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怪訝に思い、リュウへと歩み寄りかけた雪男の視線を、巨大な影がよぎる。
「!!」
悪魔か・・・?
と、反射的にホルスターへ納めたばかりの銃を抜く。
だが、その必要はなかった。
悪魔の輪郭がぶれ、ユラリとその場に崩れ落ちる。
直後、無数のコールタールがわっと四散した。
巨大な悪魔だと思っていたそれが、コールタールの寄り集まりだとわかり、
雪男が、燐が、玲薇が、リュウが、視界を埋め尽くすコールタールを見つめる。
「りーん!!」
「!!」
切羽つまった声に我に返る。
声の方を振り向くと、土手の上の手すりからこちらに身を乗り出しているしえみの姿があった。
しえみの瞳が燐の脇に立つ兎の悪魔を捉える。強張っていた目元がゆるみ、ほっとしたように息を吐いた。
「よかった。うさ麻呂くんみつかったんだね」
そう言うと、左手にある石段から駆け降りてきた。
長い間走りまわっていたのか、すっかり息が上がっている。
その割に、顔は血の気が失せたように青ざめていた。
「どうなってんだ、これは!?」
燐の問いに、しえみが時折、咳き込みながら答える。
「結界が破れちゃって、まだ張り直されていないの。
今、最後の一か所を霧隠先生が張り直してるところだって。
結界が破れて入ってきちゃった悪魔は、どうにか退治してるんだけど・・・。
それよりも、コールタールが異常発生して、大変なの」
街中にあふれたコールタールは、退治された悪魔の死骸を食らい、
さらに増殖し、もはや手に負えない状態だろう。
「異常発生って・・・なんで?」
玲薇は、となりに立つ雪男に顔を向ける。
「・・・例の亀裂か」
幽霊列車が食い破ったゲヘナとアッシャーの境界を思いだし、雪男が苦い顔になる。
リュウも、小さく舌打ちしている。
そんなにも次元の裂け目を広げられていたのか、
といまさらながらに、幽霊列車を取り逃がしたことを悔いる雪男に、
リュウが眉間にしわを寄せて告げる。
「今のは不完全な状態だったようだが、完全な集合体になられると厄介だぞ」
「ええ・・・早く手を打たないと」
「街の人たちには、避難命令が出てるの。祓魔師は本部に集合だって」
「わかりました。僕たちも、ただちに向かいます」
「俺はこのままコールタールを祓い、住民の避難を手伝う」
リュウが雪男の言葉に頭を振る。
「本部へ戻る時間が無駄だ」
そして、返事を待たずに走り出す。その背中はすぐに見えなくなった。
「い、いっちゃった・・・」
呆然とする玲薇。
「オイ、アイツは?」
いいのか?という表情をする兄に、雪男が無言でうなずいてみせる。
彼の実力はよくわかっている。やっきになって無謀な真似をするほど子供でもない。
問題ないだろう。雪男が皆をうながす。しえみが降りてきた石段を上って土手の上に立つと、
街の惨状がより実感を伴って確認できた。
人が、車が、建物が、街がコールタールによって覆われ、黒い海と化している。
まるでヨハネ黙示録に出てくるイナゴの集団だ。
一匹一匹はさして力のない最下級の悪魔とはいえ、
ここまで大群になったコールタールは雪男も見たことがない。
こうしている間にも、どんどん増殖している。
「くそっ」
周囲を見回していた燐が、苛立たしげにうなる。
「アイツら、どーにかしねーと」
「・・・とりあえず本部に戻って、指示を仰ごう」
「!!」
悪魔か・・・?
と、反射的にホルスターへ納めたばかりの銃を抜く。
だが、その必要はなかった。
悪魔の輪郭がぶれ、ユラリとその場に崩れ落ちる。
直後、無数のコールタールがわっと四散した。
巨大な悪魔だと思っていたそれが、コールタールの寄り集まりだとわかり、
雪男が、燐が、玲薇が、リュウが、視界を埋め尽くすコールタールを見つめる。
「りーん!!」
「!!」
切羽つまった声に我に返る。
声の方を振り向くと、土手の上の手すりからこちらに身を乗り出しているしえみの姿があった。
しえみの瞳が燐の脇に立つ兎の悪魔を捉える。強張っていた目元がゆるみ、ほっとしたように息を吐いた。
「よかった。うさ麻呂くんみつかったんだね」
そう言うと、左手にある石段から駆け降りてきた。
長い間走りまわっていたのか、すっかり息が上がっている。
その割に、顔は血の気が失せたように青ざめていた。
「どうなってんだ、これは!?」
燐の問いに、しえみが時折、咳き込みながら答える。
「結界が破れちゃって、まだ張り直されていないの。
今、最後の一か所を霧隠先生が張り直してるところだって。
結界が破れて入ってきちゃった悪魔は、どうにか退治してるんだけど・・・。
それよりも、コールタールが異常発生して、大変なの」
街中にあふれたコールタールは、退治された悪魔の死骸を食らい、
さらに増殖し、もはや手に負えない状態だろう。
「異常発生って・・・なんで?」
玲薇は、となりに立つ雪男に顔を向ける。
「・・・例の亀裂か」
幽霊列車が食い破ったゲヘナとアッシャーの境界を思いだし、雪男が苦い顔になる。
リュウも、小さく舌打ちしている。
そんなにも次元の裂け目を広げられていたのか、
といまさらながらに、幽霊列車を取り逃がしたことを悔いる雪男に、
リュウが眉間にしわを寄せて告げる。
「今のは不完全な状態だったようだが、完全な集合体になられると厄介だぞ」
「ええ・・・早く手を打たないと」
「街の人たちには、避難命令が出てるの。祓魔師は本部に集合だって」
「わかりました。僕たちも、ただちに向かいます」
「俺はこのままコールタールを祓い、住民の避難を手伝う」
リュウが雪男の言葉に頭を振る。
「本部へ戻る時間が無駄だ」
そして、返事を待たずに走り出す。その背中はすぐに見えなくなった。
「い、いっちゃった・・・」
呆然とする玲薇。
「オイ、アイツは?」
いいのか?という表情をする兄に、雪男が無言でうなずいてみせる。
彼の実力はよくわかっている。やっきになって無謀な真似をするほど子供でもない。
問題ないだろう。雪男が皆をうながす。しえみが降りてきた石段を上って土手の上に立つと、
街の惨状がより実感を伴って確認できた。
人が、車が、建物が、街がコールタールによって覆われ、黒い海と化している。
まるでヨハネ黙示録に出てくるイナゴの集団だ。
一匹一匹はさして力のない最下級の悪魔とはいえ、
ここまで大群になったコールタールは雪男も見たことがない。
こうしている間にも、どんどん増殖している。
「くそっ」
周囲を見回していた燐が、苛立たしげにうなる。
「アイツら、どーにかしねーと」
「・・・とりあえず本部に戻って、指示を仰ごう」