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思わず浮かんだ己の言葉に、ぎょっとなる。
そうだ。アレは・・・。
「親父・・・っ!!」
大声で叫んだとたん、目の前の幻影がゆらいだ。
まるでフラッシュバックのようにさまざまな光景が脳裏をよぎっていく。
『それに、今日のぶんの宿題は?ちゃんとやってあるの?』
そうだよ。宿題あったじゃん。雪男のヤツがクソこまかいスケジュール表、作ってさ。
『こんなとこ入ってきたらあかんやろ?』
何やってんだよ?志摩。お前、虫、大っ嫌いじゃねーか。
なんで、平気な顔で虫つかんだりしてんだよ・・・?
『やめてぇー!!』
・・・玲薇の叫び、聞こえた気がしたんだ。
それに、アイツに何も言わずにここに来たのにもおかしかった。
だったら、祭りに行こうぜ、雪男に内緒でさって一言声かけるのに。
そして、勝呂たち。アイツら毎日、任務で忙しくて・・・、
ピンク色になったりオレンジ色になったりしちゃあ、風呂借りに来たんだよな。
そのついでに、うさ麻呂のヤツとも遊んでくれて・・・。皆で三角ベースして。
また、任務に戻っていって。
でも、俺と玲薇としえみは、謹慎中だから任務には参加してなくて・・・。
(そうだ・・・しえみ・・・)
脳裏に、驚いたような顔で自分を見つめているしえみの姿が浮かんだ。
左の頬に貼られた絆創膏に胸の奥がズキンとうずいた。
『奥村先生。管理責任者として貴方がついていながら・・・』
審問官の言葉に、深く頭を下げた雪男の・・・真っ白な布で吊った右腕。
「なんなんだよ、これ・・・どうして、俺・・・」
忘れて・・・と、つぶやく燐の耳に、うさ麻呂の声が届いた。
「せっかくたべてやったのに、おもいだしてしまったのか」
「!?」
顔を上げると、神社の境内に戻っていた。
いつの間にか石畳の上に這いつくばるようにしゃがんでいる。
兎のお面をつけたうさ麻呂が、暗闇に赤く染まった鳥居の前に立っていた。
消えたはずの雪洞の灯りが闇間にゆれる。
「うさ・・・麻呂・・・」
お面から伸びた二つの耳が、奇妙に長くなっている。まるで、本当の兎のようだ。
背後に、もじゃもじゃとした巨大な尻尾のようなものが蠢いている。
「イヤなこと、つらいこと、みんなうさマロがたべてやるのじゃ」
「お前が・・・記憶を・・・」
にぃっと唇の端を吊り上げ、うさ麻呂が微笑む。
その声はどこまでも無邪気なのに、なぜかうすら寒かった。
「お前が封印されていた理由は、これか・・・」
燐の顔が苦痛に歪む。兎のお面が嗤ったように見えた。
直後、もじゃもじゃとした巨大な尻尾が燐の両腕に、首筋に絡みついてきた。
視界が赤黒い光に覆われる。
また、うさ麻呂が記憶を喰らおうとしているのだとわかった。
嫌だ。忘れたくない。お願いだから、奪わないでくれ。消さないでくれ。
(俺から、父さんの記憶を消さないでくれ・・・!!)
脳裏に、あのやさしい笑顔が浮かぶ。
ゆっくりと食まれ、消されゆくそれに、燐が絶叫する。
「やめろーっ!!」
うさ麻呂の小さな身体がびくっと震えた。
とっさのところで消されなかった大切な記憶を、燐がしっかりと抱きしめる。
「なぜじゃ・・・なぜこばむのじゃ」
今にも泣き出しそうな声だった。
「うさマロは、りんからつらいきおくをくってやりたいだけなのに・・・」
「・・・・・・」
困惑した顔で自分を見つめるうさ麻呂を、燐もまた困惑した表情で見つめた。
言葉が喉の奥にぺったりと貼りついてしまったみたいに出てこない。
燐の瞳に気圧されるように、うさ麻呂がその場で小さくあとずさる。
燐の身体を捕らえている尻尾の力がわずかにゆるんだ。
刹那、風のように現れたリュウが、棍の先で、
燐を絡め取っている尻尾もろともうさ麻呂を弾き飛ばした。
「っ!!」
支えを失った燐が石畳の上に倒れこむ。
倒れたまま首だけをもたげた燐の視界に、
お面を被った一羽の兎が入った。
小さな兎は前足を伸ばして石畳の上にひらりと着地した。
記憶を喰われかけた後遺症か、力の入らない身体を無理やり起こし、
燐が呆然とその名を呼ぶ。
「・・・うさ・・・麻呂?」
棍を構え直したリュウが、すっと燐の前に歩み出ると、
お面の下から鋭い歯をむき出しにする仔兎・・・うさ麻呂と対峙した。
その端整な顔が暗い笑みを浮かべる。
そうだ。アレは・・・。
「親父・・・っ!!」
大声で叫んだとたん、目の前の幻影がゆらいだ。
まるでフラッシュバックのようにさまざまな光景が脳裏をよぎっていく。
『それに、今日のぶんの宿題は?ちゃんとやってあるの?』
そうだよ。宿題あったじゃん。雪男のヤツがクソこまかいスケジュール表、作ってさ。
『こんなとこ入ってきたらあかんやろ?』
何やってんだよ?志摩。お前、虫、大っ嫌いじゃねーか。
なんで、平気な顔で虫つかんだりしてんだよ・・・?
