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『燐、玲薇。お前らはどうだ?』
養父に問われ、先にキッパリと言ったのは玲薇だった。
『分かんない』
玲薇がそう答えると、兄はケラケラ笑う。
『なんだよ、それ』
『えー、だって・・・。じゃ、燐は?』
『俺?俺はね・・・』
幼い兄は、小さな頭をひねり、絵本に描かれた少年と悪魔をじーっと見つめている。
『なぁ、父さん。そのアクマはみんなとたのしくあそんだんだろ?』
『・・・何でそんなこと聞くんだ?』
養父は兄の反問に、おかしそうに笑った。
兄は眉間にしわが寄った顔で、さらに尋ねた。
『だって、アクマだったらわるいことするんじゃねーの?』
『・・・・・・』
養父が驚いたような顔になる。
思わず言葉を探しあぐねているといった様子だった。
そんな養父の返答を待たず、兄は言う。
『たのしくあそべんなら、コイツともだちじゃん!』
自分の説明に満足したのか、唇をヒヨコのように尖らせた顔でうんうんと何度もうなずいた。
『え・・・』
『たのしくあそべたら・・・ともだち・・・?』
『だってそうだろ?俺だって、玲薇がはじめてのともだち!
それは、たのしくあそべてるから!』
ずっと周りに悪魔の子と恐れられていた。
でも、玲薇は違う。となりで、笑ってくれてる。
玲薇は、それに答えるように笑顔になっていく。
『ともだちって・・・』
しかし雪男には、兄の言っていることがまるでわからなかった。
そんなこと、考えもしなかった。兄がとても恐ろしい。
不信心なことを言っているように思え、珍しく声を荒げる。
『に、兄さん!!どんなにたのしくあそべたって、アクマはアクマなんだから・・・!』
だが、弟の反論に遭ってなお、兄の考えは変わらなかった。
『こいつはアクマだけど、いいヤツだ!
ともだちならやっつけない。なかよくする!!』
そう言って、あっけからんと笑う。
兄の口調に呆れるほど迷いがなかった。
そんな兄を雪男は呆然と見つめた。ふと、黙ったままの養父に気づく。
もしや、兄のとんでもない答えに怒ってしまったのではないか、
と、慌てて視線を上げる。だが、そうではなかった・・・。
養父はうれしそうに笑っていた。
とても、とても・・・うれしそうに。
しわの刻まれ始めた目尻を細め、このうえもなくやさしく微笑んでいた。
ああ、そうか・・・と思う。
(あの時も・・・兄さんは、そう言ったんだ)
眼鏡の奥の両目をすっと細めた雪男が、力なく銃口を下ろす。
いつだってそうだ。いつだって・・・この兄は自分の考えもしない答えを導き出す。
どれほど荒唐無稽であれ、無謀であれ、それを迷いすらしない。
いっそ、羨ましいほどに。
(敵わない、な・・・)
雪男の唇の端から頬にかけ、諦観とも笑みともつかぬものが浮かぶ。
あんな養父の笑顔を思い出してしまったら、
自分にそれを阻むことなどできるはずがないじゃないか・・・。
長く重いため息をついた雪男が、使う必要のなくなった銃をホルスターに戻す。
背後でガタッと物音がした。
振り向くと、リュウだった。
例の地下遺跡から自分たちを追ってきたらしい異国の祓魔師は、
ぐっしょりと濡れた制服や灰色の髪から水滴を滴らせ、こちらを見つめていた。
否、正確には燐と、燐にしがみつく兎の悪魔を見つめていた。
雪男が思わず身を固くする。
てっきり、兄を糾弾するか兎の悪魔を祓おうとしてくるだろうとばかり思っていたのだが、
リュウは何も言わず、どこか遠くを見るような目で二人を見つめていた。
その顔に、一瞬だけ、ひどく淋しげなものがよぎった気がした。
失くしてしまった何かを悔やみ、想い出すような、そんな色が浮かぶ。
だが、すぐにそれを冷たい表情が覆い隠す。そっと視線を逸らした。
常の彼らしくない、逃げるような仕草だった。
(・・・どうしたんだ?)
