第二話 交わる刃
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「グレン様トワ様、わたくしたち買い物してきてよろしいでしょうか?」
「ああ」
「私も、グレンと待ってるよ。一人でどっかに行かれても困るし」
「おいっ」
二人の様子に、小百合と時雨は笑ってくれた。
「では、行ってきます」
スーパーに入る二人に、軽く手をふるトワ。
小さめのスーパーを前に、グレンはガードレールに腰をおろす。
トワはその隣で、静かに立っていた。
「……グレン」
呼びかけて、謝ろうとした。でも、グレンが遮る。
「……さっきのこと、気にしてるか?」
「うん…」
「お前が謝ることじゃないだろ。寧ろ、よく動かなかったよ」
「……うん」
「お前まで動いたら、もっと面倒になってた」
「分かってるよ。でも…」
トワが続けようとすることに、グレンは彼女に顔を向けた。
「でもね……時雨を殴られそうになった時、動きたかった」
本音が少し、出てしまう。
「……分かってる」
トワが自分で選んでこの学校にいること。
婚約者だからとかは関係なく、グレン自身を好きなことも、
グレンは知っている。だからこそ、恋人のようにトワに触れることはできなかった。
だから、いまはこれだけ。
「……悪かったな」
「グレンが謝ることじゃないよ」
グレンが少し黙って、トワの頭にぽん、と手を置いた。
トワは一瞬だけ目を見開く。
本当は泣いて抱きつきたい。でも、それは違う。
トワはキュッと、唇を噛み締めた。
「斉藤さん!斉藤さん!」
子供の嬉しそうな声が聞こえ、二人は慌てて距離をとる。
咄嗟にしてしまった。
知らない人なんだから、気にしなくてよかったのに。
「ほんとにお菓子、なんでも買っていいの!?え、こんなに」
目がくるりと大きく、金髪の少年。
一万円札を渡され、目をキラキラさせている。
「孤児院のみんな、なに買っていったら喜ぶかなぁ?」
「一人で買える?ミカエラ君」
「あたりまえじゃん。僕、8歳だよ」
その声を聞きながら、グレンが立ち上がる。
そして、トワの前へ一歩出た。
「……?」
トワがグレンを見上げる。
グレンは何も言わない。
ただ、トワが前へ出ないようにするように、そのまま斉藤たちを見据えた。
そして。
「……斉藤?」
斉藤が振り返る。
「あら」
その顔に、薄い笑みが浮かんだ。
「お久しぶりですね」
「俺には木島って名乗らなかったか?」
「私に本名はありません」
「要するに暗殺者か」
「ええ」
トワは、何も言えない。
斉藤は楽しそうに笑う。
「ま、ここでは斉藤とお呼びください。ミカ君を混乱させてしまうので。
今日、お連れ様もいらっしゃるようですが?話しても?」
「……構わない。さっさと話せ」
「日本はこのままいけば崩壊します。
《白夜教》はこの国が正しい道に進めるよう真剣に考えています」
「……崩壊?」
トワが不思議そうに聞き返す。斉藤の表情は、無だ。
「はい。「終末のラッパ」に巻き込まれて」
「はっ」
グレンが小馬鹿にするよう笑う。
「出た、終末論。そんなんで俺を勧誘できるとでも思ってるのか?」
「これはそういう話じゃありません」
斉藤が語った戦争。
世界にウィルスが蔓延し、人が住めない世界になる。
しかも、世界にウィルスをまくのは《柊》だという。
国家呪術組織の座を《白夜教》から奪おうと暴走した《帝ノ鬼》は、
触れてはいけない禁忌の呪法を使おうとしている。《白夜教》はそれを防ごうとしているらしい。
「世界が終わる前に、一緒に柊を潰しましょう。
十日後に《白夜教》と柊の戦争は始まります」
