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しょせん一時しのぎに過ぎないが、ようやく息を吐く。
緊張の糸が切れたのか幼い弟がしくしくと泣き出し、
そう年の変わらぬ兄が必死に慰めている。
女の子は、玲薇にしがみつき離れようとしないだろう。
(なんとかして、コイツらを助けねーと)
「大丈夫、大丈夫。怖くないから。お姉ちゃんたちがいるから」
「・・・・・・」
子供をあやす姿は、まるで母親のようだ。
玲薇がいてくれて、よかった。
無事に帰るんだ。そしたら、きつく抱きしめよう。
少しでも安全そうな場所を探す。
「玲薇」
「・・・え?」
そして四人を移した場所は、出入口の上の屋根だ。
「燐たちは・・・?」
「大丈夫だ。玲薇はそいつらを頼む!」
「わかった」
一方、屋上の囲いに手をかけ地上を見ている雪男は。
「街が・・・」
と、かすれた声でつぶやいた。
「雪男?」
雪男の脇に立って身を乗り出した燐が、その場に凍りつく。
「・・・・・・」
眼下に広がる街はコールタールの海に沈んでいた。
その黒い海を、まるで巨大な海蛇のような形になったコールタールの集合体が何十匹と泳いでいる。
この世のものとは思えない光景に、固唾を呑んで立ち尽くしていると、
鈍い衝撃とともに足下がぐらりとゆれた。
「!?」
海蛇の一体が長い尻尾で、二人の立っている下の部分をしたたかに打ちつけていったのだ。
囲いと床の一部が崩れる。それに雪男が足を取られた。
「・・・っ!!」
「雪男っ!!」
「!!」
燐の叫びに、うずくまって三人を抱き寄せていた玲薇の顔が上がる。
落下しかける雪男を追って自身も宙に身を踊らせた燐が、
間一髪のところで雪男の左手をつかみ、
もう一方の手で塔の壁に袋に入ったままの降魔剣を突き刺す。
直後、鈍い衝撃が肩から腕にかけて走り抜けた。
燐が悲鳴を噛み殺す。
「・・・ぐっ・・・!!」
宙吊りになった二人の身体が、闇の中、不安定にゆれる。
「燐!!雪男!!」
「心配すんな!!どうにかすっから、お前はそいつらを守ってくれ!」
「燐・・・」
今にも、二人のもとに飛び出さんばかりの玲薇の裾に三人がしがみつく。
お姉ちゃん、行かないで、と。
「っ・・・!ごめんね、ごめんね」
つぅ・・・と、静かに涙が流れる。そんな気がした。
(悪ぃな、玲薇・・・)
燐はバランスを崩さぬよう視線だけを、今度は下にした。
「雪男!大丈夫か!?」
自身の利き腕の先で、雪男がわずかに苦い顔をしている。
右手が使えないうえに、左腕がふさがれているのだ。
そのうえ、身動きが取れぬのをいいことに、コールタールの海蛇が一体、
また一体と彼らの下に集まってきていた。それぞれが脅すように真っ黒な口を開ける。
「くそ・・・っ!!」
燐がどうにかして塔の上に戻ろうと、しきりに宙をもがく。
だが、逆に剣が大きく傾いてしまう。二人の身体ががくんと下がり、
海蛇の口内に雪男の片足が飲まれかける。
直後、雪男が負傷した右手を背中に伸ばした。
ホルスターから素早く銃を抜き取り、引き金を引く。
低い銃声が立て続けに周囲に響き渡る。
脳天に銀製の銃弾を浴びた海蛇が、ただのコールタールに戻り四散した。
しかし、銃を撃った雪男もまた、苦痛に顔を歪めていた。
その手のひらから銃がこぼれ落ちる。
その下では、第二、第三の巨大な海蛇が手ぐすね引いて待ちわびている。
「くっ・・・!!」
身構える雪男の上で、燐が周囲に焦れた視線を這わす。
何かこの状況を打開できるものはないかとゆれていた視線が、ある一点で止まった。
(え・・・?)
