第二話 交わる刃
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「……選抜術式試験、か」
近いうちに行われる選抜術式試験。
この学校では、ただ術式を学ぶだけじゃない。
実戦を想定した試験も多く、今回も生徒たちの実力が問われる。
この間、深夜から攻撃を受けた傷はすっかりよくなっていたグレンも、いま教室にいた。
クラス一丸となり、他のクラスに勝つこと。
トワはボーっと、話しを聞いていた。
あの担任、女教師が一番張り切っているように見えた。
「選抜術式試験、楽しみだね」
「俺は楽しみじゃねぇよ」
グレンが戻り、もう慣れつつある深夜のニコニコ顔に、
二人の会話、主に深夜がグレンに話しかけている。
「あ、そうだ……真昼が君のお見舞いに行ったんだって?」
深夜の言葉が、トワの耳に入る。
「……」
――真昼。
その名前だけで、胸の奥が小さく痛む。
グレンが医務室に行っていた時間、会ってたんだ。
自分が教室に残っていた、その間に。
「君に会って、珍しく機嫌悪くなってた」
深夜は真昼の許嫁だ。その日にあったことを話すのは当然で。
「……あいつが?」
「何かあった?」
「……別に」
「僕が許嫁だからって、気遣う必要ないのに」
「…じゃあ、俺が弱くてガッカリしてたことにでもしておけ」
「なにそれ。トワだって、弱い君のことは嫌いなんじゃないの?」
「……」
「あの技をよけなかったことに、僕ビックリなんだけど」
「あれは本当に、俺が避けられなかっただけだ」
「本当?トワ。トワはグレンのこと、どう思ってるの?」
突然、自分に話しを振られた。
トワは答えない。
さっき聞いたばかりの真昼の名前が、まだ胸に残っている。
グレンが好きな人。
グレンが、自分ではなく見つめている人。
それでも――
「……グレンに聞けば?」
トワは小さく笑って、深夜から視線を逸らした。
深夜は何も言わなかった。
いつもの、喰ってかかる彼女じゃなかった。
『知らない』
とか、グレンのことを悪くいえば悪戯に殺気たててくる子だったのに。
グレンに注意でもされたのか、普通に自分に呆れ関係ないと距離を置かれたか。
でも……。
前を向き直すその表情は悲しそうで、でも、それを隠そうとしているようにみえた。
「……」
深夜はグレンを見る。
その視線に気づくグレンは、深夜を見た。
「なんだ?」
「……何も。グレン、一緒に帰る?」
「死ね」
「はは」
「グレン様!」
教室に、元気な小百合の声が響く。
「目立ったら、また怒らせるぞ」
続けて、時雨もやってきた。
「二人とも、はやいなぁ」
トワはグレンより先に席を立ち、二人のもとに行く。
トワが離れたところで、深夜がグレンにこっそり聞いた。
「グレン、トワと喧嘩でもした?」
「なんでだ?」
「……いや、僕の勘違いにしておいて」
「なんだよ」
すると、グレンの横で腕を組み、仁王立ちの美十がいる。
「女を二人も従者としてつれてくるなんて、一瀬家は臆病なんですねぇ」
続けて五士が言った。
「ほんとほんと。それもあんな美人ばっかり。ちょっと俺に紹介しろよ。
どっちかと付き合ってたりすんの?気になってたけど、いつも一緒の子も従者?」
「汚らわしい一瀬の人間とは、付き合わないんじゃなかったのか?」
「美人は別だよ。その、クラスの子、なんだっけ?」
「……アイツは、友達だ」
「そっか。友達なら違うかもしれねぇけど、あの二人はお前の直属の部下だろ?」
五士は別の教室から来た小百合と時雨を指さし確認する。
「ってことは、夜伽もやってんのか?」
「……」
その発言にトワは黙り、代わりに女子代表で爆破したのが美十だ。
「五士の低俗男!教室で卑猥な話しはやめていただけますか!?」
「そうですよ!」
それに乗っかるのが小百合。
「変な言いがかりはやめてくださいませんか!
グレン様はまだ、手を出してくださらないんですよ!」
小百合自身は気付いていないのか真面目なのか分からない、が。
教室が静まる。
グレンが頭を抱える。
開いた口が塞がらない五士と美十。
爆笑の深夜。
トワは黙って歩く。
「あ、トワ様!」
慌てて追いかける時雨。
「え?え?」
周りの反応にとまどう小百合。
「……帰る」
廊下に出て、四人で歩く、いつもの光景。
だが、廊下の奥からいつもと違う空気。
足を止める四人。グレンが小さな声でつげる。
「動くな。俺が対応する」
「え?でも……」
時雨が言いかけたその時、いつの間にか、グレンが倒れた。
「あ、ごめんごめん。足がすべった」
(速い…!)
トワが警戒を強める。
(まずい…)
よかれと思ってやられるよう対応したグレンだったが、
感情を普段表に出さない時雨を怒らせた。
「貴様っ!」
深夜に殺気立て、グレンに怒られたことのあるトワは動けなかった。
また、グレンに迷惑かけるから。
本当なら、自分も動きたい。
けれど。
時雨が踏み込む。
その拳が、征志郎へ向かって振り抜かれた。
――だが。
「……!」
ガシッ!
