第一話 兄弟ゲンカ
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燐が過去を見ている間天庭にいるしえみは、ユニヒと呼ばれる、シェミハザの結晶に禱りを捧げる聖域、歴代賢聖の修練場にいた。
しえみ自身が強くなる為に。フェレス卿の創造物である"奔星の扉"を使う、中と外では時の流れが違うという。
そして、元はライトニングの使い魔であるヴァユとインドラを召喚した雪男は、船を破壊させつつ、追ってから玲薇と共に逃げていた。
そんな中、折れた降魔剣を持った子猫丸は、燐本人に返した方が言いと達磨に言われ、メフィストが鍵を使って燐がいる過去へ送ったつもりだが。
「総帥直々の命令だ!捜せ!!」
「この二人ならさっきここを通りすぎたぞ」
「追えーーッ!!」
緊迫してる雰囲気に、子猫丸は足踏みしていた。
「・・・ヒ・・・ヒィィィ!!なんでや〜!!なんで僕、イルミナティの本拠地っぽいところによりによって丸腰で・・・あんまりや、フェレス卿〜!!
ずっとヤバそな雰囲気やし、どないしょう・・・ほんまここに奥村くんおるん??」
ブルブル震える子猫丸の背後から、激しい足音が響いてくる。
「ヒッ!?」
その足音はドンッと、重たい音をたて立ち止まったのだ。
「うわぁあああ、すんません、どうかお命だけは」
「は・・・!子猫さん!?」
「志摩さん!」
ここに志摩がいるのはおかしいことではない。なにせ彼は二重スパイなのだから。場違いなのはそう、子猫丸の方なのだ。
「なんでこんなとこおんの!?」
志摩は目を丸くする。
「私服やん!?この冬買ったコートやん」
「僕かてこんなん不本意やぁ!奥村くんにこの剣渡すためにフェレス卿に送りこまれて」
「奥村くんもここおんの!?」
「・・・志摩さん、もし、そっちの用なかったら、捜すの手伝ってくれへん?」
身内の頼みでもあるが、志摩はキッパリ断る。
「ムリ。奥村先生と玲薇ちゃん監視せなアカンのに、見失ってもーて・・・もう行かな」
「そんな・・・ぼ、僕もついてくわ!ここおってもしゃあないし」
「えーッ、どうなっても知らんで!?」
先程からビーッビーッと鳴り響く警報が、この地下のマンホールにも響いていた。雪男に置いていかれまいと、必死に玲薇も後を追う。
イルミナティの本拠地に来て、自分らの秘密を知れた。奴等の目的も理解した。自分達がどうすればいいのかも。
『一緒に死のう』
雪男に言われ、自分が言ったことに後悔はない。この世界を繋げる為には必要なことだ。サタンを復活させない為に。
雪男に寄生してるサタンが、燐の身体に憑依する前に。玲薇の血を、彼に混ぜさせる前に。
破壊されていく船の中、マンホールの外に出た二人。
「・・・首尾は、上々だな」
「・・・・・・・・・」
誰もいない、外へと繋がっている船の甲板に。
「あとは」
「!」
雪男の後ろで、彼が何をしようとしてるのか見放すまいと、玲薇は必死になる。ここまで無理やりついてきた。
彼の望みも、理解しているつもりだ。世界の為に、兄の燐の為にこれしか本当に答えはないのだろうか。
雪男の表情は見えない。けど、声色は怖いほど楽しそうだ。彼は無造作に落ちていた鉄棒を拾って。
「"悪魔の甘言に耳を貸してはいけない"ってのは、玲薇も知ってるよね」
「うん・・・?」
玲薇を実験体にさせない、『一緒に死のう』と言ってくれたのは嬉しい。だけど、彼女を死なせる前に、
まず、自分だけがどうにかなれればいいと思っているのも本音だ。
悪魔に寄生された場合に行われる、一つの有効手段。
「・・・っ!」
サタンに憑依されていることが分かってる、雪男が今やろうとしていること。肉体に死ぬほどの激痛を与える"ショック療法"。
雪男はメガネをずらし、拾った鉄棒を直接左目に向けている。
「いや・・・あ・・・」
声が、声にならない。身体が小刻みに震えだす。そう、雪男はほんの、ほんの少し傷をつけるだけ。そうだよね。
"ショック療法"は、玲薇達も授業で習ってる。今度こそ、自分の能力で雪男を守りたい。
「・・・・・・大丈夫」
何ともない、ちゃんと見える右目の方で、玲薇に笑顔を見せた。だから近づくなと、もう片方の手には銃を持ち、彼女に向けたのだ。
近づこう、触れようとしたのに・・・。
(どうして・・・?)
