自分自身

雄英高校からインターンとして、二人の生徒が俺のところに来ている。
一人は男の子で、名前は常闇踏陰。彼は職場体験から事務所に来ていた。
それは俺がUSJ事件の話を聞きたくて。敵が敵で、公安が目をつけていた連合や脳無の話が浮き彫りだったから。
そしてもう一人は女の子。体育祭の指命にはいれていたが、まさか本当に自分の事務所を選ぶとは思わなかった。
女子の中では上位に食い込んでいたし、桜の使い方はまぁ、本人が言うように俺の"個性"に似てるところもあったけど。

「女の子か・・・大丈夫かなぁ」
心配の言葉が、ポツリと漏れる。後進育成なんて得意ではないし、するきもない。
まして、常闇のように男なら放っておいてもどうにかなるだろうと軽い気持ちもあったわけだが。
なんてたってNo.2ヒーローの名は伊達じゃないし、恋愛沙汰もいろいろメディアに報じられるし、
街を飛んでれば黄色い歓声が響く。どっかのNo.1ヒーローと違いファンサは劣りません。

「##NAME2##は大丈夫だと思います。前向きな奴ですし、何より"個性"に対して素直です。
自分の桜の"個性"は嫌いだと言ってましたが、先生からのアドバイスでホークスの羽の動きを直接見たいと言ってました」
「・・・##NAME2####NAME1##ねぇ・・・体育祭で指命いれたのは気まぐれだけど、神野事件の話、聞いてオッケーならいいよ」
「話・・・それは、本人に確認しないとですね」
「いいよ、彼女がオッケーならそのまま連れてきてよ。悪いね、公安の方の仕事もあるからさ。
二人には、俺が自分の事務所やってること以外に公安にも使われてることちゃんと話しておくから」

電話を切る。雄英のインターンを許可したのは、常闇が初めてだ。それは彼が男の子だから大丈夫だと変に確信があった。
けど、女の子事態初だ。サイドキックも男だし、女の扱いなんてどうすれば・・・。
「あ、常闇くんにその子がギャルなのか聞いとけばよかった」
ギャルの子なら、テンション高めでどうにか乗り切れるかもしれないという願望。
「大人しい子だと、話合わせずらいなぁ・・・まぁ、事件に巻き込まれる事あるぐらいだからテンション高い子かな?」
色々想像しながら、スマホでその事件があった時の事を調べてみる。ヴィラン連合に捕まった男の子と女の子の写真。
この女の子が##NAME2####NAME1##だ。肩まで延びてる黒髪に、パッとみ普通の女の子。
とてもヒーローとして活動しようなんて考えなさそうな、普通の女の子。

「・・・・・・・・・・」
常闇もそうだが、どうして子供たちはヒーローを目指すのだろう。
確かにオールマイトのようなカッコいい活動を見せつけられたら憧れるのは分かる。
自分も、幼い頃似たような感覚はもっていたわけだし。でも、公安に拾われればまたヒーローの価値は違う。
表に発表出来ない汚い仕事は、裏にいる人間に回ってくる。見えないところで、誰かが汚れている。
「・・・明るいヒーロー活動だけ見せてればいいんだよな、ホークス」
自分に納得させる為に、自分に言い聞かせる。
「常闇くんはいい子だったから、きっと女の子もいい子さ。なんて名前を呼んであげようかな」

インターン当日、常闇に少し遅れるから先に事務所向かってて、と連絡をいれていたけど。
「ありゃ、もうこんな時間だった?」
「「!!」」
自分の声に気付いた二人が空に向かって驚いた顔を向ける。
「「ホークス!」」
「パトロールのついで。ようこそ、お二人さん」
いつものニッコリ営業スマイル。遅れるなんて連絡は、ほんの少しの嘘。
見つけた二人を、少し観察したくて後ろから様子を見てた。ヒーローの話をする楽しそうな二人。
その会話の中で、女の子はどうやらあのエンデヴァーの息子である焦凍くんと付き合っていると。
「ツクヨミは久しぶりだね。キルシュは初めまして」
「(わっ・・・)は、初めまして・・・」
至って普通の女子高生だ。

