中学時代

「おーい!おーい!」
後ろから聞こえる声に振り返った##NAME1##。声の主はやはり、夜嵐イナサだ。
「・・・おはよう」
とりあえず、ぶっきらぼうに挨拶だけ済ませる。
「どうっスか!?考えてくれたっスか!?」
「なにを?」
「特訓の話!」
「・・・・・・・・・・・」
この時期、ああいったドキュメンタリー番組やバラエティー番組はヒーローが顔を出すことが多い。
なぜなら"個性"届けの最終チェックのような授業が、だいたいこの時期だからかもしれないけれど。
昨日考えた雄英高校。ほんの一瞬の迷いだっかもしれないが、やってみないと変わらないし。

「・・・まぁ、少しだけなら」
「おお!」
「だけど、学校のグラウンドは嫌」 
「けど、私有地じゃないと練習は出来ない」
「ウチはマンションだし・・・」
「じゃあ、俺の家にくればいい!」
「は?夜嵐くんの家!?」
「私有地なら問題ない!決まり!」

強制連行で、とうとう夜嵐の家に来てしまった。他人の家に上がり込むなんて初めてで緊張する。
夜嵐のお母さんも優しく##NAME1##を迎え入れてくれた。それに、彼の小学生時代の話もしてくれる。
なんでも夜嵐は、気に入ったものは何でも自分のモノにしたいという良くも悪いクセがあったとか。
彼の性格は、自他共に認める目立ちたがりだ。根っからヒーローに向いているのかもしれない。
「##NAME1##ちゃんは、嫌いなヒーローいるっすか?」
「・・・嫌いなヒーロー?」
あのハイテンションな夜嵐から想像出来ない、低く暗い口調で聞いてきた。
「・・・いない、かな・・・なんで?」
「俺、どうしてもエンデヴァーだけは認められない。たまたまヒーロー活動してる時に遭遇して、
サイン欲しくて声かけたんだが、ヒーローなのに、らしかぬ言葉をハッキリ言われたんだ」
『邪魔だ』と。冷たくて、どこか遠くを見てるあの目。そのエンデヴァーの目は、今も忘れられないらしい。
確かにニュースを見ると、ヒーローに手を振ったりサイン貰っているのを見た時がある。
オールマイトなんか、『私が来た!』と、自己アピール要素はいつも忘れない。

「だから、俺の大好きなクラスメートが一人でも仲間外れにしてるのをどうしてもゆるせなかった」
それはあの時のエンデヴァーと重なってしまうから。
「俺はああにはなりたくない。だからヒーロー目指す!」
ニカッと、いつものように笑う夜嵐。これって、オールマイトを真似してるのだろうか。
「・・・私のこと、惨めとか思ったんでしょ。別に、なんだってよかったのに」
それでも##NAME1##は、素っ気ない態度になってしまう。
「##NAME1##ちゃん、桜出して欲しいっす」
「ああ、うん」
夜嵐の望むままに、数量の桜の花びらを作り出す。
「それ!」
彼の"個性"旋風のおもうままに行き来する桜。

きっと舞える。この桜たちのように、自分を見せれる日が来る。

「##NAME1##ちゃん、こんなんどうっすか!!かっこよくないっすか!」
何でだろう、どうして泣きそうな自分がいるのだろう。彼のように、明るくなれるのかな。
「スゴいよイナサくん!もっと増えても、操れるの!?」
「任せろっす!」
こんなに同級生と遊んで楽しいとおもったのも、初めてだ。

ここから夜嵐とは、学校にいても会話するようになっていった。"個性"の秘密の特訓も、二人で。

「イナサくんは、高校は雄英?」
「おう!##NAME1##ちゃんは?」
「う~ん、考え中だけど。もし受けるなら、一般かな・・・イナサくんは推薦もらえるだろうし」
着実に彼の"個性"は、片鱗を見せ始めていた。クラスメートも先生も、驚く程に。
目立つ彼の"個性"は、##NAME1##を追い詰める。ヒーローを目指すなんて限られた人数で。
それは男子はもとより女子からも注目を集める程に。

「ねぇ・・・なんか最近調子乗ってない?」
「だったらさ、雄英高校なんて目指せないようにしちゃおうよ」
「でも、そこまでやって先生らにバレたら、うちらもどうなるかわからないよ?」
「あ、そっか・・・」
「じゃあさ、夜嵐と一緒にいさせないようにすりゃいいじゃん。あいつヒーロー気取りで、最近ムカつくんだよね」
「授業中もうるさいし」

"個性の"反動。そうじゃなくてもお腹は鳴る。
「「!」」
静かになる授業中に、一度##NAME1##はやらかした。カァーと赤くなる顔に、教科書に顔を埋める。
「クスクス」
「なに、いまの」
「恥ずかしいー」
「あんなんでヒーローなりたいんだ」
「こら、静かに!」
「「はーい」」

「「・・・・・・・・・・」」
恥ずかしくて、顔向け出来ないでいる##NAME1##。夜嵐がなんだかソワソワする中、男子の友だちと帰ってしまう。

「ねぇ、あんたさ」
「?」
珍しく、女子に声をかけられ振り返る。
「雄英高校受けたいんだって?」
「それ、は・・・」
「散々あんたの"個性"じゃ向かないって言ってんのに、よく懲りないよね。悪さする方に向いてんじゃない?」
アハハと、面白おかしく笑う連中。嫌いなら嫌いで、関わってこなくていいのに。
桜の"個性"の、何処がそんなに気にくわないのだろう。羨ましいから?妬まれてるから?
「・・・オールマイトに捕まっても、光栄かもね」
皮肉に返す。すると、カッとした女の子は、##NAME1##を思いっきりひっぱ叩いた。
「!!!」
「キャア」
「ちょっと・・・!」
椅子から滑り落ちる。驚く複数のクラスメート。

「そういうところが気にくわない!平気な顔してへらへらしちゃってさ!
誰よりも優位に立ってるって思ってんでしょ!?悲劇のヒロインなんて、可愛くないわよ。
それに・・・これ以上イナサに近付かないで!アイツをヒーローにするのは、私なんだから!」
「・・・彼のこと、気軽に名前呼ばない方が身のためよ。対等だなんて思わないで」
「気持ち悪い"個性"。単純に髪の毛ばらまいてるだけなのに」
「・・・花びらになるなんて、ズルい・・・」

ここに、自分の居場所なんてない。妬みと、嫉妬と。怒りがただただ、あるだけだ・・・。
だから夢を見た。ヒーローになんてなれなくていい。でも、より深刻で複雑な"個性"が集まるのは、
雄英高校のヒーロー科だ。そこで必ず自分の"個性"を見せつけ認めさせてやる。
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