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少年に向けて必死に片手を伸ばした。
でも、少年はあの日のようにそれを握り返してはくれなかった。
少年が苦しげな顔であとずさる。胸が鋭い刃物で切り刻まれたかのように痛んだ。
なおも追いすがろうとする自分を、しかし、真っ赤な棍が阻んだ。
その先で不気味な面を被った祓魔師がこちらを見つめていた。
やはり、あの時に祓っておくべきだった。
と、低い声で言う。
その冷たさに背中がゾクッとした。
『ちがう!!ちがうのじゃ!!』
懸命に叫んだ。声の限り叫んだ。でも、誰にも届かなかった。
封じこめられる前に見た少年の顔は、泣いているようだった。
(・・・ちが・・・う・・・・・)
彼にだけはわかってほしかった。あったかいキモチをくれた、
シアワセをくれた、大好きな彼にだけは・・・。
(ちがう、の・・・じゃ・・・)
暗い闇の中で、永劫とも思える孤独な時の中で、その言葉だけを繰り返した。
次にまぶたを開けたのはずっと時が経ってからだった。
あれからどれだけの時間が過ぎたのかわからない。
『お前、ケガは!?どっか痛いとこねーか!?』
乱暴な、けれどやさしい声が聞こえた。
目の前にいる男の顔が、なぜか、あの日の少年と重なって見えた。
(・・・ちが・・・う)
あまりに長く声帯を使っていなかったせいだろう。
つぶやいた言葉は、声にならなかった。
再びまぶたを閉じる。
『オイ!寝るな!!目を開けろ!オイ!!』
また、あの声がする。
なぜ、コイツはこんなに必死になっているんだろう。
そういえば、あの日の少年もこんな風に自分をゆさぶり、声をかけてくれた・・・。
しきりに身体をゆさぶる手のぬくもりが、ひどく懐かしくて、あたたかくて・・・悲しかった。
「ちがう・・・ちがうのじゃ・・・」
辛い記憶から抜け出したうさ麻呂は、お面の下でポロポロと涙をこぼした。
大粒の涙がレーンを濡らす。
その時、背後で小さな足音が聞こえた。
振り向いたうさ麻呂が、闇に包まれた線路の奥に視線を据える。
ガチャッと、何かの音も聞こえる。視線の先には、
玲薇の手を制する燐の姿があった。
切ない顔でこちらを見つめている。
「り・・・ん」
「・・・・・・」
お面の下の両目からこぼれた涙が濡れた頬を伝い、ぽとりと落ちた。
落ち合ったリュウとともに、雪男が地下鉄内に入ると、
ホームから線路上に至るまでコールタールがうじゃうじゃと湧いていた。
片腕で払いながら線路に下りる。
(どっちへ行ったんだ・・・)
前と後、まっすぐ延びるレーンを見やり、雪男が背後のリュウに尋ねる。
「二手に分かれますか?」
刹那、地響きが聞こえた。視界がぐらぐらとゆれ、身体が深く沈む。
「地・・・震?」
「この気配・・・」
すっとその双眸を鋭くしたリュウが、いまいましげにつぶやく。
「どうやら、幽霊列車もお出ましのようだぞ」
りん・・・と、かすれた声で名を呼んだ後、うさ麻呂は何も言わず、
ただボロボロと涙をこぼし続けた。
玲薇はそんなうさ麻呂を見て、銃を降ろす。
燐は何をするのかと見れば、彼はそれを見つめているばかり。
すると、突然の地響きに顔を上げる。
直後、足下が激しくゆれ、地面が大きく突き上げられた。
「おぉ!?」
「っ・・・!」
周囲の地面に大きな亀裂が走っている。
「ちょ、これって・・・」
「な、何だこりゃ」
逃げる間もなく、すり鉢状に地面が抜け落ちる。