養父に問われ、先にキッパリと言ったのは玲薇だった。
『分かんない』
玲薇がそう答えると、兄はケラケラ笑う。
『なんだよ、それ』
『えー、だって・・・。じゃ、燐は?』
『俺?俺はね・・・』
幼い兄は、小さな頭をひねり、絵本に描かれた少年と悪魔をじーっと見つめている。
『なぁ、父さん。そのアクマはみんなとたのしくあそんだんだろ?』
『・・・何でそんなこと聞くんだ?』
養父は兄の反問に、おかしそうに笑った。
兄は眉間にしわが寄った顔で、さらに尋ねた。
『だって、アクマだったらわるいことするんじゃねーの?』
『・・・・・・』
養父が驚いたような顔になる。
思わず言葉を探しあぐねているといった様子だった。
そんな養父の返答を待たず、兄は言う。
『たのしくあそべんなら、コイツともだちじゃん!』
自分の説明に満足したのか、唇をヒヨコのように尖らせた顔でうんうんと何度もうなずいた。
『え・・・』
『たのしくあそべたら・・・ともだち・・・?』
『だってそうだろ?俺だって、玲薇がはじめてのともだち!
それは、たのしくあそべてるから!』
ずっと周りに悪魔の子と恐れられていた。
でも、玲薇は違う。となりで、笑ってくれてる。
玲薇は、それに答えるように笑顔になっていく。
『ともだちって・・・』
しかし雪男には、兄の言っていることがまるでわからなかった。
そんなこと、考えもしなかった。兄がとても恐ろしい。
不信心なことを言っているように思え、珍しく声を荒げる。
『に、兄さん!!どんなにたのしくあそべたって、アクマはアクマなんだから・・・!』
だが、弟の反論に遭ってなお、兄の考えは変わらなかった。
『こいつはアクマだけど、いいヤツだ!
ともだちならやっつけない。なかよくする!!』
そう言って、あっけからんと笑う。
兄の口調に呆れるほど迷いがなかった。
そんな兄を雪男は呆然と見つめた。ふと、黙ったままの養父に気づく。
もしや、兄のとんでもない答えに怒ってしまったのではないか、
と、慌てて視線を上げる。だが、そうではなかった・・・。
養父はうれしそうに笑っていた。
とても、とても・・・うれしそうに。
しわの刻まれ始めた目尻を細め、このうえもなくやさしく微笑んでいた。
ああ、そうか・・・と思う。
(あの時も・・・兄さんは、そう言ったんだ)
眼鏡の奥の両目をすっと細めた雪男が、力なく銃口を下ろす。
いつだってそうだ。いつだって・・・この兄は自分の考えもしない答えを導き出す。
どれほど荒唐無稽であれ、無謀であれ、それを迷いすらしない。
いっそ、羨ましいほどに。
(敵わない、な・・・)
雪男の唇の端から頬にかけ、諦観とも笑みともつかぬものが浮かぶ。
あんな養父の笑顔を思い出してしまったら、
自分にそれを阻むことなどできるはずがないじゃないか・・・。
長く重いため息をついた雪男が、使う必要のなくなった銃をホルスターに戻す。
背後でガタッと物音がした。
振り向くと、リュウだった。
例の地下遺跡から自分たちを追ってきたらしい異国の祓魔師は、
ぐっしょりと濡れた制服や灰色の髪から水滴を滴らせ、こちらを見つめていた。
否、正確には燐と、燐にしがみつく兎の悪魔を見つめていた。
雪男が思わず身を固くする。
てっきり、兄を糾弾するか兎の悪魔を祓おうとしてくるだろうとばかり思っていたのだが、
リュウは何も言わず、どこか遠くを見るような目で二人を見つめていた。
その顔に、一瞬だけ、ひどく淋しげなものがよぎった気がした。
失くしてしまった何かを悔やみ、想い出すような、そんな色が浮かぶ。
だが、すぐにそれを冷たい表情が覆い隠す。そっと視線を逸らした。
常の彼らしくない、逃げるような仕草だった。
(・・・どうしたんだ?)