第二話 交わる刃
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「あなた、わかっているのですか?
ここにいるお方は、柊征志郎様ですよ?」
(こいつも、柊……)
グレンの前にいるトワは、二人を見る。
ガラの悪そうな男。つり目に、耳には一つピアスをとおしている。
「征志郎様に手を出そうとするなんて、万死に…」
「いいよ、弓。一瀬の馬鹿どもには人語は通じねぇだろ。
こういう家畜は、殴って強調するもんだ」
「時雨!」
トワが叫ぶ。
一歩、足が前へ出そうになる。
――でも。
「……」
トワは、その足を止めた。
またグレンに止められる。
またグレンを困らせる。
時雨は腕を前に顔をガードさせるが、身長差がありすぎる。
「遅えよ、チビ女」
征志郎が時雨へ向かって拳を振り上げた。
だが……。
振り下ろされるはずだった腕を、誰かが掴んだ。
「……!」
征志郎が振り返る。
そこにいたのは、深夜だった。
いつものふざけた笑顔は、ない。
「征志郎様」
声も、いつもより落ち着いていた。
「あなたほどのお方が、一瀬の女を殴ったなんて噂が立っては家名に傷がつきます」
「……てめぇ、養子の分際で誰に意見してんだよ」
言いながら、深夜の手を払う。
「……申し訳ありません。しかし」
「しかしじゃねぇよ」
「!」
深夜が征志郎に顔を殴られ、トワは驚く。
同じ柊同士なのに。
前に深夜が話していたのは、本当だったのだろう。
柊の中での扱いは、この学校に通うグレンと同じだという事を。
殴られたのに、深夜は征志郎に殴り返さなかった。
グレンには容赦ない深夜だったのに。
「はは、いい判断だ。お前じゃ俺には勝てないからな。
その判断ができるから、お前は親父に真昼の相手として選ばれた。
ちゃんと、わきまえとけよ」
「……はい」
「明日の術式試験の二戦目で、一瀬とあたるんで来てみたが、
やっぱただのネズミだったな」
「……そうですね」
グレンは、深夜と征志郎を見ている。
深夜がどう答えるか。
「初めは私も、ある程度の実力は持っているかと疑ったのですが、
とんだ買いかぶりでした。仲間が傷つけられそうになっても動けないようなクズ。
しょせん堕ちた二流の家柄の人間です」
「ははは!結局そうか。一瀬の人間はクズばかりだな。もういいや、つまんねぇ。いこうぜ」
征志郎が弓を連れ、そのまま去っていく。
分からない、深夜が。
分かろうとしなくていいんだろうけど。
助けてくれたのか、けなしに来たのか。
分からないのは、こっちも一緒だろう。
五士と美十が、グレンに言った。
「あーらら。ほんとのクズになっちゃったな。
やっぱ女守れない奴はだめだろ」
「……あんなことを言われて、悔しくないんですか?」
「…家から、柊家の方々には逆らうなと…」
「なら、死ねと言われたら死ぬんですか!」
美十は怒って、そのまま行ってしまう。五士もグレンに呆れ、美十と行ってしまった。
騒動が落ち着くと、周囲の生徒たちも口々に言い始める。
「一瀬って、やっぱクズなんだな」
「柊に逆らえないんだろ?」
笑い声が聞こえる。
悔しい。
何もできない自分が。
それでも――
それは、トワだけじゃない。
小百合も、時雨も、そしてグレンも。
四人とも、悔しい。
だけど。
誰も、グレンの邪魔をしたくないから。
「ほんと、つまんねぇ奴だな、おまえ」
深夜がグレンに言う。
「もうちょい期待してたんだが」
「……勝手に期待するな」
「……」
深夜はトワにも目を向ける。
トワは、二人の会話に入らなかった。
深夜と目を合わせることさえしない。
さっきのことも。
自分を庇ったのか、それともグレンを傷つけに来たのか。
まだ分からないから。
「……」
深夜も、それ以上は何も言わなかった。
「……」
深夜もそのまま、去って行く。
四人だけになって、ようやく口を開けた。
「わ、私が弱いばっかりに……申し訳ありませんでした」
「そんなことないよ、時雨。ありがとう」
「トワ様…」
泣きそうな時雨を寄せ、トワが慰める。
「それに、グレンはいつも私たちを守ってくれてる」
それはわかってる。自分も、言い聞かす。
「…ほんとに、こんな我慢をする必要があるんですか?」
小百合の言葉に、グレンが謝る。
