第一話 兄弟ゲンカ
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リニュウを呼び、空高く飛び上がった玲薇は、地上に広がった煙が収まる様子を伺った。
その場が見えたころにハッとした。燐と雪男がいた場所に、一部地面が割れている。それほどの強い衝動だったのだ。
子猫丸を守るように志摩はヤマンタカの黒い炎で身を守り、人並み外れたこの状況を作った張本人たちは、無事に生きていた。
「ッテェエ、やったなクソが!!!」
「・・・ヒャハハハハ、怒れ怒れ。お前にはまだ可能性がある。オレの憑依体になる可能性が」
「っ・・・!!」
サタンの言葉に、息をのむ。
「「!!」」
(コイツ、まさかと思ったが・・・やはり)
小さな違和感が、確信に変わった。玲薇は、空にいる。この荒れた地上より、空にいてくれたほうが安心だ。そして・・・。
「三輪くん、それに志摩くんも。聞いてましたね!?」
「!?」
「うッ゙」
「この船艦は落ちるかもしれない。その前に、三輪くんだけでも逃さないと」
「ちょっとお!せんせぇ!」
酷い言われようだが、今の状況仕方ない。
「神隠しの鍵は、使う者を限定しないはず。彼らに渡して」
「いいけど、俺達は?」
「兄さんは絶対に憑依されるな!!」
事の重大さに危機を感じたサタンが、雪男の目の中で暴れ出す。
「生かされてるだけだってことを忘れるな!!!」
「雪男!!」
吹き飛ばされる瞬間、志摩たちがいる足場が完全に崩壊した。
「ぎゃあああ!」
「ヒィィイムリムリムリ」
錫杖で落下を凌ぎつつある志摩に、なんとか子猫丸はしがみつく。
(どうしよう、どうしよう・・・!)
自分は空中にいるからいいものの。
「リニュウ!」
《あんなに人は乗せんぞ!ただでさえ貴様も喰ってやりたいんだからな!》
「ぐっ・・・」
散々リニュウとは言い合ってきてしまっている。自分以外乗せないともそういえば約束してしまったっけ。
「さぁあて、どうしてやろうか?」
志摩達の方へ行こうとしていた燐の背後に、サタンが囁く。
「ここにいる全員殺すか?」
「やめろ!!」
気を失っている雪男から、サタンは独自に喋り燐を煽る。
「そうだ、オマエが殺せ!」
雪男の左目にもう一度、剣の型をした炎を突き刺すも、さっきより太すぎる刃にサタンに届かない。
(落ちつけ、集中しろ・・・!)
「スッキリするぞォオあっハハハハ!」
(集中・・・!)
「奥村くん!!」
呼ばれる名前に、燐はハッと顔が上がる。
「コレ、使って!」
子猫丸が投げたのは、降魔剣だ。
「直ったのか!?」
「ううん、中身はカラッポや」
「へぇ!?」
「和尚が、"因"になるかもしれへんて・・・」
「ヨスガ!?」
聞きたいことは山のようにあるが、その前に、志摩が限界を迎えそうで。
「あ、も、抜ける。アカンアカン」
「え〜っと、炎の制御の手がかりにな」
「ムリ」
ヤマンタカで必死に壁に引っ掛けていたが、とうとう抜けてしまった。
「うわぁああ!」
驚く燐に、志摩も子猫丸の言葉もそれぞれ落下していく。
《も〜、いっつもこれだよ!》
いつの間にか二人の側にいたクロが、自ら巨大化して二人のもとへ。
「クロ、頼む!」
クロが二人の所にいてくれれば安心だ。玲薇もホッと、胸をなでおろす。だが、それもつかの間だった。
「くだらねぇえ、こんな柵に、頼るんじゃねぇ!!」
バチッ゙と、燐の手から炎が弾き、燐は降魔剣を手放してしまう。
「ああっ」
降魔剣が落下していくのは、志摩たちが落ちていった穴と同じ。
「リニュウ!」
降魔剣を取り戻さなければ。
「玲薇!」
「枠に収まって我慢するな。オレに似てるところをもう一度見せてみろ」
解き放て!
