第一話 兄弟ゲンカ
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「・・・・・!!?な、なんだ、力、入んね・・・」
燐に駆け寄りたいが、志摩が玲薇の腕を掴み、離そうとしない。
「・・・志摩くん・・・」
「アカンアカンアカン」
しかし、この状態の玲薇に触れても大丈夫ということは、少なからず攻撃はないということだろう。
(燐・・・雪男・・・)
「・・・この銃は、イルミナティが開発した「アルムマヘル銃」っていって、聖水の源になるアルムマヘルの結晶から揮発する"黒い炎"を、
弾丸状にして射出する。志摩くんの使い魔、ヤマンタカと同じ能力だけど、こちらはその"源"の結晶だ。
ロクに使いこなせてない志摩くんのヤマンタカや、トリプルエックス濃度の聖水より、ずっと濃いはずだ。
聖水が効く兄さんには、効果覿面でしょ。ホラ、兄さん。早く本気出さないと、僕に殺されちゃうよ?」
倒れている燐のもとへ近付き、雪男は腰を低くする。
「雪男・・・お前、強いのか?」
「そうだよ」
言いながら、雪男は銃を燐の頭に突きつけた。彼は笑顔で答えて。
「やっと、気づいた?兄さんじゃ、玲薇を守れない」
雪男が召喚したライトニングの使い魔により、目的地がわかったライトニング一行はヘリの移動中にウィジャグローブが爆発した。
「ッ!?ぐあ!!」
「ライトニング!?」
「・・・イッタァ・・・」
火傷のような怪我をおったライトニングに、勝呂はすぐさま軽い手当てをする。
「ルーイン、どうした」
様子をみかね、オセオラが促す。
「・・・ぼくの使い魔がやられた。ちぇ、思ったより早かったな」
「なに!?」
ヘリを動かすパイロットの一人が、ライトニング達に声をかけた。
「前方に、不明の光源が!」
「かなり遠いな」
「目標着地点の方角です」
だが、その光は一瞬で消えた。その光はイルミナティが発動させたセラフィンパルスのものだろう。
彼らが着く前に、もう戦いは始まってしまっている。険しい表情の勝呂を見て、出雲が聞いた。
「アンタ・・・いざ、あの志摩のクズヤロウと奥村先生と・・・玲薇と戦闘になったら、どうするつもり?」
「!」
「あたしは戦うわ。仲間を泣かすやつは、容赦しない。玲薇はひっぱたいて、連れ戻す」
「イカツ・・・」
「は!?何よ!頼もしいって、言ってくれない!?」
「まぁ、風美夜連れるんは分かるけどな」
きっと、弟の雪男の方が心配でついて行っただけなんだと。生まれた理由がどうあれ、すでに仲間達は彼女を受け入れていたのだから。
だけど、志摩は違う。八百造からの話でスパイだとは聞いているが、志摩がどこまで望んでいるのか理解できない。
「俺は・・・ずっと考えてるけど、決心つかん」
「キャッシャ・・・イカツイくせに・・・」
「あァ!?何や華奢て!?俺が?」
「イイじゃん竜士〜。華奢って、上品で風流ってイミでしょ。クールジャパンじゃん」
ノリよく入ってくるライトニングに、上司という肩書きも意味なく勝呂はキッパリ断る。
「ややこしなるんで、入ってこんで下さい!簡単に割り切れたら、誰も苦労せん。俺は、家族や仲間と戦いたない!
せやけど、戦わなアカン時もあるんやろう」
そう、今の燐と雪男だって、本当は・・・。
燐に向けていた右手に持っていた雪男の銃が弾き飛ばされる。雪男が目を見開いた瞬間、青い炎が爆発した。
「ッ!!」
その衝撃で、雪男は瓦礫に突っ込むも、燐に首根っこを押さえられた。
「・・・誰が、誰より強いだ?フッ・・・へへ、ハハハハハ笑わせるな、泣き虫ガリ勉メガネ」
「・・・・・・」
離れている玲薇でもわかる。
(・・・燐が、燐じゃない・・・?)
