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幽霊列車の巨躯が、橋と壁面をつなぐトンネルの入り口に突っ込んだのだ。
壁や天井に頭をぶつけながら、狭いトンネル内を幽霊列車がひた走る。
なんとか体勢を立て直した燐が、改めてうさ麻呂を見すえる。
「どんなに辛くっても、悲しくっても、忘れちゃいけないことがあるんだ」
「・・・・・・」
「俺はジジイとの思い出がどんなに辛くったって、決して忘れない・・・。忘れちゃいけないんだ」
燐の脳裏に、養父が死んだ時の光景がよぎる。
胸が切り裂かれ、腸がねじきれるような痛みを、押し殺すでも、
目を逸らすでもなく、しっかりと抱きしめた。
やがて、凄惨(せいさん)な光景は、幼い日、
弟と玲薇と養父にまとわりついて遊んだ幸せなものへと変わっていく。
思い出の中の養父は、やさしい顔で笑っている。
痛みとぬくもりが胸の中で深く混じり合う。
「楽しいことだって、辛いことだって、両方ひっくるめて思い出だろ?
それを忘れて、本当に幸せになれんのか?」
うさ麻呂は答えない。
玲薇はただ、燐とうさ麻呂を見届ける。
燐がいくらやさしく手をさしのべても、うさ麻呂が反撃するなら、攻撃するだけ。
うさ麻呂と過ごした日々が、つまらなかったわけではない。
寧ろ逆だ。だからこそ・・・。
ぐっとこらえる玲薇を見て、雪男は兄を見て、
押し潰されたような声で、かすかにつぶやいた。
「兄さん・・・」
うさ麻呂はお面をつけたまま、じっと燐を見つめている。
その小さな身体から、ためらいが、葛藤が、苦悩が、痛みが伝わってくるようだった。
燐は何も言わず、ただ、うさ麻呂の言葉を待った。
「・・・りん」
うさ麻呂がゆっくりと口を開く。
刹那。
「うわ!?」
ふわりと身体が宙に浮いたと思うと、凄まじい衝撃と爆音が、燐の身体を包んだ。
幽霊列車が地面を突き破って外に飛び出したのだとわかった時には、
空中に投げ出されていた。
瓦礫が、うさ麻呂が、雪男が、玲薇が宙に舞っている。
それを呆然と見つめる燐の身体も無防備に空を舞っていた。
風圧で身動きが取れない。幽霊列車が瓦礫の陰からこちらを狙っている。
燐が殺った目玉が、ぼこっと再生し、陥没した肉の下に巨大な口が生まれる。
「っ・・・!」
「「!?」」
「リニュウ!?」
宙を舞っていた身体が、自由を取り戻す。
あの場所から飛んできてくれたリニュウが、
玲薇の近くにいた雪男とともに背に乗せた。
《へっ。やっぱおれは、ちからしごとはむいてねぇ》
「自分でも承知済みってわけね。でも、ありがとう」
《・・・・・・》
いつしか、主人に礼を言われることが嬉しく思う自分がいる。
「うさ麻呂!」
「「!」」
燐の叫びに、彼の姿を探しみれば、降魔剣に手をかけ、一気にそれを引き抜く姿が。
瞬時に、燃え上がる青い炎が燐の身体を包みこんだ。
その先には、悪魔の赤い舌に身体を絡まれそうなうさ麻呂が。
「うおりゃああぁあっ!!」
降魔剣を大きく振り上げ、燐がうさ麻呂ごと幽霊列車を一太刀に両断する。
しかし、青い炎はうさ麻呂を避け、幽霊列車を焼き尽くした。
《ヴゥヴヴ・・・ヴォォオオ・・・!!》
幽霊列車の断末魔の叫びが大気を震わせ、闇夜に響きわたる。
兎のお面にピシッと亀裂が走った。割れたお面の下からうさ麻呂の表情が現れる。
その赤い瞳に、青い炎がゆらめく。
「・・・り・・・ん・・・」
まがまがしいまでに青い。けれどやさしい光が夜空を染め上げる。
やがて、地表に崩れ落ちた幽霊列車の残骸が、骨と煙だけを残して消え去った。
壁や天井に頭をぶつけながら、狭いトンネル内を幽霊列車がひた走る。
なんとか体勢を立て直した燐が、改めてうさ麻呂を見すえる。
「どんなに辛くっても、悲しくっても、忘れちゃいけないことがあるんだ」
「・・・・・・」
「俺はジジイとの思い出がどんなに辛くったって、決して忘れない・・・。忘れちゃいけないんだ」
燐の脳裏に、養父が死んだ時の光景がよぎる。
胸が切り裂かれ、腸がねじきれるような痛みを、押し殺すでも、
目を逸らすでもなく、しっかりと抱きしめた。
やがて、凄惨(せいさん)な光景は、幼い日、
弟と玲薇と養父にまとわりついて遊んだ幸せなものへと変わっていく。
思い出の中の養父は、やさしい顔で笑っている。
痛みとぬくもりが胸の中で深く混じり合う。
「楽しいことだって、辛いことだって、両方ひっくるめて思い出だろ?
