第一話 学園のはじまり
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「……」
グレンの足が、ほんの少しだけ止まる。
トワも、その視線の先を見る。
「……誰?」
「知らねぇ」
グレンはそう答えた。
銀髪の少年。
その視線に、グレンが気づく。
「……?」
グレンと少年の目が合う。
一瞬。
互いに何も言わない。
ただ、少年の口元がわずかに笑った。
ナツミはその視線に気づいて、グレンを見る。
「知り合い?」
「……いや」
グレンは短く答えた。
少年が、グレンへ向かって攻撃を仕掛ける。
「――!」
トワが目を見開く。
けれど、グレンは動かなかった。
迫る攻撃を、まるで最初から分かっていたかのように、そのまま受ける。
小百合と時雨も息を呑んだ。
トワはグレンを見る。
――今の。
避けられた。
絶対に。
けれどグレンは何も言わない。
少年も何も言わない。
ただ、互いに視線を交わす。
しばらくして、グレンが何事もなかったように歩き出した。
トワもその後を追う。
小百合と時雨も続いた。
やがて一行は校舎の中へ入り、掲示されているクラス表を確認する。
「……一年九組」
トワが自分の名前を探す。
「グレンも九組だね」
「ああ」
グレンが自分の名前を確認する。
小百合は一組、時雨は二組と、それぞれ従者は別々にされた。
朝のホームルームの先生の話では、一瀬家を馬鹿にするような話も含まれるが、二人は気にしない。
(孤独にいじめて、屈服させる、か……まぁ、トワが別じゃなかったのは、
従者じゃなかったから、か。許嫁は知られてない……いや、天下の本家様だ。
柊には話はいってる……。アイツは無罪、ただの、友達……)
窓際の一番奥に座るグレンは、前に座るトワを、暇つぶしに観察していた。
そして、先生の紹介にあたって入ってきた、今朝、グレンにちょっかいかけた相手。
「深夜様、ようこそ私のクラスへ」
一際嬉しそうな教師に、トワはわずかに眉間にシワを寄せる。
(アイツ……柊……なんだ)
「深夜様のお席は、こちらでござい」
「えー、嫌だよそんな前の席。だから」
言いながら深夜は、二人の、グレンの横に座る少女に話しかける。
「替わってもらえるかな?」
「は、はい!もちろんでございます!」
「ですが、そのようなネズミの隣に……」
「先生」
教師を睨む深夜の目に、背後から漂うほんの小さな殺気に、トワは息をひそめた。
「教師が教え子を、ネズミなんて言うのはどうかと思うよ?」
(……)
深夜の一言で、肩がついた朝のホームルーム。
「ねぇ、君」
深夜がグレンに話しかける。
「えーと、一瀬グレン君だっけ?グレンって、呼んでいい?」
「私にお声がけでしょうか?」
「なに、その敬語?」
「柊家の方には逆らうなと、厳しく教育されております」
「そりゃ〜つまんないな」
「申し訳ありません」
グレンに再びちょっかいかける深夜とのやり取りを、前の席でトワは密かに聞いている。
「でもさ」
構わず続ける深夜。
「今朝、おまえわざと僕の攻撃、喰らったろ?」
((バレてた……))
「申し訳ありませんでした。家から、柊家の方々からの怒りを買うなと言われていたので。
波風が立たぬよう攻撃を受けました」
謝罪するグレンに、いつもの事とトワは思おうとした。
「ふぅん、そっか〜」
深夜の軽い性格が、一変する。
「なぁ、グレン」
名を呼ぶ声が、一段と低い。
「つまんねぇ嘘、吐かすんじゃねぇよ」
コロコロ変わる深夜の態度。時折響く、明るい声と暗い声。
振り返ったらダメだ。
グレンとの関係が知れたら、グレンの気持ちを、終わらせてしまうかもしれない。
『お前までこの学校じゃなくていいんだぞ?』
『別に、他にやりたい事ないし…私、グレンの為に頑張ってるんだよ?』
『もう、頑張る必要ねえよ。寧ろ一緒じゃない方が楽なんだが』
『でも私たち、大人になったら結婚するんだよ?柊にも、知られてるんでしょ?』
『だから本家との顔合わせは拒否してるだろ』
(私、は……)
「ま、いいけどね〜」
深夜が、明るい声に戻る。
「僕も君と同じで、柊家が嫌いだから。
一緒にこそこそ色々やれたらおもしろいなぁって思ってたんだけど」
「……」
「ちなみに僕、柊の血は引いてないよ、養子だから。
子供のころから柊に入るように育てられた。だから柊家が嫌い。
つまり、君とは仲間だ」
「……誤解です。私はそんな――」
「ちなみに、僕の許嫁は柊真昼ね」
「……」
グレンの表情がわずかに変わった。
「おっと」
深夜の口元が上がる。
「……あっさり本性が出た」
グレンが眉を寄せる。
「どう?悔しい?」
「別に」
グレンは素っ気なく答えた。
「そんなに真昼と仲良くないから安心してよ。しょせんは養子。
下賤なクズの出。受けてる扱いは、君がここで受けてるものと一緒だよ。
もちろんムカツクから、全部壊してやろうと思ってるけど」
こいつは、味方?敵?