「・・・へぇ、それが上っ面の剥がれた顔か。いいね、初めまして」
あれが、燐の本来の悪魔の姿。
悪魔の燐は右手に青い炎を一点に集中させている。
「・・・まァ、お前は死ぬがな」
「「「!!??」」」
だが、悪魔の燐が顔面を殴ったのは、燐自身の顔だ。燐の中で、悪魔の部分とそうでない部分の取っ組みが始まっているのだ。
「・・・何やってんだ、バカかッ!?フザケ・・・ダメだ!!」
燐が自身の暴走を止める為に、自分の顔を焼いている。
「ダメだ、弟だ!!・・・ゲホッ・・・っめだ、痛ッてぇぇ〜ちくしょお〜!!」
痛みと、想像以上の憎しみに困惑し、のたうち回っていた燐だったが、なんとか悪魔の自分を引きずり下ろす。
「よし、戻った!ア・・・アブナかった!!」
「チッ、様子見だったが、三発撃ちこんだくらいじゃ全然だな。降魔剣が破壊され、拘束が解けてパワーアップしてるってところか。
あとは、なんとかさっきの悪魔の方を引きずり出せれば・・・」
「・・・ビビッた・・・!あの銃はヤベー!!おまけに・・・近寄るとすぐ、ひっくり返される・・・どーすりゃ・・・。
こうなったら、奥の手だ。あまりやりたくはなかったが・・・仕方ねえ!!奥義!!メガネボム!!」
「「!」」
一体燐は何をやるのだろうと見ていたが、ただただ雪男の眼鏡だけを爆発させていた。だが、雪男はかまわずポケットから予備の眼鏡をかける。
「ボ、ボム!!」
再び壊すも、再びかけ直す。
「何本持ってんの!?」
「・・・・・・・・・」
顔を引きつらせ見守る玲薇は、このまま終わればいいと思うものの、そうにはならないようで。
「クソッ、こうなったら禁じ手だ。やりたくはなかっ」
「服を燃やしてパンイチにする気ならムダだ。仮に全裸にされても戦いに支障は来さない」
「スゲェな!」
燐の作戦は、雪男にはバレバレだ。
「ああ、もしかしてもう手がなくなった?」
「ぐっヌぬぬ、ちがわい!!」
だが、打つ手のない燐のワンパターンな攻撃は、もう雪男には通用しない。隙をついた雪男が、燐の悪魔の心臓に一撃いれる。
「まだ、自分のおかれてる状況が判らないの?・・・仕方ないな」
「!??!」
倒れている間に、雪男は姿を消している。
「雪男!??」
「バカな兄さんにも、判るように教えてあげるよ」
「そこか!」
燐がサタンの炎でコンテナを一部破壊すると、辺りはたちまちコールタールの群れが出来ていた。
「兄さん」
雪男の声はするのに、コンテナの積み荷のせいで姿が見えない。
「今、世界はイルミナティに支配されそうなんだ。ルシフェルはサタンを復活させて、世界を自分の理想通りに創り変えようとしてる。
僕は必ず、サタン復活に使われる。それは多分、玲薇もそうだ。彼女は血を使われて、僕はサタンが寄生したこの目で、
何かを見ることにはるはずだ。それを引金に、サタンは復活する」
「じゃあ、見なきゃいいだろ、俺と帰ろう!!」
「左目にサタンを抱えて?どこに?どうやって?いつまで?僕も、僕に関わる人間も、全てサタンに殺される。
結局、僕を殺すことになるだろう。そんな事になる前にやるべきだ。僕を殺せるのは兄さんだけ。そうすれば、玲薇は生きれるかもしれない。
そうじゃなければ、兄さんのせっかく出来た大切な居場所も友達も、全部消えてなくなってしまうかもしれないんだよ」
「何で隠れる?隠れるな・・・!」
「僕を殺すことは必要悪だ。世界を守るために」