「じゃあ、返答はそれまでに…」
「いえ、いまもらいます」
グレンはトワを見る。トワも、グレンを見た。
「なら、答えはノーだ。まともな会話も出来ない相手と組むことは出来ない」
トワはグレンの答えに、密かに安心していた。
「そうですか、それは残念…」
「斉藤さん!」
ここで、あの金髪の男の子が、袋いっぱいに戻ってきた。グレンとトワを見て、ミカエラが言う。
「ねね、斉藤さん。あの目つきの悪いお兄ちゃん、誰?」
「さあ?変質者ですかねえ」
「うわ、怖っ」
ミカエラがグレンを見る。
そして、今度はその隣にいるトワへ視線を移した。
「じゃあ、お姉さんは?」
「……」
トワが、少し困ったようにグレンを見る。
「……こいつは」
グレンが答えようとする前に、斉藤が口を挟んだ。
「さあ?変質者の保護者でしょうか」
「なんだそれ」
思わぬ答えに、グレンが突っ込む。
「私も気になっていたんですよ。先ほどから、貴方がずっと隠しているので」
「……別に隠してねぇよ」
グレンが不機嫌そうに返す。
「へぇ?」
「えー、お姉さんも怖い人なの?」
ミカエラがじっと、トワを見る。
トワは少し考えてから言った。
「……怖くないよ。たぶん、グレンよりは」
「おいっ」
「またね、お姉さん!」
「バイバイ」
斉藤がミカエラと手を繋ぐ。
その後ろ姿を見てから、グレンとトワは顔を合わせた。
「……時雨と小百合は?」
「知らない」
「伝えるの?」
「……俺から伝える」
「そっか」
トワは、去っていった斉藤たちの方を見る。
少し迷ってから、グレンに尋ねた。
「あの……さっきの人の話は、本当?」
「……十日後のことか?」
「うん」
グレンは少し黙った。
「……ああ」
「柊と、白夜教が……戦争するって」
「そうらしい」
「……じゃあ、十日後……何か起こるんだね」
「……ああ」
ここでグレンが詳しいことをまだ話さないなら、トワも、それ以上は聞かなかった。
「ああ」
「私も、グレンと待ってるよ。一人でどっかに行かれても困るし」
「おいっ」
二人の様子に、小百合と時雨は笑ってくれた。
「では、行ってきます」
スーパーに入る二人に、軽く手をふるトワ。
小さめのスーパーを前に、グレンはガードレールに腰をおろす。
トワはその隣で、静かに立っていた。
「……グレン」
呼びかけて、謝ろうとした。でも、グレンが遮る。
「……さっきのこと、気にしてるか?」
「うん…」
「お前が謝ることじゃないだろ。寧ろ、よく動かなかったよ」
「……うん」
「お前まで動いたら、もっと面倒になってた」
「分かってるよ。でも…」
トワが続けようとすることに、グレンは彼女に顔を向けた。
「でもね……時雨を殴られそうになった時、動きたかった」
本音が少し、出てしまう。
「……分かってる」
トワが自分で選んでこの学校にいること。
婚約者だからとかは関係なく、グレン自身を好きなことも、
グレンは知っている。だからこそ、恋人のようにトワに触れることはできなかった。
だから、いまはこれだけ。
「……悪かったな」
「グレンが謝ることじゃないよ」
グレンが少し黙って、トワの頭にぽん、と手を置いた。
トワは一瞬だけ目を見開く。
本当は泣いて抱きつきたい。でも、それは違う。
トワはキュッと、唇を噛み締めた。
「斉藤さん!斉藤さん!」
子供の嬉しそうな声が聞こえ、二人は慌てて距離をとる。
咄嗟にしてしまった。
知らない人なんだから、気にしなくてよかったのに。
「ほんとにお菓子、なんでも買っていいの!?え、こんなに」
目がくるりと大きく、金髪の少年。
一万円札を渡され、目をキラキラさせている。
