第二話 本音
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憑依体。サタンが復活するべき材料が、揃ってしまっている。
「・・・それが本当なら、僕はここにいるべきじゃありません」
兄の燐以外にも憑依体があるとすれば、また戦いのリスクが増えるだけ。
「ヴァチカン最深部に監禁するか、殺すべきだ。僕がイルミナティに呼ばれた理由は恐らく、ゲヘナにいるサタンに、憑依体の在り処を教えるため。
「僕」「憑依体」それに「エリクサー」も揃ってしまったら、最悪の事態になる・・・!!」
「落ちついてよ。仮に君を殺したり最深部に監禁しても、どーせ君のいる所が戦場になるし、
余計に風美夜玲薇の血も重宝されるだろうしね」
「そ・・・それは・・・」
「彼女も一緒に、監禁するかい?まぁ、そんな事してもサタン復活のリスクも0にならないからムダ」
言われて改めて気付く。そうだ、たとえ一人で解決したところで別の方向で危うくなるだけ。
悪魔の血は出雲のように神通力は代々薄くなると言われるけど、大人になった直属の玲薇は、判らない。
「ぼかぁムダは嫌いだ。コレは返しておくよ」
「!?」
渡された箱の中は、アルムマヘル銃だ。
「バッテリーらしきものも見つかったから、使ってくれ。今日はもう休んで、明日からは働いてもらう」
「え・・・ちょっと待って下さい!僕の処遇は・・・今までと同じというわけには・・・」
「そんなに罰されたいの?なんで?」
呆れ半分のライトニングに、疑問に、うまい返しがわからなくなる。
「君のいう通り、今は緊急事態だ。呑気に君を罰しているヒマはないし、データを見るに、君は昇級試験を受けてないだけで、
上級相当の実力者だ。使える。ぼかぁ使えるものは使う。仮に悪魔だろうが罪人だろうがね」
ライトニングを見る雪男の表情は、何か迷いがなくなった、吹っ切れた表情だ。
頼ってくれる人が他にいる。
「あ・・・ありがとうございます・・・!!」
自分はまだ、ここにいていいんだと。ライトニングに深々と頭を下げ、雪男は二人のいるテントへ戻って行った。
「・・・・・・・・」
テントの中に入るのに、思わず雪男は思い留まる。"待ってて"と言ってしまった以上、戻らないとか。
「あ・・・」
中に入るなり、声が漏れた。玲薇も相当疲れていたのだろう。兄の普段とは異なるキャンプ用のベッドにも関わらず無理矢理入っていた。
「・・・・・・・・」
起こすのにも躊躇うこの状況。けど、二人から聞こえる小さな寝息に、顔が綻ぶのが判る。
「寝よ」
ーーーーー
燐のベッドで一緒に寝ていた玲薇は、モゾモゾ動き出す。アクビをしながら目を開ければ、燐がいる。
安堵するも、ハッと、顔を雪男の方へ向けた。
「「・・・・・・・・」」
勢いの余りお互い目が合い驚くも、気恥ずかしくなった玲薇は布団を被った。
(ど、どうしよ・・・)
心臓はバクバク煩く、しかも布団の中は自分のだけじゃなく、燐の匂いもする。雪男は既に起き上がり、寝具を整えている所だった。
「・・・外に行ってるよ」
かけられた声。返事をする間もなく、彼が外に出る気配がした後でもう一度顔を出す。
「・・・雪男・・・」
上半身を起こす玲薇。眠気に耐えられなくなり、燐の隣で寝たものの起きる気配がない。
気絶直後の睡眠状態の二人の着替えを手伝ってくれたのは勝呂達だ。ここは寒い。雪も積もっていた場所で、マフラーも手袋も支給されたのだ。
「ん・・・」
燐は、何度かモゾモゾ寝返りしようと身体は動き初めていた。寝息はあるから、そこまで心配することではないだろう。
「ンがッ」
詰まった寝息に、ボケッとした燐の表情が動く。
「・・・・・・・・・・」
「ッ・・・・・」
「・・・玲薇・・・?」
「・・・り、ん・・・」
「おれ・・・」
「う、わぁああ〜〜」
やっと起きてくれた燐。溜まっていた感情が一気に溢れ出す。
「玲薇」
急に泣き出す彼女に、何が何だかわからず慌てふためく燐。触れていいのか戸惑う。オロオロして見ると、玲薇は同じ布団に足を入れたまま。
ふと脳裏によぎる雪男の言葉。