[テ、メェエヒヒヒ・・・懲りねぇな〜〜?ムダだ、刺さる前にフッ飛ばす]
「なんでそんなに、肉体が欲しいんだ」
「・・・(雪男、サタンと話してるの・・・?)」
[ヒッヒヒ・・・テメェにお教えする必要性あるのか?]
「羨ましいのか?」
「あ?」
「(こいつは神経質で短慮だ・・・煽ってやれば・・・)人は持ってるのに、自分は持ってないから?」
[・・・クククヒヒハハハ!青い炎が効かねぇくらいでイキがってんじゃねぇ。テメェなんぞ瞬殺できるんだ。
"窓"がなくなりゃまた、世界中の人間を侵しまくってやる。いや、手道にいるな、ちょうどよさそうなのが、後ろに]
サタンの血を入れられている。
「(・・・だろうね、だから・・・)僕にはわかる。お前の気持ちが、痛いほど」
こんな、場違いな所で甲板のドアが開く。
「「・・・・・・・・・」」
二人の真横のドアから姿を現したのは、騎士團の制服を着て、青白いグラデーションの髪の色をし、悪魔の心臓を首から下げた燐だった。
「・・・・・・り、ん・・・・・?」
玲薇がたまらず、名前を呼ぶ。彼の息遣いは荒く、大量の涙を流している。
流れている鼻水もを啜りながら、燐は嬉しそうに二人の名前を呼んだ。
「・・・ゆ、雪男・・・玲薇。元気だったか、久しぶりだ。めちゃくちゃ会いたかったぞ」
今までの玲薇なら、喜んで駆け寄っていた。けど、今はそれをすることは出来なかった。
素直に喜べない、雪男自身の気持ちを知ってしまった今では。目が泳ぐ。挙動不審になる。玲薇はどうすればいいのかわからない。
「え、え・・・?」
「・・・まだ、5日も経ってないけど」
「そうなの!?」
「・・・正直、こんな早くに再会するとは想定外だったよ。あと、ツッコミ所が多すぎる」
「いやー・・・色々あってさ。あ!そうだ」
涙を拭いながら、燐は鍵を一つ取り出す。
「俺、過去見てきた」
その言葉を聞いて、頭が真っ白になった。
「一緒に、見に行こうぜ!」
「あっ・・・あっ・・・」
きっと燐は知っただろう。自分が、悪魔たちの研究から生まれた人間でもない、実験体だったってことを。
「「玲薇」」
一番知られたくなかった人に知られてしまっていた。声が掠れる、好きな人の顔を見たくない。こんな自分を見せたくない。
「いや・・・、私・・・」
「兄さんは来るな」
「っ・・・!」
一緒にいた場所が少し違っただけでも、こんなに変わってしまう。
「落ちついて、玲薇、大丈夫」
寄り添う雪男に対し、燐は動けないでいる。
「(何でだ・・・?)玲薇は玲薇だ、そこは変わらねぇ!」
「違う、違う・・・!」
「違くねえ!ルシフェルのやべー奴なんかの、イルミナティなんかの仲間になるのはダメだ!」
「・・・仲間になった覚えもないし、もうどうでもいいって言ってるだろ」
兄は何一つ彼女の気持ちも想いもわかっちゃいない。頭ごなしに否定してやるだけで納得できるほどの気持ちを、今の玲薇に余裕はない。
きっと、一番知られたくなくて、普通にしていてほしかった、一番身近で大事な人に。
一番欲しい言葉も言動も、そんなんじゃない。
「そうなの!?じゃあ、皆がいる場所に帰ろうぜ」
いつかそんな日はあると思っていたのに、なぜか、燐だけには知られて欲しくなかった。
玲薇は泣き声を殺しながら、雪男にしがみつく。だから雪男と一緒に自分の秘密を知れればよかった。
もし、自分が自分のこんな正体だったとしても、いつもみたいに雪男が理解してくれて、燐は馬鹿みたいに笑ってそばにいて欲しかった。
こんな重荷を、サタンの息子ってことだけで彼はじゅうぶん負担がかかっていたのに。
燐に好きだと伝えた。だけど、薄々気付いていた自分の正体が怖かった。それが明るみになった今、自分一人だけ逃げれた。
しえみに燐を渡したくはないのは本音。でも、必要とあればまたそれも違ってきていただろう。考えなんて、いくらでも変えられた。
大丈夫、大丈夫と言い続けてくれる燐。あの笑顔が大好きで、その言葉で安心してしまうから、彼を無理させてしまうのだ。
「ナメてるのか?」
雪男の表情を見て、燐はゾワリと一歩後ずさる。いつも営業スマイルで通していた雪男を、本気で怒らせた。
兄さんは何にも分かっちゃいない。
しえみ自身が強くなる為に。フェレス卿の創造物である"奔星の扉"を使う、中と外では時の流れが違うという。
そして、元はライトニングの使い魔であるヴァユとインドラを召喚した雪男は、船を破壊させつつ、追ってから玲薇と共に逃げていた。
そんな中、折れた降魔剣を持った子猫丸は、燐本人に返した方が言いと達磨に言われ、メフィストが鍵を使って燐がいる過去へ送ったつもりだが。
「総帥直々の命令だ!捜せ!!」
「この二人ならさっきここを通りすぎたぞ」
「追えーーッ!!」
緊迫してる雰囲気に、子猫丸は足踏みしていた。
「・・・ヒ・・・ヒィィィ!!なんでや〜!!なんで僕、イルミナティの本拠地っぽいところによりによって丸腰で・・・あんまりや、フェレス卿〜!!