「!!!」
玲薇は降魔剣を握りしめ、顔を上げた。振り注ぐ無数の瓦礫に、下は幸いなことに岩場と海の更地。
しかし、このまま急降下してしまえばリニュウ自身も無傷とはいかない。大きな羽を羽ばたかせ、いくつかの瓦礫に当たりながらも船を目指す。
眩しい光に目をやられそうになるが、燐と雪男の姿を探し続ける。
「雪男!!」
「・・・!」
微かに聞こえた燐の声。彼の放つ青い炎。囁き続けるサタンの声。
「諦めろ。諦めれば楽になれる」
「俺は・・・諦めなかった人達に助けられた。俺だって・・・」
「燐!!!」
「!!!」
刃のない、柄だけの降魔剣を燐へ。燐が掴んだ瞬間、青い炎が降魔剣の刃へ変わった。
そして、燐はそれを雪男の左目に宿る忌まわしいサタンを消す為に貫く。
「ぎゃあああ!!!」
燐達から離れた距離にいる玲薇にも聞こえるサタンの悲鳴。きっと、燐はサタンに何か言われたかもしれない。
それは玲薇に知る由もない。
あとは、制御不能となったこの船艦がただ不上陸するだけだった。
おい、なんだ、まさかそんなガタがきた剣一本戻ってきたくらいで勝ったつもりか?
どうして、今まで俺は俺が怖かったんだろうな
「な、ん、だァ?俺は俺だ!消すことも逃げることもできねぇぞ!!判ってる。俺は俺を飼い慣らす」
ウソだろ。俺は、壊すだけが取り柄の弱い凶暴な人外のはずだ!!覚えておけ!
青い炎の降魔剣の刃。そのまま燐は、その刃を鞘におさめた。
「・・・ああ、覚えておく」
燐はふと、空にいる玲薇を見る。玲薇も、燐が見てる事に気がついた。
「「・・・・・・」」
でも、どちらもかける言葉が見つからなくて。燐に駆け寄ることも、お疲れ様と言うこともなんだか違うような気がしてしまった。
「・・・二人とも、大丈夫・・・!?」
少し離れてるから、それなりの声量。そして、やっぱり二人になってしまう。燐はハッとしたように、自分を確認し、雪男に視線を向け直す。
「俺は、大丈夫だ!雪男、大丈夫か!?」
気を失っていた雪男の身体を揺さぶると、ピクリと雪男の身体が反応した。
「!!よかった、無事か」
「・・・兄さんが、助けたの?」
「ん、まぁ・・・クロ達も、無事だといいけど。下は、炎の海だ」
先のやり取りのせいだろう。船はもうほとんど原形もなく、エンジン漏れのせいか、海も近くにも関わらず火が消えそうにもない。
「玲薇は?」
起き上がる雪男はボーッとしていた意識が戻りつつ、問いかけた。すると、燐が頭上を指す。
「上にいる」
「!」
雪男の顔を見た玲薇の表情が、パッと明るくなった。
「雪男!燐!」
「玲薇は降りなくていいよ、そこにいて」
「え!?」
「確かに、ここじゃあ、あぶねーからな」
「兄さん、髪が黒に戻ってるの、気づいてる?」
「えっまじ・・・」
「何がどうなったか知らないが」
「!」
雪男が再び、アルムマヘル銃を燐に向けた。
「え・・・え・・・?」
戸惑う玲薇に、燐は逃げる隙がない。
「この試作機は、今まで9発撃ってバッテリー残量は三分の二程度。この三分の二の威力を一発に凝縮して撃ったら、どうなると思う?」
「「!!!」」
銃弾が燐に貫き、燐は力が抜けたように瓦礫の中へ転がっていく。
「燐!」
「玲薇!!」
「!」
すぐに燐を助けようと行く玲薇に、雪男が制止した。彼女にも、アルムマヘル銃ではない、至って普通の銃を向けて。
「・・・雪男、何で・・・?」
「・・・決着、つけさせて」
本当の自分の力で。何も着飾らない、自分達で。自分の秘密にも、そして、玲薇の事にも。
だから、そこにいて。雪男の目は、本気だ。玲薇は、動けなかった。
「・・・リニュウ、少し離れよう・・・」
言葉が震えていた。でも、彼女の心の芯はブレてない。
《いいんだな》
「うん。でも、見える場所で」
《わかった》
見届けなくちゃ・・・。
「起きろ、時間がない」
雪男が瓦礫に埋まった燐を救出しながら声をかける。
「サタンがいつ戻るか判らない。いつもの怪力は、出せないか?」