『玲薇は、兄さんだよ』
ギシリと動くベッドに、燐は玲薇を抱きとめた。
「急に泣くなよ」
「う、うっバカっ、だって、だって・・・」
起きなかったらどうしようと、ずっと怖かった。ベッドに無理矢理入った瞬間も、起きる気配はなくて。
「大丈夫だって、なっ!」
いつもの、ニカッと笑ってくれる、大好きな笑顔。
「うん・・・!」
ごめんなさいって言葉を言おうとしたけど、出せなくて。ただ、抱きとめてくれることでそんなの必要ない。
「ははっ、玲薇の匂いだ」
「バカぁ」
「ハッ、雪男は!?」
「うー雪男は外〜」
「じゃあ、いいか!」
「よくない〜皆心配してるよ」
「皆もいるのか!」
「いるよ」
玲薇が落ち着いたところで、二人で外に出る。
「白湯や、あったまるで」
「ありがと」
ちょうど勝呂が、出雲に渡しているところだ。いや、それより何故か自分らのテントの前で、皆が集まっていてくれた。
「志摩」
「へぇ、コレもええんですけど・・・カロリーが欲しい・・・。昨日からコキ使われて電池切れや〜〜」
「炊き出しまでの辛抱や、志摩さん」
「あ」
出雲が気付き、寒さで震える身体をさすりながら、手を軽く振ってくれた。
「オハヨ」
「奥村くん、大丈夫なん!?」
「お早う、奥村、風美夜」
「みんな、いる。わわわ・・・うわーッなつかしいぞぉー!!生きてたかーッよかった!!」
「あはは!なんとか生きとったよ」
すかさず子猫丸の頭をジョリジョリ撫でまくる燐に、玲薇は少し放心状態。
「10年ぶりの再会みたいな勢いやな」
クロも嬉しそうに、燐の肩にひょっこり乗っかった。
「クロ!ありがとな」
「朝からごちそうさま」
出雲と勝呂の間に座ろうとした玲薇に、表情が崩れない出雲に突っ込まれる。ギクッとする玲薇に、勝呂が続けた。
「そないイジワル言うなや」
「き、き、きこえてたの・・・?」
「うん」
「ええやん、周知の仲なんやから」
「志摩くんには言われたくない」
「ええ〜」
「そうだ、雪男知らねーか」
皆の視線は、少し高台になってる先の方。燐は玲薇の方を見る。彼女は座ったまま、行ってこいってことだろう。
「朝飯もろてくるわ」
「あ、私も行く」
「ええのに」
彼には言わなくては。
「勝呂くん、いろいろありがとう。また、色々頼っちゃうかもしれないし、困らせるかもしれないけど、
正体を知っても何も言わないでいてくれた。ありがとう」
勝呂は照れくさそうに、だけど、笑って言ってくれた。
「仲間やけん、いつでも俺らを勝手に頼れ」
「うん!」
「あー、せやけど、神木と子猫には話とーあるで」
「大丈夫」
「雪男」
「兄さん」
「一緒に、過去行こう」
燐が雪男に見せたのは、メフィストから貰った"神隠しの鍵"。
「親父も母ちゃんも失敗してた。俺なんか、お前の千倍は失敗してるけど・・・何とかこう・・・取り返せないかって生きてて、
え〜〜っと、とにかく行けば判るから!!」
「・・・ありがとう、兄さん。僕は行かない」
キッパリ断る雪男に、燐は驚愕する。あんなに知りたがっていたのは雪男の方なのに。
「なんで!!おまえ、なんでなんだ!!え、なんで??」
「過去を知れば・・・頼らなければ、正しければ、力があれば、苦しみは終わると思ってたけど、違った。
僕を苦しめてるのも失敗を許さないのも、僕だ。僕は、僕を許したい。だから行かない」
「・・・そっか、わかった」
「・・・兄さんは、玲薇がどうだったか、知ったんだよね」
親もいない、生まれは悪魔達の戯言から始まった研究の一部。吐き気のするあの光景、忘れてはいけないこと。
「・・・あぁ、でも、アイツはアイツだ。アイツには、俺らがいる!俺がいる!」
「兄さんじゃ、心配だけど」
「ええ!??」
口では強く言ってくるけれど、雪男の表情はいつになく明るく見える。
「・・・神父さんと母さんは・・・どんなだった・・・?」
「・・・カッコよかったよ。俺たちを守って死んだ。兄弟仲良くねってさ」
「そうか・・・」
「うん」
「おーい!」
勝呂の呼びかけに、二人は振り返る。
「朝メシ、もろてきたでー!」
「おー!戻ろう、ハラ減った」
「兄さん!」