「あぁあ〜〜〜ッ゙・・・!隠すな!!!とっとと出てこい!!!」
怒り任せで燐は青い炎でコンテナを爆発させるが、そのせいで燐の周りにはさらに大量の、辺りが真っ暗に成る程のコールタールに支配されてしまう。
「雪男!!どこだ!」
「ここだよ」
姿を見せた雪男は、アルムマヘル銃の引金を引いた。
「「「!!!」」」
その威力は、少し離れている玲薇たちにも被害を及ぼさせた。
「う、あ、あ!!?爆発!?」
志摩が咄嗟に子猫丸共ヤマンタカで身を守り、玲薇はその青い光のおかげでなんとか爆風を凌いでいる。
「アルムマヘル銃って、こんな火力あったん!?」
「・・・粉塵爆発」
子猫丸の言葉に、玲薇は納得した。
粉塵爆発は、空気中の粉体に燃料が伝播していくことで起こる。この場合、雪男はコンテナの積み荷にいたコールタールを利用したのだ。
「もう判ったよね・・・兄さんは、泣き虫ガリ勉メガネに勝てないんだって」
倒れて身動きが取れない燐の上に、雪男は足で踏みつける。
「負けるって、くやしいだろ?」
コイツ、強えぇ・・・ちくしょおォ
燐の中の、悪魔の囁きが止まらない。
本気を出せば俺が勝つ
雪男は家族も、助けも、何もいらないと。
「・・・ヒヒヒハハハハ!!そォオオだよ!!あ〜〜笑える。愛だ家族だ、弟はとっくにそんなもん捨ててんのに、気ィ遣って、バカみてェだ!」
再び、あの燐の姿が現れる。
「なァ?雪男」
(そんなこと、ない・・・)
玲薇は右手を胸元に寄せ、自分の不甲斐なさにも腹を立たせながらギュッと握り拳をつくっていた。
雪男がくれたあの愛情は、本物だ。最後に向けてくれた笑顔だって、全ての覚悟の上で雪男は戦っている。
雪男だって、好きで自分を犠牲にしていない。燐のこと、自分のことを誰よりも心配しているからだ。
自分が選ぶべき相手は、本当は・・・。
「今まで手ェぬいててごめんな。これからはちゃーんと、見せてやるからさ」
青い炎を燃え上がらせた燐に、腰を落とした雪男が立つ間もなく足をつかまれる。
「本当の、強さってのを、なぁ!!?」
雪男に向けられる痛ましい衝動。だが、バチバチっと、何かに弾ける衝動に気がついた燐。
「・・・フン、これがサタンの加護ってやつか?」
玲薇の青い光と似たような能力だ。
「・・・何かに守ってもらって、イキがってんじゃねーぞ、メガネ!!!」
耳元で響く爆音にも近い声量で、雪男のメガネのレンズが割れた。続けざまに、燐は雪男に容赦なく暴力をふるいだす。
「ゴチャゴチャゴチャゴチャ、頑張って小細工しても、結局、お前は俺に、勝てねぇんだよ!」
体中が震える。怖くて、足を踏み出せない。こんなの、燐じゃない・・・。燐は・・・。
「あ、アカン!先生が・・・」
駆け寄ろうとする子猫丸を、志摩が青ざめた顔で必死に止める。
「シィ〜!邪魔したら殺される!アレ、ほんまに奥村くんなん??」
横にいる玲薇を見れば、体が震え、涙を流していた。もう、彼女でも二人を止められないだろう。
いや、あの中にいれるのは無謀だ。どうすることも出来ぬまま、志摩の無線に通話が入った。
「志摩」
「ヒエ」
「奥村雪男を救出しろ、絶対に殺させるな」
「「「!!!」」」
その声は無線とともに、そして、彼らの仲間すでに三人の後ろに立っていた。
燐に駆け寄りたいが、志摩が玲薇の腕を掴み、離そうとしない。
「・・・志摩くん・・・」
