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その脇にひらりと着地した燐は、人型に戻ったうさ麻呂を黒煙の中に見つけると、
自身の羽織っていたブレザーを脱ぎ、裸の肩にかけてやった。
その後ろで、うつむくその顔を真っ正面から見つめて。
「約束してくれ。もう人の記憶を喰わない・・・その力を二度と使わないって」
「・・・・・・」
うさ麻呂の目が燐のそれを見返す。穴が開くほどにじっと。
無言のまま、こくりとうなずいた。燐の顔がやわらかくほころぶ。
だが、すぐにその顔を険しくすると、二人の名を呼んだ。
「雪男!玲薇!」
そして、肩越しに振り返る。
黒煙の奥に立つ玲薇は複雑な表情で。
弟は、苦い顔でうさ麻呂へ銃口をむけていた・・・。
「燐・・・」
いつになく硬い表情。
どうするのだろう。どう、答えを出したのだろう?
雪男は身構え、玲薇はホルスターに手を伸ばす。
だが、彼の口から飛び出した言葉は、二人の想像を遥かに越えるものだった。
「コイツは、俺が引き取って弟にする」
燐はあっさりとそう言った。
「!?」
「なっ・・・」
玲薇は目を見開き、雪男は開いた口がふさがらない。
「何にするって?」
己の聞き間違いであることを願い、まじまじと兄を見つめる。
だが燐は、ふっとその頬をゆるめると、わびれぬ顔で告げた。
「ずっと考えてたんだ。ジジイだって、俺たちを引き取って育ててくれたじゃねーか。
・・・半分、悪魔と知っててさ・・・。俺はジジイが俺たちにしてくれたみたいにしたいんだ」
一瞬、燐の目が遠くを見るようになる。
そして、再び目の前の二人を映すと、ニカッと笑った。
一寸の曇りもためらいもない、晴れやかな笑顔だった。
「だから、俺たちは今日から四人兄弟だ!」
「・・・・・・・」
キョウダイ。やっぱり燐は、自分のこともキョウダイだと思っていたのだろう。
わずかな希望に期待していたのは、自分だけ・・・。
「いや、違うな。玲薇のこと、キョウダイって思ったことねぇから、
ここはやっぱ三人キョウダイ・・・か?」
一人首をひねって考える燐。
「燐・・・」
ずっとずっとそばにいた。でも、それはキョウダイとの関係だからじゃない。
好きだから。普通の恋人として、普通の人間のように恋をして。
キョウダイという高い壁は、俺たちに関係ないんだ。
「な?いいだろ?」
自身満々に、燐が玲薇に問う。
「わ、私・・・」
今なら言えるだろうか?自分の、燐への対する恋の気持ちを。
「兄さん・・・、自分が何を言ってるか、わかってるの!?」
だが、そう口を挟んだのは雪男だった。
玲薇まで兄の意見に賛成されては、困る。
「雪男・・・」
「大丈夫だって。メフィストには、俺から話をつけとくから」
「そういう問題じゃない!!」
どこまでもお気楽な兄の言葉に、雪男が低い声で怒鳴る。
「ソイツは悪魔なんだ!!」
「俺もサタンの息子だ」
「!!」
「・・・・・・」
一転して静かなその返答に、雪男が思わず息を呑む。
「その事実は消せない。でも、俺の親父はジジイ・・・父さんだけだ」
「・・・・・・」
「それに、コイツはいい奴なんだ。皆を幸せにしたくて、
ちょっと間違えちまったけどさ。仲良くしてやってくれよ。な?」
真摯(しんし)な顔をくしゃりと崩し、朗らかに笑う兄に、
返す言葉に詰まった雪男が、呆然とした表情を向ける。
兎の悪魔も驚いたように燐を見上げている。
その赤い瞳にじんわりと涙が浮かぶのが見えた。
大粒の涙がつうっと頬を伝う。
「り・・・ん・・・」
くしゃくしゃの顔でぎゅっと自分の足にしがみついてくる小さな悪魔の頭を、
燐がくしゃりと撫でる。その姿が、なぜか在りし日の父と重なり、
雪男の脳裏に、まるでフラッシュバックのように、ある光景が流れこんできた。
眼鏡の奥の両目をすっと細める。
(そうだ・・・あの時・・・)
自身の羽織っていたブレザーを脱ぎ、裸の肩にかけてやった。
その後ろで、うつむくその顔を真っ正面から見つめて。
「約束してくれ。もう人の記憶を喰わない・・・その力を二度と使わないって」
「・・・・・・」
うさ麻呂の目が燐のそれを見返す。穴が開くほどにじっと。
無言のまま、こくりとうなずいた。燐の顔がやわらかくほころぶ。
だが、すぐにその顔を険しくすると、二人の名を呼んだ。
「雪男!玲薇!」
そして、肩越しに振り返る。
黒煙の奥に立つ玲薇は複雑な表情で。
弟は、苦い顔でうさ麻呂へ銃口をむけていた・・・。
「燐・・・」
いつになく硬い表情。
どうするのだろう。どう、答えを出したのだろう?