「あ?」
「・・・何度も頭ブチ抜いてごめん・・・」
「ああ、俺も殴って悪かったな」
「・・・それが本当なら、僕はここにいるべきじゃありません」
兄の燐以外にも憑依体があるとすれば、また戦いのリスクが増えるだけ。
「ヴァチカン最深部に監禁するか、殺すべきだ。僕がイルミナティに呼ばれた理由は恐らく、ゲヘナにいるサタンに、憑依体の在り処を教えるため。
「僕」「憑依体」それに「エリクサー」も揃ってしまったら、最悪の事態になる・・・!!」
「落ちついてよ。仮に君を殺したり最深部に監禁しても、どーせ君のいる所が戦場になるし、
余計に風美夜玲薇の血も重宝されるだろうしね」
「そ・・・それは・・・」
「彼女も一緒に、監禁するかい?まぁ、そんな事してもサタン復活のリスクも0にならないからムダ」
言われて改めて気付く。そうだ、たとえ一人で解決したところで別の方向で危うくなるだけ。
悪魔の血は出雲のように神通力は代々薄くなると言われるけど、大人になった直属の玲薇は、判らない。
「ぼかぁムダは嫌いだ。コレは返しておくよ」
「!?」
渡された箱の中は、アルムマヘル銃だ。
「バッテリーらしきものも見つかったから、使ってくれ。今日はもう休んで、明日からは働いてもらう」
「え・・・ちょっと待って下さい!僕の処遇は・・・今までと同じというわけには・・・」
「そんなに罰されたいの?なんで?」
呆れ半分のライトニングに、疑問に、うまい返しがわからなくなる。
「君のいう通り、今は緊急事態だ。呑気に君を罰しているヒマはないし、データを見るに、君は昇級試験を受けてないだけで、
上級相当の実力者だ。使える。ぼかぁ使えるものは使う。仮に悪魔だろうが罪人だろうがね」
ライトニングを見る雪男の表情は、何か迷いがなくなった、吹っ切れた表情だ。
頼ってくれる人が他にいる。
「あ・・・ありがとうございます・・・!!」
自分はまだ、ここにいていいんだと。ライトニングに深々と頭を下げ、雪男は二人のいるテントへ戻って行った。
「・・・・・・・・」
テントの中に入るのに、思わず雪男は思い留まる。"待ってて"と言ってしまった以上、戻らないとか。
「あ・・・」
中に入るなり、声が漏れた。玲薇も相当疲れていたのだろう。兄の普段とは異なるキャンプ用のベッドにも関わらず無理矢理入っていた。
「・・・・・・・・」
起こすのにも躊躇うこの状況。けど、二人から聞こえる小さな寝息に、顔が綻ぶのが判る。
「寝よ」
ーーーーー
燐のベッドで一緒に寝ていた玲薇は、モゾモゾ動き出す。アクビをしながら目を開ければ、燐がいる。
安堵するも、ハッと、顔を雪男の方へ向けた。
「「・・・・・・・・」」
勢いの余りお互い目が合い驚くも、気恥ずかしくなった玲薇は布団を被った。
(ど、どうしよ・・・)
心臓はバクバク煩く、しかも布団の中は自分のだけじゃなく、燐の匂いもする。雪男は既に起き上がり、寝具を整えている所だった。
「・・・外に行ってるよ」
かけられた声。返事をする間もなく、彼が外に出る気配がした後でもう一度顔を出す。
「・・・雪男・・・」
上半身を起こす玲薇。眠気に耐えられなくなり、燐の隣で寝たものの起きる気配がない。
気絶直後の睡眠状態の二人の着替えを手伝ってくれたのは勝呂達だ。ここは寒い。雪も積もっていた場所で、マフラーも手袋も支給されたのだ。
「ん・・・」
燐は、何度かモゾモゾ寝返りしようと身体は動き初めていた。寝息はあるから、そこまで心配することではないだろう。
「ンがッ」
詰まった寝息に、ボケッとした燐の表情が動く。
「・・・・・・・・・・」
「ッ・・・・・」
「・・・玲薇・・・?」
「・・・り、ん・・・」
「おれ・・・」
「う、わぁああ〜〜」
やっと起きてくれた燐。溜まっていた感情が一気に溢れ出す。
「玲薇」
急に泣き出す彼女に、何が何だかわからず慌てふためく燐。触れていいのか戸惑う。オロオロして見ると、玲薇は同じ布団に足を入れたまま。
ふと脳裏によぎる雪男の言葉。
『玲薇は、兄さんだよ』
ギシリと動くベッドに、燐は玲薇を抱きとめた。
「急に泣くなよ」