拳を受け止めたのは、征志郎の後ろにいた女子生徒だった。
「……!」
時雨が目を見開く。
細い腕で、時雨の拳を完全に止めている。
近いうちに行われる選抜術式試験。
この学校では、ただ術式を学ぶだけじゃない。
実戦を想定した試験も多く、今回も生徒たちの実力が問われる。
この間、深夜から攻撃を受けた傷はすっかりよくなっていたグレンも、いま教室にいた。
クラス一丸となり、他のクラスに勝つこと。
トワはボーっと、話しを聞いていた。
あの担任、女教師が一番張り切っているように見えた。
「選抜術式試験、楽しみだね」
「俺は楽しみじゃねぇよ」
グレンが戻り、もう慣れつつある深夜のニコニコ顔に、
二人の会話、主に深夜がグレンに話しかけている。
「あ、そうだ……真昼が君のお見舞いに行ったんだって?」
深夜の言葉が、トワの耳に入る。
「……」
――真昼。
その名前だけで、胸の奥が小さく痛む。
グレンが医務室に行っていた時間、会ってたんだ。
自分が教室に残っていた、その間に。
「君に会って、珍しく機嫌悪くなってた」
深夜は真昼の許嫁だ。その日にあったことを話すのは当然で。
「……あいつが?」
「何かあった?」
「……別に」
「僕が許嫁だからって、気遣う必要ないのに」
「…じゃあ、俺が弱くてガッカリしてたことにでもしておけ」
「なにそれ。トワだって、弱い君のことは嫌いなんじゃないの?」
「……」
「あの技をよけなかったことに、僕ビックリなんだけど」
「あれは本当に、俺が避けられなかっただけだ」
「本当?トワ。トワはグレンのこと、どう思ってるの?」
突然、自分に話しを振られた。
トワは答えない。
さっき聞いたばかりの真昼の名前が、まだ胸に残っている。
グレンが好きな人。
グレンが、自分ではなく見つめている人。
それでも――
「……グレンに聞けば?」
トワは小さく笑って、深夜から視線を逸らした。
深夜は何も言わなかった。
いつもの、喰ってかかる彼女じゃなかった。
『知らない』
とか、グレンのことを悪くいえば悪戯に殺気たててくる子だったのに。
グレンに注意でもされたのか、普通に自分に呆れ関係ないと距離を置かれたか。
でも……。
前を向き直すその表情は悲しそうで、でも、それを隠そうとしているようにみえた。
「……」
深夜はグレンを見る。
その視線に気づくグレンは、深夜を見た。
「なんだ?」
「……何も。グレン、一緒に帰る?」
「死ね」
「はは」
「グレン様!」
教室に、元気な小百合の声が響く。
「目立ったら、また怒らせるぞ」
続けて、時雨もやってきた。
「二人とも、はやいなぁ」
トワはグレンより先に席を立ち、二人のもとに行く。
トワが離れたところで、深夜がグレンにこっそり聞いた。
「グレン、トワと喧嘩でもした?」
「なんでだ?」
「……いや、僕の勘違いにしておいて」
「なんだよ」
すると、グレンの横で腕を組み、仁王立ちの美十がいる。
「女を二人も従者としてつれてくるなんて、一瀬家は臆病なんですねぇ」
続けて五士が言った。
「ほんとほんと。それもあんな美人ばっかり。ちょっと俺に紹介しろよ。
どっちかと付き合ってたりすんの?気になってたけど、いつも一緒の子も従者?」
「汚らわしい一瀬の人間とは、付き合わないんじゃなかったのか?」
「美人は別だよ。その、クラスの子、なんだっけ?」
「……アイツは、友達だ」
「そっか。友達なら違うかもしれねぇけど、あの二人はお前の直属の部下だろ?」
五士は別の教室から来た小百合と時雨を指さし確認する。
「ってことは、夜伽もやってんのか?」
「……」
その発言にトワは黙り、代わりに女子代表で爆破したのが美十だ。
「五士の低俗男!教室で卑猥な話しはやめていただけますか!?」
「そうですよ!」
それに乗っかるのが小百合。
「変な言いがかりはやめてくださいませんか!
グレン様はまだ、手を出してくださらないんですよ!」
小百合自身は気付いていないのか真面目なのか分からない、が。
教室が静まる。
グレンが頭を抱える。
開いた口が塞がらない五士と美十。
爆笑の深夜。
トワは黙って歩く。
「あ、トワ様!」
慌てて追いかける時雨。
「え?え?」
周りの反応にとまどう小百合。
「……帰る」
廊下に出て、四人で歩く、いつもの光景。
だが、廊下の奥からいつもと違う空気。
足を止める四人。グレンが小さな声でつげる。
「動くな。俺が対応する」
「え?でも……」
時雨が言いかけたその時、いつの間にか、グレンが倒れた。
「あ、ごめんごめん。足がすべった」
(速い…!)
トワが警戒を強める。
(まずい…)
よかれと思ってやられるよう対応したグレンだったが、
感情を普段表に出さない時雨を怒らせた。
「貴様っ!」
深夜に殺気立て、グレンに怒られたことのあるトワは動けなかった。
また、グレンに迷惑かけるから。
本当なら、自分も動きたい。
けれど。
時雨が踏み込む。
その拳が、征志郎へ向かって振り抜かれた。
――だが。
「……!」
ガシッ!
拳を受け止めたのは、征志郎の後ろにいた女子生徒だった。
「……!」
時雨が目を見開く。
細い腕で、時雨の拳を完全に止めている。