大好き

文化祭が終わり、11月に入った頃。轟が、お母さんから手紙の返事がきたと話してくれて内容を見させてもらった。
「・・・・・・・・」
もっと二人の関係を否定されると思っていた。でも、轟のお母さんの手紙は、優しい言葉で溢れていた。
「よかった・・・」
ホッと安心し、肩の力が抜ける。そんな彼女の様子を見て、轟が言った。
「だから言ったろ?大丈夫だって」
「うん」
子供の幸せを願わない両親なんて、きっといないとおもいたい。でも、信じきれないこともあるわけで。
「・・・エンデヴァーは?」
轟の父親であるNo.1プロヒーローエンデヴァー。他人から見る彼の言動と、父親の姿である彼の言動があまりに違いすぎて驚いた。

「言ってねえ。話す気もねえ」
エンデヴァーに至っては、轟はいつもこうだ。
「・・・焦凍・・・」
少し態度に出てしまったのだろう、呆れた表情をした##NAME1##を見て、眉間にシワを寄せる轟。
「知られて、##NAME1##に手出されても困る。何をするかわかんねぇから」
「・・・そこまでお父さんの事否定しなくても・・・。私のこと、いつかバレたらもっと焦凍が怒られちゃうんじゃ・・・」
ムスッとした轟は、ぐっと##NAME1##に顔を近付け距離を縮める。
「っ・・・!」
「##NAME1##はあいつの事知らないからそう言えるんだ。力の差も歴然としてる、俺はまだあいつに及ばない。
離されるのが、一番怖い。思い出したくない」

いまもハッキリ覚えてる。
顔の左に火傷を負わせたという理由で、母親は自分が物心つく頃には病院に隔離され。
自分は住む世界が違うのだと言い付けられ、兄妹と遊ぶことも許されなくて。人との接し方がわからなくて。
ずっと、一人ぼっちのような感覚で。だけど、そんな中見付けた、見付けられた大事な人。
もう壊れて欲しくない。なくなって欲しくない。自分はここにいていいんだという安心出来る場所を。

わかってる、話してくれたから。本当はわかってるんだよ、エンデヴァーにいままでされてきた仕打ち。
でも、どうしても、やっぱり他人の目としてつい問いかけてしまう。轟にとっては辛いことなのに。
お父さんだから、お父さんだからって。そんなエンデヴァーに認めて欲しい##NAME1##がいるから。
後回しにしない方がいいのではないかという不安があるから。

「ごめんなさい」
職場体験やら仮免など、何度もエンデヴァーの所に訪れていたりしてるから平気なんだと思ったけど。
根本的な気持ちは、すぐ変わらない。変えられない。##NAME1##にとって、どっちが大切だと問いかけられれば答えはみえてる。
轟だ。轟焦凍というたった一人の人間だ。

どうしていいのかわからなくなり、##NAME1##は手紙を轟に手渡す。
「あ・・・悪い・・・」
熱くなってしまった自分に反省する。ここに二人だけでよかった、轟自身の部屋で手紙を見せて正解だった。
手紙を受け取った轟は、罰が悪そうな表情で、母からの手紙を丁寧に机の上に戻し小さくため息をつく。
まだ自分達は学生だから、親の目が必要なのは何となくわかる。けど、##NAME1##にはもっと自分を頼って欲しい。
寄り添ってくれる、必要としてくれる。でもいつも、何かが足りない気がしていた。
自分達に足りないものって、なんだ・・・?

出会って、好きになって、初めてキスして。気付いたら半年が過ぎようとしている。

「えっと・・・私、部屋に戻った方がいい、よね・・・」
なんとなく気まずくて、一呼吸おいてからまた会えばいいと、軽い気持ちで言った言葉。
クルリと振り返りドアに向かう##NAME1##。

また、なんなく彼女を返してしまうのか。
エンデヴァー、エンデヴァーと##NAME1##が心配する気持ちもわからなくない。自分のことを心配してくれてる事も。
でも、もっと信頼してくれていいのでは?頼ってくれていいのでは?彼女は何を望んでいるんだ?
(そうか・・・)
だったら、俺が考えられないようにしてやればいいのではないか。彼女はもう俺のだって。
もっと、もっと俺を見て。俺を欲しがって。欲張って。

「##NAME1##」
気付いたら身体が動いていて、振り向いた彼女の肩を強く掴み振り返させる。
「いっ・・・!」
ドンッと、重みのある音が小さく響く。目の前には、驚いて目を見開く彼女がいる。
「しょ、と・・・?」
(俺が、壊せばいいんだ)

「んっ・・・!」
近づいてくる顔に、##NAME1##はギュッと目を閉じる。そんなの関係なくて、
いままで触れるだけだったキスに、今回ばかりは舌で弄びたい。ビクッと震える彼女の肩。
押し退けようと必死に腕を動かしてくるが、両肩を捕まえているせいか押す力が弱い。
少し開いた瞬間に入れた。初めて感じる感覚に、頭がフワフワして意識をもっていかれそうになる。
でも今日は、それだけで返してやる気さらさらない。
「あ・・・ん、まっ・・・!!」
胸にそっと触れれば、ガクンと、彼女は膝から崩れ落ちる。

「あ・・・」
ビックリしたのだろう。いや、もう身体に力が入らないようだ。
崩れた瞬間に離れた唇。見上げる##NAME1##の顔は目に涙をため、真っ赤にした頬。初めて見る恥じらいの表情。
「か、身体が・・・」
歪んだ表情にならないように、いつものポーカーフェイスを気取る。目線が同じになるようにしゃがみこんだ。
「俺の隣の奴、瀬呂だから聞かれないだろ。声、我慢しなくていい。聞かせてくれ」
「ま、まって。なに、どうしたの?いつもと違う」
抵抗しない、いや、出来ない##NAME1##を抱き上げ、まだ敷いていない布団の上にぼふっと優しく落とす。

「っ~~!!!」
「・・・俺がどれだけ##NAME1##を好きなのか。俺の事だけしか考えられないようにする」
「いや、まって、準備が」
「いらねぇよ」
顔にかかる吐息に、さらに顔が赤くなる。いや、この体制が悪いのかもしれないけど。
本気だ。今日の轟は、本気だ。何に対して怒りに触れたのか分かりにくいけど、目がいつも以上に本気だ。
本当は怖いけど、少し嬉しいと思ってる自分もいて。いつも何もなく帰してくれていた彼だったけど。

手を伸ばし、彼の頬に触れれば、寄り添うように手がかさなる。

「今日はもう、我慢できねぇ」
「うん・・・」
逃げられそうにない。
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