「すまない」
「帰ろう。小百合、またご飯作ってくれる?」
「はい!」
ここにいるお方は、柊征志郎様ですよ?」
(こいつも、柊……)
グレンの前にいるトワは、二人を見る。
ガラの悪そうな男。つり目に、耳には一つピアスをとおしている。
「征志郎様に手を出そうとするなんて、万死に…」
「いいよ、弓。一瀬の馬鹿どもには人語は通じねぇだろ。
こういう家畜は、殴って強調するもんだ」
「時雨!」
トワが叫ぶ。
一歩、足が前へ出そうになる。
――でも。
「……」
トワは、その足を止めた。
またグレンに止められる。
またグレンを困らせる。
時雨は腕を前に顔をガードさせるが、身長差がありすぎる。
「遅えよ、チビ女」
征志郎が時雨へ向かって拳を振り上げた。
だが……。
振り下ろされるはずだった腕を、誰かが掴んだ。
「……!」
征志郎が振り返る。
そこにいたのは、深夜だった。
いつものふざけた笑顔は、ない。
「征志郎様」
声も、いつもより落ち着いていた。
「あなたほどのお方が、一瀬の女を殴ったなんて噂が立っては家名に傷がつきます」
「……てめぇ、養子の分際で誰に意見してんだよ」
言いながら、深夜の手を払う。
「……申し訳ありません。しかし」
「しかしじゃねぇよ」
「!」
深夜が征志郎に顔を殴られ、トワは驚く。
同じ柊同士なのに。
前に深夜が話していたのは、本当だったのだろう。
柊の中での扱いは、この学校に通うグレンと同じだという事を。
殴られたのに、深夜は征志郎に殴り返さなかった。
グレンには容赦ない深夜だったのに。
「はは、いい判断だ。お前じゃ俺には勝てないからな。
その判断ができるから、お前は親父に真昼の相手として選ばれた。
ちゃんと、わきまえとけよ」
「……はい」
「明日の術式試験の二戦目で、一瀬とあたるんで来てみたが、
やっぱただのネズミだったな」
「……そうですね」
グレンは、深夜と征志郎を見ている。
深夜がどう答えるか。
「初めは私も、ある程度の実力は持っているかと疑ったのですが、
とんだ買いかぶりでした。仲間が傷つけられそうになっても動けないようなクズ。
しょせん堕ちた二流の家柄の人間です」
「ははは!結局そうか。一瀬の人間はクズばかりだな。もういいや、つまんねぇ。いこうぜ」
征志郎が弓を連れ、そのまま去っていく。
分からない、深夜が。
分かろうとしなくていいんだろうけど。
助けてくれたのか、けなしに来たのか。
分からないのは、こっちも一緒だろう。
五士と美十が、グレンに言った。
「あーらら。ほんとのクズになっちゃったな。
やっぱ女守れない奴はだめだろ」
「……あんなことを言われて、悔しくないんですか?」
「…家から、柊家の方々には逆らうなと…」
「なら、死ねと言われたら死ぬんですか!」
美十は怒って、そのまま行ってしまう。五士もグレンに呆れ、美十と行ってしまった。
騒動が落ち着くと、周囲の生徒たちも口々に言い始める。
「一瀬って、やっぱクズなんだな」
「柊に逆らえないんだろ?」
笑い声が聞こえる。
悔しい。
何もできない自分が。
それでも――
それは、トワだけじゃない。
小百合も、時雨も、そしてグレンも。
四人とも、悔しい。
だけど。
誰も、グレンの邪魔をしたくないから。
「ほんと、つまんねぇ奴だな、おまえ」
深夜がグレンに言う。
「もうちょい期待してたんだが」
「……勝手に期待するな」
「……」
深夜はトワにも目を向ける。
トワは、二人の会話に入らなかった。
深夜と目を合わせることさえしない。
さっきのことも。
自分を庇ったのか、それともグレンを傷つけに来たのか。
まだ分からないから。
「……」
深夜も、それ以上は何も言わなかった。
「……」
深夜もそのまま、去って行く。
四人だけになって、ようやく口を開けた。
「わ、私が弱いばっかりに……申し訳ありませんでした」
「そんなことないよ、時雨。ありがとう」
「トワ様…」
泣きそうな時雨を寄せ、トワが慰める。
「それに、グレンはいつも私たちを守ってくれてる」
それはわかってる。自分も、言い聞かす。
「…ほんとに、こんな我慢をする必要があるんですか?」
小百合の言葉に、グレンが謝る。
「すまない」
「帰ろう。小百合、またご飯作ってくれる?」
「はい!」