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夢小説設定
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道路は街の外に逃げ出そうとする車で長い列が出来ていた。
動かない車を乗り捨て、徒歩で逃げようとする者も少なくない。
クラクションがひっきりなしに鳴らされ、交通は完全にパンク状態だ。
あちこちで罵声が飛び交い、泣き出す幼い子供を母親が必死にあやしている。
そんな街の様子を案じつつも、街の中核にある本部へと向かう。
ふと雪男の足が止まる。
(・・・?・・・アレは・・・?)
大量のコールタールによって極端に悪くなった視界に、
何度も瞬きし、眼鏡の奥の両目を凝らす。
そして、すぐにそれを大きく見開いた。
少し離れた高台にある陸橋の上で、幼い子供が三人、
コールタールの大群に囲まれている。
「雪男?」
玲薇も燐も足を止め、振り返る。
「どうした?」
「子供が取り残されてる」
雪男はそう言うと、四人に背を向けた。
「先に行っててください」
そのまま一人、陸橋へ向かおうとする。
「雪男!」
それを、後先考えず追う玲薇。
雪男はまだ腕を怪我したまま。一人では大変だろうと思ったから。
「待て!俺も行く!」
燐も叫ぶ。二人の声に、雪男が足を止め、肩越しに振り返る。
「着いてくるなって言ったって、くるんでしょ?」
「おう!」
「もちろん。子供が相手なら、怖いお兄さん二人だけよりは、いいでしょ」
「なんだと!?」
「はいはい、そこまで」
すると、燐は上着を引っ張られているのに気づく。
見ると、兎の悪魔がつかんでひきとめていた。
今にも泣き出しそうな顔で燐を見つめている。
「・・・りん」
「大丈夫だ、うさ麻呂。すぐ戻るから、しえみと先に行っててくれ。な?」
燐は少年の視線に合わせてしゃがみこむと、
いまだ不安そうな顔をしている悪魔の頬を両手でつまんで、うにーっと伸ばした。
「ホラ、辛気くせえ顔すんなって。しえみ、うさ麻呂を頼む」
明るく笑って立ち上がった燐が、最後の一言はしえみに向けて告げる。
しえみがうなずくのを待たず前に向き直った雪男が、
今度は立ち止まることなく陸橋へと向かう。
すぐ後ろに、兄と玲薇がついて来るのがわかった。
陸橋へ向かう三人の背中は、すぐにも大量のコールタールによって見えなくなった。
「り・・・ん・・・」
うさ麻呂が燐の消えた虚空を見つめている。
不安なのか、小さな両手をぎゅっと握りしめている。
しえみはその肩に手を置き、無理に微笑んでみせた。
「急ごう!うさ麻呂くん。あの三人なら、大丈夫だから・・・。きっと・・・」
正十字学園町を埋め尽くすコールタールの大群は、第一号水門にある結界場にもあふれていた。
最後の一つとなった結界を張り直すため台座の上に立つシュラを邪魔し続けている。
「くそっ!!外の連中は何やってる!結界場の中にまで食いこまれてるぞ!!
てか、お前もちゃんとフォローしろよ!」
と、鉄梯子の上のスタッフに怒鳴る。
若いスタッフは半泣きで、後から後からうじのように湧いてくるコールタールを祓っている。
「いや、やってますよ!?でも、こう数が多くちゃ、どうにも・・・。
シュラさんがちゃっちゃと結界を張ってくれればいいんですよ!お願いしますよっ!!」
しまいには逆ギレしてきた。
「・・・んなこと言ったってよ」
シュラが鼻の頭に盛大なしわを寄せる。
動かない車を乗り捨て、徒歩で逃げようとする者も少なくない。
クラクションがひっきりなしに鳴らされ、交通は完全にパンク状態だ。
あちこちで罵声が飛び交い、泣き出す幼い子供を母親が必死にあやしている。
そんな街の様子を案じつつも、街の中核にある本部へと向かう。
ふと雪男の足が止まる。
(・・・?・・・アレは・・・?)
大量のコールタールによって極端に悪くなった視界に、
何度も瞬きし、眼鏡の奥の両目を凝らす。
そして、すぐにそれを大きく見開いた。
少し離れた高台にある陸橋の上で、幼い子供が三人、
コールタールの大群に囲まれている。
「雪男?」
玲薇も燐も足を止め、振り返る。
「どうした?」
「子供が取り残されてる」
雪男はそう言うと、四人に背を向けた。
「先に行っててください」
そのまま一人、陸橋へ向かおうとする。
「雪男!」
それを、後先考えず追う玲薇。
雪男はまだ腕を怪我したまま。一人では大変だろうと思ったから。
「待て!俺も行く!」
燐も叫ぶ。二人の声に、雪男が足を止め、肩越しに振り返る。
「着いてくるなって言ったって、くるんでしょ?」
「おう!」
「もちろん。子供が相手なら、怖いお兄さん二人だけよりは、いいでしょ」
「なんだと!?」
「はいはい、そこまで」
すると、燐は上着を引っ張られているのに気づく。
見ると、兎の悪魔がつかんでひきとめていた。
今にも泣き出しそうな顔で燐を見つめている。
「・・・りん」
「大丈夫だ、うさ麻呂。すぐ戻るから、しえみと先に行っててくれ。な?」
燐は少年の視線に合わせてしゃがみこむと、
いまだ不安そうな顔をしている悪魔の頬を両手でつまんで、うにーっと伸ばした。
「ホラ、辛気くせえ顔すんなって。しえみ、うさ麻呂を頼む」
明るく笑って立ち上がった燐が、最後の一言はしえみに向けて告げる。
しえみがうなずくのを待たず前に向き直った雪男が、
今度は立ち止まることなく陸橋へと向かう。
すぐ後ろに、兄と玲薇がついて来るのがわかった。
陸橋へ向かう三人の背中は、すぐにも大量のコールタールによって見えなくなった。
「り・・・ん・・・」
うさ麻呂が燐の消えた虚空を見つめている。
不安なのか、小さな両手をぎゅっと握りしめている。
しえみはその肩に手を置き、無理に微笑んでみせた。
「急ごう!うさ麻呂くん。あの三人なら、大丈夫だから・・・。きっと・・・」
正十字学園町を埋め尽くすコールタールの大群は、第一号水門にある結界場にもあふれていた。
最後の一つとなった結界を張り直すため台座の上に立つシュラを邪魔し続けている。
「くそっ!!外の連中は何やってる!結界場の中にまで食いこまれてるぞ!!
てか、お前もちゃんとフォローしろよ!」
と、鉄梯子の上のスタッフに怒鳴る。
若いスタッフは半泣きで、後から後からうじのように湧いてくるコールタールを祓っている。
「いや、やってますよ!?でも、こう数が多くちゃ、どうにも・・・。
シュラさんがちゃっちゃと結界を張ってくれればいいんですよ!お願いしますよっ!!」
しまいには逆ギレしてきた。
「・・・んなこと言ったってよ」
シュラが鼻の頭に盛大なしわを寄せる。