ずっとヤバそな雰囲気やし、どないしょう・・・ほんまここに奥村くんおるん??」
ブルブル震える子猫丸の背後から、激しい足音が響いてくる。
「ヒッ!?」
その足音はドンッと、重たい音をたて立ち止まったのだ。
「うわぁあああ、すんません、どうかお命だけは」
「は・・・!子猫さん!?」
「志摩さん!」
ここに志摩がいるのはおかしいことではない。なにせ彼は二重スパイなのだから。場違いなのはそう、子猫丸の方なのだ。
「なんでこんなとこおんの!?」
志摩は目を丸くする。
「私服やん!?この冬買ったコートやん」
「僕かてこんなん不本意やぁ!奥村くんにこの剣渡すためにフェレス卿に送りこまれて」
「奥村くんもここおんの!?」
「・・・志摩さん、もし、そっちの用なかったら、捜すの手伝ってくれへん?」
身内の頼みでもあるが、志摩はキッパリ断る。
「ムリ。奥村先生と玲薇ちゃん監視せなアカンのに、見失ってもーて・・・もう行かな」
「そんな・・・ぼ、僕もついてくわ!ここおってもしゃあないし」
「えーッ、どうなっても知らんで!?」
先程からビーッビーッと鳴り響く警報が、この地下のマンホールにも響いていた。雪男に置いていかれまいと、必死に玲薇も後を追う。
イルミナティの本拠地に来て、自分らの秘密を知れた。奴等の目的も理解した。自分達がどうすればいいのかも。
『一緒に死のう』
雪男に言われ、自分が言ったことに後悔はない。この世界を繋げる為には必要なことだ。サタンを復活させない為に。
雪男に寄生してるサタンが、燐の身体に憑依する前に。玲薇の血を、彼に混ぜさせる前に。
破壊されていく船の中、マンホールの外に出た二人。
「・・・首尾は、上々だな」
「・・・・・・・・・」
誰もいない、外へと繋がっている船の甲板に。
「あとは」
「!」
雪男の後ろで、彼が何をしようとしてるのか見放すまいと、玲薇は必死になる。ここまで無理やりついてきた。
彼の望みも、理解しているつもりだ。世界の為に、兄の燐の為にこれしか本当に答えはないのだろうか。
雪男の表情は見えない。けど、声色は怖いほど楽しそうだ。彼は無造作に落ちていた鉄棒を拾って。
「"悪魔の甘言に耳を貸してはいけない"ってのは、玲薇も知ってるよね」
「うん・・・?」
玲薇を実験体にさせない、『一緒に死のう』と言ってくれたのは嬉しい。だけど、彼女を死なせる前に、
まず、自分だけがどうにかなれればいいと思っているのも本音だ。
悪魔に寄生された場合に行われる、一つの有効手段。
「・・・っ!」
サタンに憑依されていることが分かってる、雪男が今やろうとしていること。肉体に死ぬほどの激痛を与える"ショック療法"。
雪男はメガネをずらし、拾った鉄棒を直接左目に向けている。
「いや・・・あ・・・」
声が、声にならない。身体が小刻みに震えだす。そう、雪男はほんの、ほんの少し傷をつけるだけ。そうだよね。
"ショック療法"は、玲薇達も授業で習ってる。今度こそ、自分の能力で雪男を守りたい。
「・・・・・・大丈夫」
何ともない、ちゃんと見える右目の方で、玲薇に笑顔を見せた。だから近づくなと、もう片方の手には銃を持ち、彼女に向けたのだ。
近づこう、触れようとしたのに・・・。
(どうして・・・?)