強風にあおられる見慣れた後ろ姿に、燐の表現がひきつる。
まさか・・・と、何度も両目を瞬かせる。
緊張の糸が切れたのか幼い弟がしくしくと泣き出し、
そう年の変わらぬ兄が必死に慰めている。
女の子は、玲薇にしがみつき離れようとしないだろう。
(なんとかして、コイツらを助けねーと)
「大丈夫、大丈夫。怖くないから。お姉ちゃんたちがいるから」
「・・・・・・」
子供をあやす姿は、まるで母親のようだ。
玲薇がいてくれて、よかった。
無事に帰るんだ。そしたら、きつく抱きしめよう。
少しでも安全そうな場所を探す。
「玲薇」
「・・・え?」
そして四人を移した場所は、出入口の上の屋根だ。
「燐たちは・・・?」
「大丈夫だ。玲薇はそいつらを頼む!」
「わかった」
一方、屋上の囲いに手をかけ地上を見ている雪男は。
「街が・・・」
と、かすれた声でつぶやいた。
「雪男?」
雪男の脇に立って身を乗り出した燐が、その場に凍りつく。
「・・・・・・」
眼下に広がる街はコールタールの海に沈んでいた。
その黒い海を、まるで巨大な海蛇のような形になったコールタールの集合体が何十匹と泳いでいる。
この世のものとは思えない光景に、固唾を呑んで立ち尽くしていると、
鈍い衝撃とともに足下がぐらりとゆれた。
「!?」
海蛇の一体が長い尻尾で、二人の立っている下の部分をしたたかに打ちつけていったのだ。
囲いと床の一部が崩れる。それに雪男が足を取られた。
「・・・っ!!」
「雪男っ!!」
「!!」
燐の叫びに、うずくまって三人を抱き寄せていた玲薇の顔が上がる。
落下しかける雪男を追って自身も宙に身を踊らせた燐が、
間一髪のところで雪男の左手をつかみ、
もう一方の手で塔の壁に袋に入ったままの降魔剣を突き刺す。
直後、鈍い衝撃が肩から腕にかけて走り抜けた。
燐が悲鳴を噛み殺す。
「・・・ぐっ・・・!!」
宙吊りになった二人の身体が、闇の中、不安定にゆれる。
「燐!!雪男!!」
「心配すんな!!どうにかすっから、お前はそいつらを守ってくれ!」
「燐・・・」
今にも、二人のもとに飛び出さんばかりの玲薇の裾に三人がしがみつく。
お姉ちゃん、行かないで、と。
「っ・・・!ごめんね、ごめんね」
つぅ・・・と、静かに涙が流れる。そんな気がした。
(悪ぃな、玲薇・・・)
燐はバランスを崩さぬよう視線だけを、今度は下にした。
「雪男!大丈夫か!?」
自身の利き腕の先で、雪男がわずかに苦い顔をしている。
右手が使えないうえに、左腕がふさがれているのだ。
そのうえ、身動きが取れぬのをいいことに、コールタールの海蛇が一体、
また一体と彼らの下に集まってきていた。それぞれが脅すように真っ黒な口を開ける。
「くそ・・・っ!!」
燐がどうにかして塔の上に戻ろうと、しきりに宙をもがく。
だが、逆に剣が大きく傾いてしまう。二人の身体ががくんと下がり、
海蛇の口内に雪男の片足が飲まれかける。
直後、雪男が負傷した右手を背中に伸ばした。
ホルスターから素早く銃を抜き取り、引き金を引く。
低い銃声が立て続けに周囲に響き渡る。
脳天に銀製の銃弾を浴びた海蛇が、ただのコールタールに戻り四散した。
しかし、銃を撃った雪男もまた、苦痛に顔を歪めていた。
その手のひらから銃がこぼれ落ちる。
その下では、第二、第三の巨大な海蛇が手ぐすね引いて待ちわびている。
「くっ・・・!!」
身構える雪男の上で、燐が周囲に焦れた視線を這わす。
何かこの状況を打開できるものはないかとゆれていた視線が、ある一点で止まった。
(え・・・?)
強風にあおられる見慣れた後ろ姿に、燐の表現がひきつる。
まさか・・・と、何度も両目を瞬かせる。