「アカンアカンアカン」
しかし、この状態の玲薇に触れても大丈夫ということは、少なからず攻撃はないということだろう。
(燐・・・雪男・・・)
「・・・この銃は、イルミナティが開発した「アルムマヘル銃」っていって、聖水の源になるアルムマヘルの結晶から揮発する"黒い炎"を、
弾丸状にして射出する。志摩くんの使い魔、ヤマンタカと同じ能力だけど、こちらはその"源"の結晶だ。
ロクに使いこなせてない志摩くんのヤマンタカや、トリプルエックス濃度の聖水より、ずっと濃いはずだ。
聖水が効く兄さんには、効果覿面でしょ。ホラ、兄さん。早く本気出さないと、僕に殺されちゃうよ?」
倒れている燐のもとへ近付き、雪男は腰を低くする。
「雪男・・・お前、強いのか?」
「そうだよ」
言いながら、雪男は銃を燐の頭に突きつけた。彼は笑顔で答えて。
「やっと、気づいた?兄さんじゃ、玲薇を守れない」
雪男が召喚したライトニングの使い魔により、目的地がわかったライトニング一行はヘリの移動中にウィジャグローブが爆発した。
「ッ!?ぐあ!!」
「ライトニング!?」
「・・・イッタァ・・・」
火傷のような怪我をおったライトニングに、勝呂はすぐさま軽い手当てをする。
「ルーイン、どうした」
様子をみかね、オセオラが促す。
「・・・ぼくの使い魔がやられた。ちぇ、思ったより早かったな」
「なに!?」
ヘリを動かすパイロットの一人が、ライトニング達に声をかけた。
「前方に、不明の光源が!」
「かなり遠いな」
「目標着地点の方角です」
だが、その光は一瞬で消えた。その光はイルミナティが発動させたセラフィンパルスのものだろう。
彼らが着く前に、もう戦いは始まってしまっている。険しい表情の勝呂を見て、出雲が聞いた。
「アンタ・・・いざ、あの志摩のクズヤロウと奥村先生と・・・玲薇と戦闘になったら、どうするつもり?」
「!」
「あたしは戦うわ。仲間を泣かすやつは、容赦しない。玲薇はひっぱたいて、連れ戻す」
「イカツ・・・」
「は!?何よ!頼もしいって、言ってくれない!?」
「まぁ、風美夜連れるんは分かるけどな」
きっと、弟の雪男の方が心配でついて行っただけなんだと。生まれた理由がどうあれ、すでに仲間達は彼女を受け入れていたのだから。
だけど、志摩は違う。八百造からの話でスパイだとは聞いているが、志摩がどこまで望んでいるのか理解できない。
「俺は・・・ずっと考えてるけど、決心つかん」
「キャッシャ・・・イカツイくせに・・・」
「あァ!?何や華奢て!?俺が?」
「イイじゃん竜士〜。華奢って、上品で風流ってイミでしょ。クールジャパンじゃん」
ノリよく入ってくるライトニングに、上司という肩書きも意味なく勝呂はキッパリ断る。
「ややこしなるんで、入ってこんで下さい!簡単に割り切れたら、誰も苦労せん。俺は、家族や仲間と戦いたない!
せやけど、戦わなアカン時もあるんやろう」
そう、今の燐と雪男だって、本当は・・・。
燐に向けていた右手に持っていた雪男の銃が弾き飛ばされる。雪男が目を見開いた瞬間、青い炎が爆発した。
「ッ!!」
その衝撃で、雪男は瓦礫に突っ込むも、燐に首根っこを押さえられた。
「・・・誰が、誰より強いだ?フッ・・・へへ、ハハハハハ笑わせるな、泣き虫ガリ勉メガネ」
「・・・・・・」
離れている玲薇でもわかる。
(・・・燐が、燐じゃない・・・?)
