」
小百合が先に中へ入り、荷物を置く。
「お疲れ様です、グレン様」
時雨も続く。
トワはその後ろから静かに部屋へ入った。
学校では一日中、人の目があった。
グレンへの扱い。
柊家の人間である深夜。
そして、朝の出来事。
トワは靴を脱ぎながら、ふとグレンを見る。
「……グレン」
「ん?」
「今日、疲れた?」
「別に」
即答だった。
「そっか」
トワはそれ以上聞かなかった。
グレンも何も言わない。
二人の間に、少しだけ沈黙が落ちる。
小百合がその空気を気にするように二人を見るが、時雨がそっと視線で制した。
今は、何も言わない方がいい。
やがてグレンが自分の部屋へ向かう。
「俺、部屋にいる」
「うん」
トワも自分の部屋へ向かった。
グレンはそのまま自分の部屋へ入っていく。
トワも自分の部屋へ向かった。
同じマンションで暮らしていても、二人の部屋は別々だ。
許嫁とはいえ、まだ学生。
親が決めた関係だからこそ、互いの生活には踏み込みすぎない。
トワは部屋へ入り、鞄を置いた。
ベッドに腰を下ろす。
「……柊、真昼……」
今日、初めて見た。
堂々としていて、綺麗で、誰が見ても目を引く人だった。
(あれが……グレンの好きな人)
分かっていた。
ずっと前から。
それでも、実際に目の前にすると――
「……」
胸の奥が、少しだけ苦しくなった。
その頃。
グレンの部屋では――
「……」
グレンが制服の上着を脱ぎ、椅子へ掛ける。
一棟を一瀬家が借り上げているマンション。
自分の部屋から廊下へ出れば、すぐそこにトワや小百合、時雨の部屋がある。
けれど、今は誰とも話す気になれなかった。
グレンは窓際へ歩き、外を見る。
夕方の街。
「……」
今日の学校での出来事が頭をよぎる。
深夜。
あの男は、面倒だ。
ただの柊家の人間ではない。
敵なのか、味方なのか、まだ判断できない。
そして――
「…トワ」
今日、深夜に声をかけられた時のことを思い出す。
『グレンの友達?』
トワは迷った。
それから、
『……まあ、友達かな』
と答えた。
「……」
グレンは目を細める。
許嫁だと知られれば、面倒なことになる。
だから、あれでいい。
友達。
それでいい。
……そう思ったはずなのに。
「……」
グレンは小さく息を吐いた。
小百合と時雨が少し前を歩き、グレンとトワはその後ろを並んで歩いていた。
しばらくして、グレンが口を開く。
「……お前」
「ん?」
「今日、深夜に殺気立てただろ」
トワの足が、ほんの少し止まりかける。
「……」
「朝から何回か出てたぞ」
「……そんなに?」
「そんなにだ」
「でも……」
トワは少しだけ不満そうにグレンを見る。
「だって、グレンにいきなり攻撃してきたし」
「だからって、お前まで敵意出すな」
「私は何もしてないよ」
「目がしてた」
「……」
「お前、分かりやすいんだよ」
「グレンに言われたくない」
「なんでだよ」
「グレンだって、嫌いな相手にはすぐ顔に出るじゃん」
「俺はいいんだよ」
「ずるい」
「ずるくねぇ」
グレンはため息をつく。
「いいか。あいつは柊だ」
「知ってる」
「だったら余計なことするな。俺との関係が知られたら面倒だろ」
「……」
トワは少し黙る。
「……分かってるよ」
「ならいい」
グレンはそれだけ言って、前を向いた。
けれどトワは、少しだけ俯く。
「……でも」
「なんだよ」
「グレンが攻撃されて、何とも思わないのは無理だよ」
「……」
「避けられたのに、わざと受けたでしょ」
グレンの足が一瞬だけ止まる。
「……見てたのか」
「ずっと見てた」
「……」
「グレンが何考えてるかくらい、分かるよ」
グレンは何も言わなかった。
少し先で、小百合と時雨が振り返る。
二人が話しているのを確認すると、また前を向いた。
「……だからって、殺気立てるな」
「はいはい」
「返事が軽い」
「分かったって」
トワは少し笑う。
「もう気をつける」
「……ならいい」
再び二人は歩き出す。トワは隣を歩くグレンを見た。
「でも、深夜って……変な人だね」
「……ああ」
「グレンにあんなに普通に話しかけてた」
「……」
「グレンも、途中から敬語やめてたし」
「うるせぇ」
「ふふ」
「笑うな」
マンションについた一行。玄関の扉が開く。
「お疲れ様でした、グレン様」
小百合が先に中へ入り、荷物を置く。
「お疲れ様です、グレン様」
時雨も続く。
トワはその後ろから静かに部屋へ入った。
学校では一日中、人の目があった。
グレンへの扱い。
柊家の人間である深夜。
そして、朝の出来事。
トワは靴を脱ぎながら、ふとグレンを見る。
「……グレン」
「ん?」
「今日、疲れた?」
「別に」
即答だった。
「そっか」
トワはそれ以上聞かなかった。
グレンも何も言わない。
二人の間に、少しだけ沈黙が落ちる。
小百合がその空気を気にするように二人を見るが、時雨がそっと視線で制した。
今は、何も言わない方がいい。
やがてグレンが自分の部屋へ向かう。
「俺、部屋にいる」
「うん」
トワも自分の部屋へ向かった。
グレンはそのまま自分の部屋へ入っていく。
トワも自分の部屋へ向かった。
同じマンションで暮らしていても、二人の部屋は別々だ。
許嫁とはいえ、まだ学生。
親が決めた関係だからこそ、互いの生活には踏み込みすぎない。
トワは部屋へ入り、鞄を置いた。
ベッドに腰を下ろす。
「……柊、真昼……」
今日、初めて見た。
堂々としていて、綺麗で、誰が見ても目を引く人だった。
(あれが……グレンの好きな人)
分かっていた。
ずっと前から。
それでも、実際に目の前にすると――
「……」
胸の奥が、少しだけ苦しくなった。
その頃。
グレンの部屋では――
「……」
グレンが制服の上着を脱ぎ、椅子へ掛ける。
一棟を一瀬家が借り上げているマンション。
自分の部屋から廊下へ出れば、すぐそこにトワや小百合、時雨の部屋がある。
けれど、今は誰とも話す気になれなかった。
グレンは窓際へ歩き、外を見る。
夕方の街。
「……」
今日の学校での出来事が頭をよぎる。
深夜。
あの男は、面倒だ。
ただの柊家の人間ではない。
敵なのか、味方なのか、まだ判断できない。
そして――
「…トワ」
今日、深夜に声をかけられた時のことを思い出す。
『グレンの友達?』
トワは迷った。
それから、
『……まあ、友達かな』
と答えた。
「……」
グレンは目を細める。
許嫁だと知られれば、面倒なことになる。
だから、あれでいい。
友達。
それでいい。
……そう思ったはずなのに。
「……」
グレンは小さく息を吐いた。