「女の子がホント、来てくれるなんて嬉しいな」
うぶな態度がまた心をざわつかせる。自分の周りには血の気盛んな男勝りの女しかいないから。
「事務所、むさ苦しい男連中多いけど」
「だ・・・大丈夫です・・・!」
飛んでた羽を休めるため、二人の前におりたつ。常闇にはもうあってるからそれなりに。
「ふーん・・・」
緊張してる様子の彼女に、考える素振りをしながら視線を向けた。
(さて、どうしたもんか・・・)
「え、えっと・・・?」
##NAME1##は照れ隠しにキョロキョロ視線を泳がす。

「ホークス、今回我々の承諾、ありがとうございます」 
二人の気まずい雰囲気を察したように、律義な常闇は頭を下げた。
「いいよ、ツクヨミ。堅苦しいのなしね。さぁて、ここじゃ目立つし、事務所に帰ってからいろいろ話をしよう!」
駅前のこともあり、行き交う人々は珍しく地面にいるホークスに向かって声をあげている。
「ホークスだ!」
「地面あるいとるん、珍しか」
「女の子と会話してる!?」
「いやー!誰!?彼女!?」
「ホークス!この間は助かったばい!」
賑わう街の人たちの様子をみて、ホークスは大きく羽を広げて皆の顔を見てから頭を下げる。

「いつも応援ありがとう!!皆にも紹介しといた方が都合いいんで話ておきますね!
ここの二人は今回、雄英高校から来てくれたインターン生です!この街のこと何もしらんと思いますんで、
万が一、一人で出掛けてることがあれば優しく教えてあげてね!俺からの頼み、よろしく!」
「おー!」
「雄英か!」
「雄英だって!?」
(あー・・・また囲まれそうだ)
チラリと横に並ぶ二人をみると、忙しなく頭を下げたり照れている。これは普通に歩いて事務所まで帰るのは面倒だ。
常闇と##NAME1##に聞こえるように、声をひそめ聞いてみる。
「飛べる?」
職場体験の時より頼もしくみえるようになった常闇。
「・・・少しなら」
あれから授業で、悔しさを忘れられずダークシャドウと飛ぶ練習はしていた。ホークスに今は追い付かなくても。
「飛べません・・・」
##NAME1##は顔をうつ向かせてしまう。そんな落ち込ませるつもりはなかったんだけど。

「じゃあ!また皆さん後で!」
大きな声で一言言い残し、剛翼で二人の背中に羽をつける。
「!」
「うわっ!」
颯爽と街の人たちから三人の姿は、見えなくなった。

「とうちゃーく」
羽がバサリと大きな音をたてる。ちらりと二人に視線を向けると、飛べると言った常闇はともかく、
##NAME1##の方は硬直状態だ。少し飛んでから緩やかに飛んであげたつもりだったんだけど。
「と・・・と、とん・・・」
「・・・大丈夫?」
彼女の顔の前で手をヒラヒラさせる。
「わわっ・・・」
##NAME1##自身驚いていた。寄る術もなく、クラスメイトの常闇の腕を掴む。
「落ち着け##NAME2##。だからホークスは飛ぶと言っただろう」
「違う、感動してるの・・・やっぱりホークスは凄いです!」
飛ぶ感覚は、夜嵐とかつて協力して編み出そうとして桜を吹雪かせたりはしていたし、
葉っぱで爆豪の爆風で飛び上がったりしたことはあったけど、こんな大胆に長距離を飛んだのは初めてだ。

驚きの表情から、目をキラキラさせてくる##NAME1##。コロコロ変わる表情に、ホークスは笑う。
「あっははは!!面白か!びっくりして腰抜かしたかー思ったばい!」
「常闇くん!ありがとう!」
「俺は・・・何も・・・」
「ホークスの羽根を間近でみれるなんて・・・!でもこの羽根、なにか小細工とかあるんじゃないんですね。
羽一枚で何でも出来るって、やっぱり凄い・・・!」
自分の"個性"をここまで褒めてくれるのは素直に嬉しい。
「ありがと。さて、サイドキックも待ってるからまずは自己紹介から頼むよ」
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