それを忘れて、本当に幸せになれんのか?」
うさ麻呂は答えない。
玲薇はただ、燐とうさ麻呂を見届ける。
燐がいくらやさしく手をさしのべても、うさ麻呂が反撃するなら、攻撃するだけ。
うさ麻呂と過ごした日々が、つまらなかったわけではない。
寧ろ逆だ。だからこそ・・・。
ぐっとこらえる玲薇を見て、雪男は兄を見て、
押し潰されたような声で、かすかにつぶやいた。
「兄さん・・・」
うさ麻呂はお面をつけたまま、じっと燐を見つめている。
その小さな身体から、ためらいが、葛藤が、苦悩が、痛みが伝わってくるようだった。
燐は何も言わず、ただ、うさ麻呂の言葉を待った。
「・・・りん」
うさ麻呂がゆっくりと口を開く。
刹那。
「うわ!?」
ふわりと身体が宙に浮いたと思うと、凄まじい衝撃と爆音が、燐の身体を包んだ。
幽霊列車が地面を突き破って外に飛び出したのだとわかった時には、
空中に投げ出されていた。
瓦礫が、うさ麻呂が、雪男が、玲薇が宙に舞っている。
それを呆然と見つめる燐の身体も無防備に空を舞っていた。
風圧で身動きが取れない。幽霊列車が瓦礫の陰からこちらを狙っている。
燐が殺った目玉が、ぼこっと再生し、陥没した肉の下に巨大な口が生まれる。
「っ・・・!」
「「!?」」
「リニュウ!?」
宙を舞っていた身体が、自由を取り戻す。
あの場所から飛んできてくれたリニュウが、
玲薇の近くにいた雪男とともに背に乗せた。
《へっ。やっぱおれは、ちからしごとはむいてねぇ》
「自分でも承知済みってわけね。でも、ありがとう」
《・・・・・・》
いつしか、主人に礼を言われることが嬉しく思う自分がいる。
「うさ麻呂!」
「「!」」
燐の叫びに、彼の姿を探しみれば、降魔剣に手をかけ、一気にそれを引き抜く姿が。
瞬時に、燃え上がる青い炎が燐の身体を包みこんだ。
その先には、悪魔の赤い舌に身体を絡まれそうなうさ麻呂が。
「うおりゃああぁあっ!!」
降魔剣を大きく振り上げ、燐がうさ麻呂ごと幽霊列車を一太刀に両断する。
しかし、青い炎はうさ麻呂を避け、幽霊列車を焼き尽くした。
《ヴゥヴヴ・・・ヴォォオオ・・・!!》
幽霊列車の断末魔の叫びが大気を震わせ、闇夜に響きわたる。
兎のお面にピシッと亀裂が走った。割れたお面の下からうさ麻呂の表情が現れる。
その赤い瞳に、青い炎がゆらめく。
「・・・り・・・ん・・・」
まがまがしいまでに青い。けれどやさしい光が夜空を染め上げる。
やがて、地表に崩れ落ちた幽霊列車の残骸が、骨と煙だけを残して消え去った。