No.1になる為に

初めて君を見かけたのは、入試の時。 
「爆風、借りるよ」
頭上から声がし顔を上げれば、一人女子がデカイ葉っぱに乗りながら浮かんでいるのが見えた。
「あぁ!?」
初対面もなにも関係なく、爆豪は構わずガンを飛ばす。だがその女子は、同じロボを狙ってるのか前に出た。
女子は目の前のヴィランを足場にし、葉っぱを解除。
自由になった腕を木の幹にし、ヴィランを拘束し足場にして屋根に飛び乗ろうとている。
倒そうとしたわけではないのだろうか、ただ、体制を整えてからポイントを取ろうとしたのか。
他の優しい奴なら、ここで別のヴィランを探しに行くかもしれない。だが、そんなこと考える必要ない。

「取らせるかよ!!」
抜かれてヴィランまで取られたんじゃ、ムカついたままだ。No.1になるために、全部が全力投球なんだから。
女子ごと、ヴィランに向け爆破しようと試みる。仮にもヒーロー科志望なんだから、避ける術はあるだろう。
「はぁ!?」
だが、奴は驚いている。
「ちょぉ、待って・・・」

「終了~~!!!」

ドでかく響くプレゼント・マイクの声。
「チッ・・・」
試験終了の合図に、爆破しようとした腕をおろす。空中にいたまま、体は無事地面に着地するが。
「え、あっはっ」
爆破しようとした自分に驚いていた女子は、体制が不安定だったのかヴィランを拘束したまま地面に落ちるのがみえた。

「っ~~」

数秒待ってみたが、離れる様子がない。名前の知らないその女子に、言葉を投げる。
「さっさと離れやがれ、葉っぱ女」
唯一使っていた技を名前にした。
「はっ!?えっ!?」
目を丸くする女子。まぁ、うつ伏せ状態の男が下にいりゃビックリするか。
離れそうになかったロボのヴィランを爆破で粉々にしてから幹を引き寄せた。
あのままヴィランの上に落ちてれば、ロボ相手に重症はまぬがれないだろう。
「あっ、ごごご、ごめんなさいっ!!!」
腕を幹に変化して使う"個性"のせいか、多少傷が出来てしまっていたが、彼女にそんな傷を見る余裕はなさそうだ。
「いったっ!」
もの凄いスピードで離れようとし、後ろを気にしてなかったせいか建物に背中から激突する。

「バカが」
やっとどいてくれたので、コキコキ肩を鳴らす。無事ならそれでいい。所詮自分には関係ない。
そう思っていた。だから、彼女からお礼のような言葉を同じクラスになって貰えるとはおもってなかった。

それは入学して、少し日が経ってたとおもわれる。
「爆豪くん!」
「あ!?」
名前を呼ばれ振り返れば、あの時入試で出逢った女子だ。
「・・・チッ、葉っぱ女・・・」
「葉っぱ・・・!?私は##NAME2####NAME1##という名前があります!」
思わずムキになってそう答えられる。だがフンと、鼻を鳴らしそのまま歩き出した。
今さら何を話そうというのか。コイツは、後ろの席の男とよろしくやることが多いのに。
ただのクジに運だというのに、何をこんなに焦る自分がいるのだろう。

「あっ、ちょっと待って!入試試験の時!わざわざ下敷きになってくれたでしょ?ずっとお礼言おうと思ってて」
「・・・時間内だったら俺は構わずブッ飛ばしてた」
「だ、だよね~・・・」
「否定しねぇな」
「だってそのままだもん」
「ケッ」
この性格はもう昔からなのでどうにもならない。常に上にいたいという衝動は止められない。
こんな会話なのに、彼女は離れる様子がない。まぁ、目的の場所がもう目と鼻の先にあるからな。
ずっと沈黙も気まずく、そして、授業の中で使っていた"個性"に疑問があり聞いてみた。