雪男は身構え、玲薇はホルスターに手を伸ばす。
だが、彼の口から飛び出した言葉は、二人の想像を遥かに越えるものだった。
「コイツは、俺が引き取って弟にする」
燐はあっさりとそう言った。
「!?」
「なっ・・・」
玲薇は目を見開き、雪男は開いた口がふさがらない。
「何にするって?」
己の聞き間違いであることを願い、まじまじと兄を見つめる。
だが燐は、ふっとその頬をゆるめると、わびれぬ顔で告げた。
「ずっと考えてたんだ。ジジイだって、俺たちを引き取って育ててくれたじゃねーか。
・・・半分、悪魔と知っててさ・・・。俺はジジイが俺たちにしてくれたみたいにしたいんだ」
一瞬、燐の目が遠くを見るようになる。
そして、再び目の前の二人を映すと、ニカッと笑った。
一寸の曇りもためらいもない、晴れやかな笑顔だった。
「だから、俺たちは今日から四人兄弟だ!」
「・・・・・・・」
キョウダイ。やっぱり燐は、自分のこともキョウダイだと思っていたのだろう。
わずかな希望に期待していたのは、自分だけ・・・。
「いや、違うな。玲薇のこと、キョウダイって思ったことねぇから、
ここはやっぱ三人キョウダイ・・・か?」
一人首をひねって考える燐。
「燐・・・」
ずっとずっとそばにいた。でも、それはキョウダイとの関係だからじゃない。
好きだから。普通の恋人として、普通の人間のように恋をして。
キョウダイという高い壁は、俺たちに関係ないんだ。
「な?いいだろ?」
自身満々に、燐が玲薇に問う。
「わ、私・・・」
今なら言えるだろうか?自分の、燐への対する恋の気持ちを。
「兄さん・・・、自分が何を言ってるか、わかってるの!?」
だが、そう口を挟んだのは雪男だった。
玲薇まで兄の意見に賛成されては、困る。
「雪男・・・」
「大丈夫だって。メフィストには、俺から話をつけとくから」
「そういう問題じゃない!!」
どこまでもお気楽な兄の言葉に、雪男が低い声で怒鳴る。
「ソイツは悪魔なんだ!!」
「俺もサタンの息子だ」
「!!」
「・・・・・・」
一転して静かなその返答に、雪男が思わず息を呑む。
「その事実は消せない。でも、俺の親父はジジイ・・・父さんだけだ」
「・・・・・・」
「それに、コイツはいい奴なんだ。皆を幸せにしたくて、
ちょっと間違えちまったけどさ。仲良くしてやってくれよ。な?」
真摯(しんし)な顔をくしゃりと崩し、朗らかに笑う兄に、
返す言葉に詰まった雪男が、呆然とした表情を向ける。
兎の悪魔も驚いたように燐を見上げている。
その赤い瞳にじんわりと涙が浮かぶのが見えた。
大粒の涙がつうっと頬を伝う。
「り・・・ん・・・」
くしゃくしゃの顔でぎゅっと自分の足にしがみついてくる小さな悪魔の頭を、
燐がくしゃりと撫でる。その姿が、なぜか在りし日の父と重なり、
雪男の脳裏に、まるでフラッシュバックのように、ある光景が流れこんできた。
眼鏡の奥の両目をすっと細める。
(そうだ・・・あの時・・・)