落ちた先は硬い石の感触がした。ともに落ちたうさ麻呂は、
燐のとなりに四本足でひらりと着地する。
でも、少年はあの日のようにそれを握り返してはくれなかった。
少年が苦しげな顔であとずさる。胸が鋭い刃物で切り刻まれたかのように痛んだ。
なおも追いすがろうとする自分を、しかし、真っ赤な棍が阻んだ。
その先で不気味な面を被った祓魔師がこちらを見つめていた。
やはり、あの時に祓っておくべきだった。
と、低い声で言う。
その冷たさに背中がゾクッとした。
『ちがう!!ちがうのじゃ!!』
懸命に叫んだ。声の限り叫んだ。でも、誰にも届かなかった。
封じこめられる前に見た少年の顔は、泣いているようだった。
(・・・ちが・・・う・・・・・)
彼にだけはわかってほしかった。あったかいキモチをくれた、
シアワセをくれた、大好きな彼にだけは・・・。
(ちがう、の・・・じゃ・・・)
暗い闇の中で、永劫とも思える孤独な時の中で、その言葉だけを繰り返した。
次にまぶたを開けたのはずっと時が経ってからだった。
あれからどれだけの時間が過ぎたのかわからない。
『お前、ケガは!?どっか痛いとこねーか!?』
乱暴な、けれどやさしい声が聞こえた。
目の前にいる男の顔が、なぜか、あの日の少年と重なって見えた。
(・・・ちが・・・う)
あまりに長く声帯を使っていなかったせいだろう。
つぶやいた言葉は、声にならなかった。
再びまぶたを閉じる。
『オイ!寝るな!!目を開けろ!オイ!!』
また、あの声がする。
なぜ、コイツはこんなに必死になっているんだろう。
そういえば、あの日の少年もこんな風に自分をゆさぶり、声をかけてくれた・・・。
しきりに身体をゆさぶる手のぬくもりが、ひどく懐かしくて、あたたかくて・・・悲しかった。
「ちがう・・・ちがうのじゃ・・・」
辛い記憶から抜け出したうさ麻呂は、お面の下でポロポロと涙をこぼした。
大粒の涙がレーンを濡らす。
その時、背後で小さな足音が聞こえた。
振り向いたうさ麻呂が、闇に包まれた線路の奥に視線を据える。
ガチャッと、何かの音も聞こえる。視線の先には、
玲薇の手を制する燐の姿があった。
切ない顔でこちらを見つめている。
「り・・・ん」
「・・・・・・」
お面の下の両目からこぼれた涙が濡れた頬を伝い、ぽとりと落ちた。
落ち合ったリュウとともに、雪男が地下鉄内に入ると、
ホームから線路上に至るまでコールタールがうじゃうじゃと湧いていた。
片腕で払いながら線路に下りる。
(どっちへ行ったんだ・・・)
前と後、まっすぐ延びるレーンを見やり、雪男が背後のリュウに尋ねる。
「二手に分かれますか?」
刹那、地響きが聞こえた。視界がぐらぐらとゆれ、身体が深く沈む。
「地・・・震?」
「この気配・・・」
すっとその双眸を鋭くしたリュウが、いまいましげにつぶやく。
「どうやら、幽霊列車もお出ましのようだぞ」
りん・・・と、かすれた声で名を呼んだ後、うさ麻呂は何も言わず、
ただボロボロと涙をこぼし続けた。
玲薇はそんなうさ麻呂を見て、銃を降ろす。
燐は何をするのかと見れば、彼はそれを見つめているばかり。
すると、突然の地響きに顔を上げる。
直後、足下が激しくゆれ、地面が大きく突き上げられた。
「おぉ!?」
「っ・・・!」
周囲の地面に大きな亀裂が走っている。
「ちょ、これって・・・」
「な、何だこりゃ」
逃げる間もなく、すり鉢状に地面が抜け落ちる。
落ちた先は硬い石の感触がした。ともに落ちたうさ麻呂は、
燐のとなりに四本足でひらりと着地する。