「・・・髪の毛、ありゃなんだ?」
「え?」
「半分野郎とコンビなった時、使ってた技」
入試の時は見なかった。個性把握テストの時とも、違った使い方をしていたようにみえた。
「あぁ、あれね。(半分野郎って、轟くんかな)私の髪の毛一本一本桜の花びらになるの。
身体が桜みたいで、髪の毛は花びらになるし、爆豪くんが知ってる通り手のひらは葉っぱになる」
「・・・・・・・」
ようは、彼女にとって髪の毛は特別なのだろう。なら、入試のヴィラン相手にもその技を使えばよかったのでは。
いや、轟と組んで見せた桜の花びらは、攻撃していなかった。核に触れたのも轟だ。
「なに?」
「・・・フン」
まだ自分の知らない彼女の技を、轟はもう知っているのかもしれない。
「?」

なんでこんなモヤモヤするのか、ふとした瞬間目に入ってくるのか、わからない。
あの入試の時に、危なっかしい奴だからって、なんでこんな奴がヒーロー科にいるのか不思議だったんだ。
いつも腹立たしくさせる緑谷とは、また違った存在だった。

クラスで初めて、彼女に近づけると思ったのは、USJに移動する時のバスの中だったけれど。
「爆豪、アンタ轟の隣に座んなよ」
##NAME1##の前にいる耳郞が強気に物言う。なぜ轟の隣にならなきゃならねーのか。
「ンデ、俺がコイツの隣じゃなきゃなんねーんだ!?」
「ウチと##NAME1##が座る予定だったのにさ」 
いつも一緒で仲良しな耳郎は、男勝りな部分がたまに出る。
「・・・いいよ、響香ちゃん。二人で前後に座らせてもらおう」
「・・・分かったよ。出席番号順だってんならもともとウチは爆豪の隣だし」
「あぁ!?」
なぜそうなる。ちょっと、せっかくチャンスだとおもったのに話が違う。
でもまぁ、クラス云々、言い訳がましい言葉が見つからないのも悔しいし、ちやほやされるのも性に合わないが。

「「・・・・・・・・」」
「響香ちゃん、私爆豪くんの隣座るよ、いつも大変でしょ?」
「え?いいよ、別に」
「チッ」
「!?」

何で俺じゃないのだろう。ピンチの時は大抵傍にいたのに、助けてるのに。
彼女の心の中には、俺はいない。こんな性格だから、口が悪いから。行動に問題あるから。
散々散々、緑谷を見下してきた。クラスの連中皆が、自分の下にいればいいと思ってた。
No.1になる為に。No.1を越える為に。だからアイツが言った、自分の居場所を見つける為にってのに、虫酸が走ったんだ。

素直になれなかったのはしょうがないだろう。
目指してるもんが、最初から違うのだから。
だから頼むから俺の邪魔するな。そんな楽しそうに笑うな。
でも、哀しそうに。傷付いて欲しくなくて。泣いて欲しくなくて。
全部の現況になっている轟が羨ましくて憎くて。
どうして他人の為にそこまで頑張れるのか知らない。
いつも俺には周りにたくさん憧れの目を向ける人がいた。
一人ぼっちの寂しさなんて、知らなかったんだ。

居場所のない人間の気持ちを、俺は理解しようとしなかったんだ。

雄英体育祭の時、知った轟の過去。騎馬戦で本当は、##NAME2##も自分のチームに引き込もうとしていた。
けど、彼女は火が苦手だと。だから爆破なんて、耐えられるもんじゃねーとも思ったけど、
緑谷とのチームにいたのに腹が立った。必死に頑張る姿が、緑谷の為に見えて悔しくて。
その苛立ちを、決勝戦前の轟にもぶつけた。
『お前も、気になるのか・・・?』
そう問いかけられた時に妙に焦った。だけど、いま思えばここで言い切っていたら何か変われていたのかもしれない。

何でここまで、彼女を好きになってしまった自分がいたのだろう。
何をそんなに惹かれるのか、原因がなんだかハッキリしないけれど。
たまに話してくれることに、妙に安心感があったのかもしれない。
出会いが出会いで、印象に残ってしまったのかもしれない。
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