「う、うっバカっ、だって、だって・・・」
起きなかったらどうしようと、ずっと怖かった。ベッドに無理矢理入った瞬間も、起きる気配はなくて。
「大丈夫だって、なっ!」
いつもの、ニカッと笑ってくれる、大好きな笑顔。
「うん・・・!」
ごめんなさいって言葉を言おうとしたけど、出せなくて。ただ、抱きとめてくれることでそんなの必要ない。
「ははっ、玲薇の匂いだ」
「バカぁ」
「ハッ、雪男は!?」
「うー雪男は外〜」
「じゃあ、いいか!」
「よくない〜皆心配してるよ」
「皆もいるのか!」
「いるよ」
玲薇が落ち着いたところで、二人で外に出る。
「白湯や、あったまるで」
「ありがと」
ちょうど勝呂が、出雲に渡しているところだ。いや、それより何故か自分らのテントの前で、皆が集まっていてくれた。
「志摩」
「へぇ、コレもええんですけど・・・カロリーが欲しい・・・。昨日からコキ使われて電池切れや〜〜」
「炊き出しまでの辛抱や、志摩さん」
「あ」
出雲が気付き、寒さで震える身体をさすりながら、手を軽く振ってくれた。
「オハヨ」
「奥村くん、大丈夫なん!?」
「お早う、奥村、風美夜」
「みんな、いる。わわわ・・・うわーッなつかしいぞぉー!!生きてたかーッよかった!!」
「あはは!なんとか生きとったよ」
すかさず子猫丸の頭をジョリジョリ撫でまくる燐に、玲薇は少し放心状態。
「10年ぶりの再会みたいな勢いやな」
クロも嬉しそうに、燐の肩にひょっこり乗っかった。
「クロ!ありがとな」
「朝からごちそうさま」
出雲と勝呂の間に座ろうとした玲薇に、表情が崩れない出雲に突っ込まれる。ギクッとする玲薇に、勝呂が続けた。
「そないイジワル言うなや」
「き、き、きこえてたの・・・?」
「うん」
「ええやん、周知の仲なんやから」
「志摩くんには言われたくない」
「ええ〜」
「そうだ、雪男知らねーか」
皆の視線は、少し高台になってる先の方。燐は玲薇の方を見る。彼女は座ったまま、行ってこいってことだろう。
「朝飯もろてくるわ」
「あ、私も行く」
「ええのに」
彼には言わなくては。
「勝呂くん、いろいろありがとう。また、色々頼っちゃうかもしれないし、困らせるかもしれないけど、
正体を知っても何も言わないでいてくれた。ありがとう」
勝呂は照れくさそうに、だけど、笑って言ってくれた。
「仲間やけん、いつでも俺らを勝手に頼れ」
「うん!」
「あー、せやけど、神木と子猫には話とーあるで」
「大丈夫」
「雪男」
「兄さん」
「一緒に、過去行こう」
燐が雪男に見せたのは、メフィストから貰った"神隠しの鍵"。
「親父も母ちゃんも失敗してた。俺なんか、お前の千倍は失敗してるけど・・・何とかこう・・・取り返せないかって生きてて、
え〜〜っと、とにかく行けば判るから!!」
「・・・ありがとう、兄さん。僕は行かない」
キッパリ断る雪男に、燐は驚愕する。あんなに知りたがっていたのは雪男の方なのに。
「なんで!!おまえ、なんでなんだ!!え、なんで??」
「過去を知れば・・・頼らなければ、正しければ、力があれば、苦しみは終わると思ってたけど、違った。
僕を苦しめてるのも失敗を許さないのも、僕だ。僕は、僕を許したい。だから行かない」
「・・・そっか、わかった」
「・・・兄さんは、玲薇がどうだったか、知ったんだよね」
親もいない、生まれは悪魔達の戯言から始まった研究の一部。吐き気のするあの光景、忘れてはいけないこと。
「・・・あぁ、でも、アイツはアイツだ。アイツには、俺らがいる!俺がいる!」
「兄さんじゃ、心配だけど」
「ええ!??」
口では強く言ってくるけれど、雪男の表情はいつになく明るく見える。
「・・・神父さんと母さんは・・・どんなだった・・・?」
「・・・カッコよかったよ。俺たちを守って死んだ。兄弟仲良くねってさ」
「そうか・・・」
「うん」
「おーい!」
勝呂の呼びかけに、二人は振り返る。
「朝メシ、もろてきたでー!」
「おー!戻ろう、ハラ減った」
「兄さん!」
「あ?」
「・・・何度も頭ブチ抜いてごめん・・・」
「ああ、俺も殴って悪かったな」