養子の、柊家。柊家なのに、柊を嫌ってる。
グレンの足が、ほんの少しだけ止まる。
トワも、その視線の先を見る。
「……誰?」
「知らねぇ」
グレンはそう答えた。
銀髪の少年。
その視線に、グレンが気づく。
「……?」
グレンと少年の目が合う。
一瞬。
互いに何も言わない。
ただ、少年の口元がわずかに笑った。
ナツミはその視線に気づいて、グレンを見る。
「知り合い?」
「……いや」
グレンは短く答えた。
少年が、グレンへ向かって攻撃を仕掛ける。
「――!」
トワが目を見開く。
けれど、グレンは動かなかった。
迫る攻撃を、まるで最初から分かっていたかのように、そのまま受ける。
小百合と時雨も息を呑んだ。
トワはグレンを見る。
――今の。
避けられた。
絶対に。
けれどグレンは何も言わない。
少年も何も言わない。
ただ、互いに視線を交わす。
しばらくして、グレンが何事もなかったように歩き出した。
トワもその後を追う。
小百合と時雨も続いた。
やがて一行は校舎の中へ入り、掲示されているクラス表を確認する。
「……一年九組」
トワが自分の名前を探す。
「グレンも九組だね」
「ああ」
グレンが自分の名前を確認する。
小百合は一組、時雨は二組と、それぞれ従者は別々にされた。
朝のホームルームの先生の話では、一瀬家を馬鹿にするような話も含まれるが、二人は気にしない。
(孤独にいじめて、屈服させる、か……まぁ、トワが別じゃなかったのは、
従者じゃなかったから、か。許嫁は知られてない……いや、天下の本家様だ。
柊には話はいってる……。アイツは無罪、ただの、友達……)
窓際の一番奥に座るグレンは、前に座るトワを、暇つぶしに観察していた。
そして、先生の紹介にあたって入ってきた、今朝、グレンにちょっかいかけた相手。
「深夜様、ようこそ私のクラスへ」
一際嬉しそうな教師に、トワはわずかに眉間にシワを寄せる。
(アイツ……柊……なんだ)
「深夜様のお席は、こちらでござい」
「えー、嫌だよそんな前の席。だから」
言いながら深夜は、二人の、グレンの横に座る少女に話しかける。
「替わってもらえるかな?」
「は、はい!もちろんでございます!」
「ですが、そのようなネズミの隣に……」
「先生」
教師を睨む深夜の目に、背後から漂うほんの小さな殺気に、トワは息をひそめた。
「教師が教え子を、ネズミなんて言うのはどうかと思うよ?」
(……)
深夜の一言で、肩がついた朝のホームルーム。
「ねぇ、君」
深夜がグレンに話しかける。
「えーと、一瀬グレン君だっけ?グレンって、呼んでいい?」
「私にお声がけでしょうか?」
「なに、その敬語?」
「柊家の方には逆らうなと、厳しく教育されております」
「そりゃ〜つまんないな」
「申し訳ありません」
グレンに再びちょっかいかける深夜とのやり取りを、前の席でトワは密かに聞いている。
「でもさ」
構わず続ける深夜。
「今朝、おまえわざと僕の攻撃、喰らったろ?」
((バレてた……))
「申し訳ありませんでした。家から、柊家の方々からの怒りを買うなと言われていたので。
波風が立たぬよう攻撃を受けました」
謝罪するグレンに、いつもの事とトワは思おうとした。
「ふぅん、そっか〜」
深夜の軽い性格が、一変する。
「なぁ、グレン」
名を呼ぶ声が、一段と低い。
「つまんねぇ嘘、吐かすんじゃねぇよ」
コロコロ変わる深夜の態度。時折響く、明るい声と暗い声。
振り返ったらダメだ。
グレンとの関係が知れたら、グレンの気持ちを、終わらせてしまうかもしれない。
『お前までこの学校じゃなくていいんだぞ?』
『別に、他にやりたい事ないし…私、グレンの為に頑張ってるんだよ?』
『もう、頑張る必要ねえよ。寧ろ一緒じゃない方が楽なんだが』
『でも私たち、大人になったら結婚するんだよ?柊にも、知られてるんでしょ?』
『だから本家との顔合わせは拒否してるだろ』
(私、は……)
「ま、いいけどね〜」
深夜が、明るい声に戻る。
「僕も君と同じで、柊家が嫌いだから。
一緒にこそこそ色々やれたらおもしろいなぁって思ってたんだけど」
「……」
「ちなみに僕、柊の血は引いてないよ、養子だから。
子供のころから柊に入るように育てられた。だから柊家が嫌い。
つまり、君とは仲間だ」
「……誤解です。私はそんな――」
「ちなみに、僕の許嫁は柊真昼ね」
「……」
グレンの表情がわずかに変わった。
「おっと」
深夜の口元が上がる。
「……あっさり本性が出た」
グレンが眉を寄せる。
「どう?悔しい?」
「別に」
グレンは素っ気なく答えた。
「そんなに真昼と仲良くないから安心してよ。しょせんは養子。
下賤なクズの出。受けてる扱いは、君がここで受けてるものと一緒だよ。
もちろんムカツクから、全部壊してやろうと思ってるけど」
こいつは、味方?敵?
養子の、柊家。柊家なのに、柊を嫌ってる。