『やめてぇー!!』
・・・玲薇の叫び、聞こえた気がしたんだ。
それに、アイツに何も言わずにここに来たのにもおかしかった。
だったら、祭りに行こうぜ、雪男に内緒でさって一言声かけるのに。
そして、勝呂たち。アイツら毎日、任務で忙しくて・・・、
ピンク色になったりオレンジ色になったりしちゃあ、風呂借りに来たんだよな。
そのついでに、うさ麻呂のヤツとも遊んでくれて・・・。皆で三角ベースして。
また、任務に戻っていって。
でも、俺と玲薇としえみは、謹慎中だから任務には参加してなくて・・・。
(そうだ・・・しえみ・・・)
脳裏に、驚いたような顔で自分を見つめているしえみの姿が浮かんだ。
左の頬に貼られた絆創膏に胸の奥がズキンとうずいた。
『奥村先生。管理責任者として貴方がついていながら・・・』
審問官の言葉に、深く頭を下げた雪男の・・・真っ白な布で吊った右腕。
「なんなんだよ、これ・・・どうして、俺・・・」
忘れて・・・と、つぶやく燐の耳に、うさ麻呂の声が届いた。
「せっかくたべてやったのに、おもいだしてしまったのか」
「!?」
顔を上げると、神社の境内に戻っていた。
いつの間にか石畳の上に這いつくばるようにしゃがんでいる。
兎のお面をつけたうさ麻呂が、暗闇に赤く染まった鳥居の前に立っていた。
消えたはずの雪洞の灯りが闇間にゆれる。
「うさ・・・麻呂・・・」
お面から伸びた二つの耳が、奇妙に長くなっている。まるで、本当の兎のようだ。
背後に、もじゃもじゃとした巨大な尻尾のようなものが蠢いている。
「イヤなこと、つらいこと、みんなうさマロがたべてやるのじゃ」
「お前が・・・記憶を・・・」
にぃっと唇の端を吊り上げ、うさ麻呂が微笑む。
その声はどこまでも無邪気なのに、なぜかうすら寒かった。
「お前が封印されていた理由は、これか・・・」
燐の顔が苦痛に歪む。兎のお面が嗤ったように見えた。
直後、もじゃもじゃとした巨大な尻尾が燐の両腕に、首筋に絡みついてきた。
視界が赤黒い光に覆われる。
また、うさ麻呂が記憶を喰らおうとしているのだとわかった。
嫌だ。忘れたくない。お願いだから、奪わないでくれ。消さないでくれ。
(俺から、父さんの記憶を消さないでくれ・・・!!)
脳裏に、あのやさしい笑顔が浮かぶ。
ゆっくりと食まれ、消されゆくそれに、燐が絶叫する。
「やめろーっ!!」
うさ麻呂の小さな身体がびくっと震えた。
とっさのところで消されなかった大切な記憶を、燐がしっかりと抱きしめる。
「なぜじゃ・・・なぜこばむのじゃ」
今にも泣き出しそうな声だった。
「うさマロは、りんからつらいきおくをくってやりたいだけなのに・・・」
「・・・・・・」
困惑した顔で自分を見つめるうさ麻呂を、燐もまた困惑した表情で見つめた。
言葉が喉の奥にぺったりと貼りついてしまったみたいに出てこない。
燐の瞳に気圧されるように、うさ麻呂がその場で小さくあとずさる。
燐の身体を捕らえている尻尾の力がわずかにゆるんだ。
刹那、風のように現れたリュウが、棍の先で、
燐を絡め取っている尻尾もろともうさ麻呂を弾き飛ばした。
「っ!!」
支えを失った燐が石畳の上に倒れこむ。
倒れたまま首だけをもたげた燐の視界に、
お面を被った一羽の兎が入った。
小さな兎は前足を伸ばして石畳の上にひらりと着地した。
記憶を喰われかけた後遺症か、力の入らない身体を無理やり起こし、
燐が呆然とその名を呼ぶ。
「・・・うさ・・・麻呂?」
棍を構え直したリュウが、すっと燐の前に歩み出ると、
お面の下から鋭い歯をむき出しにする仔兎・・・うさ麻呂と対峙した。
その端整な顔が暗い笑みを浮かべる。