「・・・へぇ、それが上っ面の剥がれた顔か。いいね、初めまして」
あれが、燐の本来の悪魔の姿。
悪魔の燐は右手に青い炎を一点に集中させている。
「・・・まァ、お前は死ぬがな」
「「「!!??」」」
だが、悪魔の燐が顔面を殴ったのは、燐自身の顔だ。燐の中で、悪魔の部分とそうでない部分の取っ組みが始まっているのだ。
「・・・何やってんだ、バカかッ!?フザケ・・・ダメだ!!」
燐が自身の暴走を止める為に、自分の顔を焼いている。
「ダメだ、弟だ!!・・・ゲホッ・・・っめだ、痛ッてぇぇ〜ちくしょお〜!!」
痛みと、想像以上の憎しみに困惑し、のたうち回っていた燐だったが、なんとか悪魔の自分を引きずり下ろす。
「よし、戻った!ア・・・アブナかった!!」
「チッ、様子見だったが、三発撃ちこんだくらいじゃ全然だな。降魔剣が破壊され、拘束が解けてパワーアップしてるってところか。
あとは、なんとかさっきの悪魔の方を引きずり出せれば・・・」
「・・・ビビッた・・・!あの銃はヤベー!!おまけに・・・近寄るとすぐ、ひっくり返される・・・どーすりゃ・・・。
こうなったら、奥の手だ。あまりやりたくはなかったが・・・仕方ねえ!!奥義!!メガネボム!!」
「「!」」
一体燐は何をやるのだろうと見ていたが、ただただ雪男の眼鏡だけを爆発させていた。だが、雪男はかまわずポケットから予備の眼鏡をかける。
「ボ、ボム!!」
再び壊すも、再びかけ直す。
「何本持ってんの!?」
「・・・・・・・・・」
顔を引きつらせ見守る玲薇は、このまま終わればいいと思うものの、そうにはならないようで。
「クソッ、こうなったら禁じ手だ。やりたくはなかっ」
「服を燃やしてパンイチにする気ならムダだ。仮に全裸にされても戦いに支障は来さない」
「スゲェな!」
燐の作戦は、雪男にはバレバレだ。
「ああ、もしかしてもう手がなくなった?」
「ぐっヌぬぬ、ちがわい!!」
だが、打つ手のない燐のワンパターンな攻撃は、もう雪男には通用しない。隙をついた雪男が、燐の悪魔の心臓に一撃いれる。
「まだ、自分のおかれてる状況が判らないの?・・・仕方ないな」
「!??!」
倒れている間に、雪男は姿を消している。
「雪男!??」
「バカな兄さんにも、判るように教えてあげるよ」
「そこか!」
燐がサタンの炎でコンテナを一部破壊すると、辺りはたちまちコールタールの群れが出来ていた。
「兄さん」
雪男の声はするのに、コンテナの積み荷のせいで姿が見えない。
「今、世界はイルミナティに支配されそうなんだ。ルシフェルはサタンを復活させて、世界を自分の理想通りに創り変えようとしてる。
僕は必ず、サタン復活に使われる。それは多分、玲薇もそうだ。彼女は血を使われて、僕はサタンが寄生したこの目で、
何かを見ることにはるはずだ。それを引金に、サタンは復活する」
「じゃあ、見なきゃいいだろ、俺と帰ろう!!」
「左目にサタンを抱えて?どこに?どうやって?いつまで?僕も、僕に関わる人間も、全てサタンに殺される。
結局、僕を殺すことになるだろう。そんな事になる前にやるべきだ。僕を殺せるのは兄さんだけ。そうすれば、玲薇は生きれるかもしれない。
そうじゃなければ、兄さんのせっかく出来た大切な居場所も友達も、全部消えてなくなってしまうかもしれないんだよ」