「・・・あんま・・・力入んねぇ・・・」
「なら、よかった」
「??お前・・・なに?何なんだ!?」
「兄さんはこれで常人並。僕も、サタンが戻るまではほぼ常人。対等に戦える」
「・・・お前さぁ、いくらナメられたくないからって、まさかとは思うけど・・・パニクってんのか?冷静になれよ」
「・・・そのカン違いを正してやる・・・!!僕が冷静でいられた事なんて、一度もない。目がこうなってからは、ずっと死にたかった」
その場が見えたころにハッとした。燐と雪男がいた場所に、一部地面が割れている。それほどの強い衝動だったのだ。
子猫丸を守るように志摩はヤマンタカの黒い炎で身を守り、人並み外れたこの状況を作った張本人たちは、無事に生きていた。
「ッテェエ、やったなクソが!!!」
「・・・ヒャハハハハ、怒れ怒れ。お前にはまだ可能性がある。オレの憑依体になる可能性が」
「っ・・・!!」
サタンの言葉に、息をのむ。
「「!!」」
(コイツ、まさかと思ったが・・・やはり)
小さな違和感が、確信に変わった。玲薇は、空にいる。この荒れた地上より、空にいてくれたほうが安心だ。そして・・・。
「三輪くん、それに志摩くんも。聞いてましたね!?」
「!?」
「うッ゙」
「この船艦は落ちるかもしれない。その前に、三輪くんだけでも逃さないと」
「ちょっとお!せんせぇ!」
酷い言われようだが、今の状況仕方ない。
「神隠しの鍵は、使う者を限定しないはず。彼らに渡して」
「いいけど、俺達は?」
「兄さんは絶対に憑依されるな!!」
事の重大さに危機を感じたサタンが、雪男の目の中で暴れ出す。
「生かされてるだけだってことを忘れるな!!!」
「雪男!!」
吹き飛ばされる瞬間、志摩たちがいる足場が完全に崩壊した。
「ぎゃあああ!」
「ヒィィイムリムリムリ」
錫杖で落下を凌ぎつつある志摩に、なんとか子猫丸はしがみつく。
(どうしよう、どうしよう・・・!)
自分は空中にいるからいいものの。
「リニュウ!」
《あんなに人は乗せんぞ!ただでさえ貴様も喰ってやりたいんだからな!》
「ぐっ・・・」
散々リニュウとは言い合ってきてしまっている。自分以外乗せないともそういえば約束してしまったっけ。
「さぁあて、どうしてやろうか?」
志摩達の方へ行こうとしていた燐の背後に、サタンが囁く。
「ここにいる全員殺すか?」
「やめろ!!」
気を失っている雪男から、サタンは独自に喋り燐を煽る。
「そうだ、オマエが殺せ!」
雪男の左目にもう一度、剣の型をした炎を突き刺すも、さっきより太すぎる刃にサタンに届かない。
(落ちつけ、集中しろ・・・!)
「スッキリするぞォオあっハハハハ!」
(集中・・・!)
「奥村くん!!」
呼ばれる名前に、燐はハッと顔が上がる。
「コレ、使って!」
子猫丸が投げたのは、降魔剣だ。
「直ったのか!?」
「ううん、中身はカラッポや」
「へぇ!?」
「和尚が、"因"になるかもしれへんて・・・」
「ヨスガ!?」
聞きたいことは山のようにあるが、その前に、志摩が限界を迎えそうで。
「あ、も、抜ける。アカンアカン」
「え〜っと、炎の制御の手がかりにな」
「ムリ」
ヤマンタカで必死に壁に引っ掛けていたが、とうとう抜けてしまった。
「うわぁああ!」
驚く燐に、志摩も子猫丸の言葉もそれぞれ落下していく。
《も〜、いっつもこれだよ!》
いつの間にか二人の側にいたクロが、自ら巨大化して二人のもとへ。
「クロ、頼む!」
クロが二人の所にいてくれれば安心だ。玲薇もホッと、胸をなでおろす。だが、それもつかの間だった。
「くだらねぇえ、こんな柵に、頼るんじゃねぇ!!」
バチッ゙と、燐の手から炎が弾き、燐は降魔剣を手放してしまう。
「ああっ」
降魔剣が落下していくのは、志摩たちが落ちていった穴と同じ。
「リニュウ!」
降魔剣を取り戻さなければ。
「玲薇!」
「枠に収まって我慢するな。オレに似てるところをもう一度見せてみろ」
解き放て!