「孤児院のみんな、なに買っていったら喜ぶかなぁ?」
「一人で買える?ミカエラ君」
「あたりまえじゃん。僕、8歳だよ」
その声を聞きながら、グレンが立ち上がる。
そして、トワの前へ一歩出た。
「……?」
トワがグレンを見上げる。
グレンは何も言わない。
ただ、トワが前へ出ないようにするように、そのまま斉藤たちを見据えた。
そして。
「……斉藤?」
斉藤が振り返る。
「あら」
その顔に、薄い笑みが浮かんだ。
「お久しぶりですね」
「俺には木島って名乗らなかったか?」
「私に本名はありません」
「要するに暗殺者か」
「ええ」
トワは、何も言えない。
斉藤は楽しそうに笑う。
「ま、ここでは斉藤とお呼びください。ミカ君を混乱させてしまうので。
今日、お連れ様もいらっしゃるようですが?話しても?」
「……構わない。さっさと話せ」
「日本はこのままいけば崩壊します。
《白夜教》はこの国が正しい道に進めるよう真剣に考えています」
「……崩壊?」
トワが不思議そうに聞き返す。斉藤の表情は、無だ。
「はい。「終末のラッパ」に巻き込まれて」
「はっ」
グレンが小馬鹿にするよう笑う。
「出た、終末論。そんなんで俺を勧誘できるとでも思ってるのか?」
「これはそういう話じゃありません」
斉藤が語った戦争。
世界にウィルスが蔓延し、人が住めない世界になる。
しかも、世界にウィルスをまくのは《柊》だという。
国家呪術組織の座を《白夜教》から奪おうと暴走した《帝ノ鬼》は、
触れてはいけない禁忌の呪法を使おうとしている。《白夜教》はそれを防ごうとしているらしい。
「世界が終わる前に、一緒に柊を潰しましょう。
十日後に《白夜教》と柊の戦争は始まります」
「じゃあ、返答はそれまでに…」
「いえ、いまもらいます」
グレンはトワを見る。トワも、グレンを見た。
「なら、答えはノーだ。まともな会話も出来ない相手と組むことは出来ない」
トワはグレンの答えに、密かに安心していた。
「そうですか、それは残念…」
「斉藤さん!」
ここで、あの金髪の男の子が、袋いっぱいに戻ってきた。グレンとトワを見て、ミカエラが言う。
「ねね、斉藤さん。あの目つきの悪いお兄ちゃん、誰?」
「さあ?変質者ですかねえ」
「うわ、怖っ」
ミカエラがグレンを見る。
そして、今度はその隣にいるトワへ視線を移した。
「じゃあ、お姉さんは?」
「……」
トワが、少し困ったようにグレンを見る。
「……こいつは」
グレンが答えようとする前に、斉藤が口を挟んだ。
「さあ?変質者の保護者でしょうか」
「なんだそれ」
思わぬ答えに、グレンが突っ込む。
「私も気になっていたんですよ。先ほどから、貴方がずっと隠しているので」
「……別に隠してねぇよ」
グレンが不機嫌そうに返す。
「へぇ?」
「えー、お姉さんも怖い人なの?」
ミカエラがじっと、トワを見る。
トワは少し考えてから言った。
「……怖くないよ。たぶん、グレンよりは」
「おいっ」
「またね、お姉さん!」
「バイバイ」
斉藤がミカエラと手を繋ぐ。
その後ろ姿を見てから、グレンとトワは顔を合わせた。
「……時雨と小百合は?」
「知らない」
「伝えるの?」
「……俺から伝える」
「そっか」
トワは、去っていった斉藤たちの方を見る。
少し迷ってから、グレンに尋ねた。
「あの……さっきの人の話は、本当?」
「……十日後のことか?」
「うん」
グレンは少し黙った。
「……ああ」
「柊と、白夜教が……戦争するって」
「そうらしい」
「……じゃあ、十日後……何か起こるんだね」
「……ああ」
ここでグレンが詳しいことをまだ話さないなら、トワも、それ以上は聞かなかった。