「何で隠れる?隠れるな・・・!」
「僕を殺すことは必要悪だ。世界を守るために」
「あぁあ〜〜〜ッ゙・・・!隠すな!!!とっとと出てこい!!!」
怒り任せで燐は青い炎でコンテナを爆発させるが、そのせいで燐の周りにはさらに大量の、辺りが真っ暗に成る程のコールタールに支配されてしまう。
「雪男!!どこだ!」
「ここだよ」
姿を見せた雪男は、アルムマヘル銃の引金を引いた。
「「「!!!」」」
その威力は、少し離れている玲薇たちにも被害を及ぼさせた。
「う、あ、あ!!?爆発!?」
志摩が咄嗟に子猫丸共ヤマンタカで身を守り、玲薇はその青い光のおかげでなんとか爆風を凌いでいる。
「アルムマヘル銃って、こんな火力あったん!?」
「・・・粉塵爆発」
子猫丸の言葉に、玲薇は納得した。
粉塵爆発は、空気中の粉体に燃料が伝播していくことで起こる。この場合、雪男はコンテナの積み荷にいたコールタールを利用したのだ。
「もう判ったよね・・・兄さんは、泣き虫ガリ勉メガネに勝てないんだって」
倒れて身動きが取れない燐の上に、雪男は足で踏みつける。
「負けるって、くやしいだろ?」
コイツ、強えぇ・・・ちくしょおォ
燐の中の、悪魔の囁きが止まらない。
本気を出せば俺が勝つ
雪男は家族も、助けも、何もいらないと。
「・・・ヒヒヒハハハハ!!そォオオだよ!!あ〜〜笑える。愛だ家族だ、弟はとっくにそんなもん捨ててんのに、気ィ遣って、バカみてェだ!」
再び、あの燐の姿が現れる。
「なァ?雪男」
(そんなこと、ない・・・)
玲薇は右手を胸元に寄せ、自分の不甲斐なさにも腹を立たせながらギュッと握り拳をつくっていた。
雪男がくれたあの愛情は、本物だ。最後に向けてくれた笑顔だって、全ての覚悟の上で雪男は戦っている。
雪男だって、好きで自分を犠牲にしていない。燐のこと、自分のことを誰よりも心配しているからだ。
自分が選ぶべき相手は、本当は・・・。
「今まで手ェぬいててごめんな。これからはちゃーんと、見せてやるからさ」
青い炎を燃え上がらせた燐に、腰を落とした雪男が立つ間もなく足をつかまれる。
「本当の、強さってのを、なぁ!!?」
雪男に向けられる痛ましい衝動。だが、バチバチっと、何かに弾ける衝動に気がついた燐。
「・・・フン、これがサタンの加護ってやつか?」
玲薇の青い光と似たような能力だ。
「・・・何かに守ってもらって、イキがってんじゃねーぞ、メガネ!!!」
耳元で響く爆音にも近い声量で、雪男のメガネのレンズが割れた。続けざまに、燐は雪男に容赦なく暴力をふるいだす。
「ゴチャゴチャゴチャゴチャ、頑張って小細工しても、結局、お前は俺に、勝てねぇんだよ!」
体中が震える。怖くて、足を踏み出せない。こんなの、燐じゃない・・・。燐は・・・。
「あ、アカン!先生が・・・」
駆け寄ろうとする子猫丸を、志摩が青ざめた顔で必死に止める。
「シィ〜!邪魔したら殺される!アレ、ほんまに奥村くんなん??」
横にいる玲薇を見れば、体が震え、涙を流していた。もう、彼女でも二人を止められないだろう。
いや、あの中にいれるのは無謀だ。どうすることも出来ぬまま、志摩の無線に通話が入った。
「志摩」
「ヒエ」
「奥村雪男を救出しろ、絶対に殺させるな」
「「「!!!」」」
その声は無線とともに、そして、彼らの仲間すでに三人の後ろに立っていた。