「!!!」
玲薇は降魔剣を握りしめ、顔を上げた。振り注ぐ無数の瓦礫に、下は幸いなことに岩場と海の更地。
しかし、このまま急降下してしまえばリニュウ自身も無傷とはいかない。大きな羽を羽ばたかせ、いくつかの瓦礫に当たりながらも船を目指す。
眩しい光に目をやられそうになるが、燐と雪男の姿を探し続ける。
「雪男!!」
「・・・!」
微かに聞こえた燐の声。彼の放つ青い炎。囁き続けるサタンの声。
「諦めろ。諦めれば楽になれる」
「俺は・・・諦めなかった人達に助けられた。俺だって・・・」
「燐!!!」
「!!!」
刃のない、柄だけの降魔剣を燐へ。燐が掴んだ瞬間、青い炎が降魔剣の刃へ変わった。
そして、燐はそれを雪男の左目に宿る忌まわしいサタンを消す為に貫く。
「ぎゃあああ!!!」
燐達から離れた距離にいる玲薇にも聞こえるサタンの悲鳴。きっと、燐はサタンに何か言われたかもしれない。
それは玲薇に知る由もない。
あとは、制御不能となったこの船艦がただ不上陸するだけだった。
おい、なんだ、まさかそんなガタがきた剣一本戻ってきたくらいで勝ったつもりか?
どうして、今まで俺は俺が怖かったんだろうな
「な、ん、だァ?俺は俺だ!消すことも逃げることもできねぇぞ!!判ってる。俺は俺を飼い慣らす」
ウソだろ。俺は、壊すだけが取り柄の弱い凶暴な人外のはずだ!!覚えておけ!
青い炎の降魔剣の刃。そのまま燐は、その刃を鞘におさめた。
「・・・ああ、覚えておく」
燐はふと、空にいる玲薇を見る。玲薇も、燐が見てる事に気がついた。
「「・・・・・・」」
でも、どちらもかける言葉が見つからなくて。燐に駆け寄ることも、お疲れ様と言うこともなんだか違うような気がしてしまった。
「・・・二人とも、大丈夫・・・!?」
少し離れてるから、それなりの声量。そして、やっぱり二人になってしまう。燐はハッとしたように、自分を確認し、雪男に視線を向け直す。
「俺は、大丈夫だ!雪男、大丈夫か!?」
気を失っていた雪男の身体を揺さぶると、ピクリと雪男の身体が反応した。
「!!よかった、無事か」
「・・・兄さんが、助けたの?」
「ん、まぁ・・・クロ達も、無事だといいけど。下は、炎の海だ」
先のやり取りのせいだろう。船はもうほとんど原形もなく、エンジン漏れのせいか、海も近くにも関わらず火が消えそうにもない。
「玲薇は?」
起き上がる雪男はボーッとしていた意識が戻りつつ、問いかけた。すると、燐が頭上を指す。
「上にいる」
「!」
雪男の顔を見た玲薇の表情が、パッと明るくなった。
「雪男!燐!」
「玲薇は降りなくていいよ、そこにいて」
「え!?」
「確かに、ここじゃあ、あぶねーからな」
「兄さん、髪が黒に戻ってるの、気づいてる?」
「えっまじ・・・」
「何がどうなったか知らないが」
「!」
雪男が再び、アルムマヘル銃を燐に向けた。
「え・・・え・・・?」
戸惑う玲薇に、燐は逃げる隙がない。
「この試作機は、今まで9発撃ってバッテリー残量は三分の二程度。この三分の二の威力を一発に凝縮して撃ったら、どうなると思う?」
「「!!!」」
銃弾が燐に貫き、燐は力が抜けたように瓦礫の中へ転がっていく。
「燐!」
「玲薇!!」
「!」
すぐに燐を助けようと行く玲薇に、雪男が制止した。彼女にも、アルムマヘル銃ではない、至って普通の銃を向けて。
「・・・雪男、何で・・・?」
「・・・決着、つけさせて」
本当の自分の力で。何も着飾らない、自分達で。自分の秘密にも、そして、玲薇の事にも。
だから、そこにいて。雪男の目は、本気だ。玲薇は、動けなかった。
「・・・リニュウ、少し離れよう・・・」
言葉が震えていた。でも、彼女の心の芯はブレてない。
《いいんだな》
「うん。でも、見える場所で」
《わかった》
見届けなくちゃ・・・。
「起きろ、時間がない」
雪男が瓦礫に埋まった燐を救出しながら声をかける。
「サタンがいつ戻るか判らない。いつもの怪力は、出せないか?」
「・・・あんま・・・力入んねぇ・・・」
「なら、よかった」
「??お前・・・なに?何なんだ!?」
「兄さんはこれで常人並。僕も、サタンが戻るまではほぼ常人。対等に戦える」
「・・・お前さぁ、いくらナメられたくないからって、まさかとは思うけど・・・パニクってんのか?冷静になれよ」
「・・・そのカン違いを正してやる・・・!!僕が冷静でいられた事なんて、一度もない。目がこうなってからは、ずっと死にたかった」
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