[テ、メェエヒヒヒ・・・懲りねぇな〜〜?ムダだ、刺さる前にフッ飛ばす]
「なんでそんなに、肉体が欲しいんだ」
「・・・(雪男、サタンと話してるの・・・?)」
[ヒッヒヒ・・・テメェにお教えする必要性あるのか?]
「羨ましいのか?」
「あ?」
「(こいつは神経質で短慮だ・・・煽ってやれば・・・)人は持ってるのに、自分は持ってないから?」
[・・・クククヒヒハハハ!青い炎が効かねぇくらいでイキがってんじゃねぇ。テメェなんぞ瞬殺できるんだ。
"窓"がなくなりゃまた、世界中の人間を侵しまくってやる。いや、手道にいるな、ちょうどよさそうなのが、後ろに]
サタンの血を入れられている。
「(・・・だろうね、だから・・・)僕にはわかる。お前の気持ちが、痛いほど」
こんな、場違いな所で甲板のドアが開く。
「「・・・・・・・・・」」
二人の真横のドアから姿を現したのは、騎士團の制服を着て、青白いグラデーションの髪の色をし、悪魔の心臓を首から下げた燐だった。
「・・・・・・り、ん・・・・・?」
玲薇がたまらず、名前を呼ぶ。彼の息遣いは荒く、大量の涙を流している。
流れている鼻水もを啜りながら、燐は嬉しそうに二人の名前を呼んだ。
「・・・ゆ、雪男・・・玲薇。元気だったか、久しぶりだ。めちゃくちゃ会いたかったぞ」
今までの玲薇なら、喜んで駆け寄っていた。けど、今はそれをすることは出来なかった。
素直に喜べない、雪男自身の気持ちを知ってしまった今では。目が泳ぐ。挙動不審になる。玲薇はどうすればいいのかわからない。
「え、え・・・?」
「・・・まだ、5日も経ってないけど」
「そうなの!?」
「・・・正直、こんな早くに再会するとは想定外だったよ。あと、ツッコミ所が多すぎる」
「いやー・・・色々あってさ。あ!そうだ」
涙を拭いながら、燐は鍵を一つ取り出す。
「俺、過去見てきた」
その言葉を聞いて、頭が真っ白になった。
「一緒に、見に行こうぜ!」
「あっ・・・あっ・・・」
きっと燐は知っただろう。自分が、悪魔たちの研究から生まれた人間でもない、実験体だったってことを。
「「玲薇」」
一番知られたくなかった人に知られてしまっていた。声が掠れる、好きな人の顔を見たくない。こんな自分を見せたくない。
「いや・・・、私・・・」
「兄さんは来るな」
「っ・・・!」
一緒にいた場所が少し違っただけでも、こんなに変わってしまう。
「落ちついて、玲薇、大丈夫」
寄り添う雪男に対し、燐は動けないでいる。
「(何でだ・・・?)玲薇は玲薇だ、そこは変わらねぇ!」
「違う、違う・・・!」
「違くねえ!ルシフェルのやべー奴なんかの、イルミナティなんかの仲間になるのはダメだ!」
「・・・仲間になった覚えもないし、もうどうでもいいって言ってるだろ」
兄は何一つ彼女の気持ちも想いもわかっちゃいない。頭ごなしに否定してやるだけで納得できるほどの気持ちを、今の玲薇に余裕はない。
きっと、一番知られたくなくて、普通にしていてほしかった、一番身近で大事な人に。
一番欲しい言葉も言動も、そんなんじゃない。
「そうなの!?じゃあ、皆がいる場所に帰ろうぜ」
いつかそんな日はあると思っていたのに、なぜか、燐だけには知られて欲しくなかった。
玲薇は泣き声を殺しながら、雪男にしがみつく。だから雪男と一緒に自分の秘密を知れればよかった。
もし、自分が自分のこんな正体だったとしても、いつもみたいに雪男が理解してくれて、燐は馬鹿みたいに笑ってそばにいて欲しかった。
こんな重荷を、サタンの息子ってことだけで彼はじゅうぶん負担がかかっていたのに。
燐に好きだと伝えた。だけど、薄々気付いていた自分の正体が怖かった。それが明るみになった今、自分一人だけ逃げれた。
しえみに燐を渡したくはないのは本音。でも、必要とあればまたそれも違ってきていただろう。考えなんて、いくらでも変えられた。
大丈夫、大丈夫と言い続けてくれる燐。あの笑顔が大好きで、その言葉で安心してしまうから、彼を無理させてしまうのだ。
「ナメてるのか?」
雪男の表情を見て、燐はゾワリと一歩後ずさる。いつも営業スマイルで通していた雪男を、本気で怒らせた。
兄さんは何にも分かっちゃいない。
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