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「りーん!どこじゃ!?」
ギュウギュウにごった返す人ごみの中で、うさ麻呂が必死に声を張り上げる。
すると、川べりにはっぴを着た燐らしき背中が見えた。
うさ麻呂の顔がぱっと明るくなる。
「りん!!」
人と人の間の狭い隙間からようやく抜け出したうさ麻呂が、燐のもとへ駆け寄る。
「どこへいっておったのじゃ!」
そう言って飛びつく。
「あ?」
「!?」
だが、振り向いたのは、知らない人間だった。燐のあたたかい笑顔ではなく、
胡散臭そうにジロリと向けられる眼差しの冷たさに、うさ麻呂がその場に凍りつく。
「白鳥さんの知り合いっスか?」
「いや、知らね」
そっけなく答えると、うさ麻呂の手を鬱陶しそうに振りほどいた。
「"年男"が大兎をたおすぞ!!」
「行こうぜ」
広場の方から上がる歓声に、連れの二人をうながし、行ってしまう。
「・・・・・・」
ポツンと取り残されたうさ麻呂の背中に、人の足がドンとぶつかる。
小柄なうさ麻呂は弾き飛ばされるようにベチャッと地面に倒れた。
そのまま、しばらくそうしていると、長い腕にひょいと持ち上げられた。
「りん・・・っ!!」
うさ麻呂の顔がぱっと明るくなる。
しかし、振り向いた先にいたのは燐ではなかった。
見たことのない熊のような大柄の男がこちらを見下ろしている。
「大丈夫か?坊主」
うさ麻呂の笑顔が消える。男のとなりに立っている浴衣姿の女が、
うさ麻呂の目の高さにしゃがんで、やさしく尋ねてきた。
「坊や、お父さんとお母さんは?」
うさ麻呂は女と男の顔を交互に見やった。
あうあうと、言葉にならない声をもらす。
「はぐれたのか?」
「名前は?住所は言える?どこの町から来たの?」
男も女も、心配そうに尋ねてくる。だが、それがかえってうさ麻呂の不安をあおった。
りん、りん・・・と胸の中で助けを呼ぶ。喉の奥が、なぜかカラカラで、両目がじんわりと潤んだ。
「・・・ま・・・まちは・・・」
かすれた声でつぶやいた瞬間、あたたかい手のひらが、うさ麻呂の肩をつかんだ。
ぎゅっと痛いほどに指に力がこもる。
「何やってんだよ、うさ麻呂!!」
振り返った先には、今度こそ、本物の燐が立っていた。
息を切らせ、怒ったような顔でうさ麻呂を見つめている。
「心配するだろ!?勝手にどっか行くなよな!!」
燐はそう言うと、男女に小さく頭を下げた。
スイマセン、と謝っている。
「よかったわね、お兄さんが見つけてくれて」
「じゃあな。坊主。もう、兄ちゃんとはぐれるなよ?」
女が笑顔で手を振り、男がうさ麻呂の頭をごしごしと撫でて去っていく。
うさ麻呂はそんな二人の後ろ姿をぼんやりと眺めた。
燐がうさ麻呂の頭にポンと手を置く。
「ほら、皆のところに戻んぞ」
その声は、もう怒ってはいなかった。
「そーいや、玲薇の奴こねーのかな?」
連絡をしたっきり、何もない。
うさ麻呂に背を向け、先に行こうとする燐の手に、気づけば手を伸ばしていた。
ぎゅっと握りしめると、燐が驚いたような顔で振り向いた。
「うさ麻呂?」
「・・・・・・・」
無言で、燐の腰のあたりにしがみつく。
燐の身体はあたたかかった。
檻の中に入ってまで一緒に寝てくれた人のぬくもりに、
うさ麻呂の心が切なさにちぎれそうになる。
燐がいる。そばにいてくれる。
このやさしい手を、もう放したくない。
でも、燐のそばには常に玲薇がいる。
自分が一番近くにはいれないのか・・・。
はぐれていた時の恐怖は薄らいだのに、別の恐怖がうさ麻呂の心を支配する。
あの真っ暗な闇の中に戻りたくない。あそこは、とても淋しい。
(もう・・・ひとりぼっちは・・・イヤじゃ・・・)
胸の奥に次々とこみ上げてくる想いに、
少しでも気をゆるめると涙があふれ出てしまいそうで、
かじりつくように燐にしがみついた。
そんなうさ麻呂を戸惑ったように見つめていた燐の目が、
ふっとやさしくゆるんだ。前髪のあたりをくしゃりとかきまぜた手が、
ひょいと小さな身体を抱え上げる。
「皆のとこに戻る前に、ちょっと寄り道してくか?」
悪戯っ子みたいな顔で笑う燐の声は、お日様みたいにやさしくて、
うさ麻呂は思わずこくんとうなずいていた。
ギュウギュウにごった返す人ごみの中で、うさ麻呂が必死に声を張り上げる。
すると、川べりにはっぴを着た燐らしき背中が見えた。
うさ麻呂の顔がぱっと明るくなる。
「りん!!」
人と人の間の狭い隙間からようやく抜け出したうさ麻呂が、燐のもとへ駆け寄る。
「どこへいっておったのじゃ!」
そう言って飛びつく。
「あ?」
「!?」
だが、振り向いたのは、知らない人間だった。燐のあたたかい笑顔ではなく、
胡散臭そうにジロリと向けられる眼差しの冷たさに、うさ麻呂がその場に凍りつく。
「白鳥さんの知り合いっスか?」
「いや、知らね」
そっけなく答えると、うさ麻呂の手を鬱陶しそうに振りほどいた。
「"年男"が大兎をたおすぞ!!」
「行こうぜ」
広場の方から上がる歓声に、連れの二人をうながし、行ってしまう。
「・・・・・・」
ポツンと取り残されたうさ麻呂の背中に、人の足がドンとぶつかる。
小柄なうさ麻呂は弾き飛ばされるようにベチャッと地面に倒れた。
そのまま、しばらくそうしていると、長い腕にひょいと持ち上げられた。
「りん・・・っ!!」
うさ麻呂の顔がぱっと明るくなる。
しかし、振り向いた先にいたのは燐ではなかった。
見たことのない熊のような大柄の男がこちらを見下ろしている。
「大丈夫か?坊主」
うさ麻呂の笑顔が消える。男のとなりに立っている浴衣姿の女が、
うさ麻呂の目の高さにしゃがんで、やさしく尋ねてきた。
「坊や、お父さんとお母さんは?」
うさ麻呂は女と男の顔を交互に見やった。
あうあうと、言葉にならない声をもらす。
「はぐれたのか?」
「名前は?住所は言える?どこの町から来たの?」
男も女も、心配そうに尋ねてくる。だが、それがかえってうさ麻呂の不安をあおった。
りん、りん・・・と胸の中で助けを呼ぶ。喉の奥が、なぜかカラカラで、両目がじんわりと潤んだ。
「・・・ま・・・まちは・・・」
かすれた声でつぶやいた瞬間、あたたかい手のひらが、うさ麻呂の肩をつかんだ。
ぎゅっと痛いほどに指に力がこもる。
「何やってんだよ、うさ麻呂!!」
振り返った先には、今度こそ、本物の燐が立っていた。
息を切らせ、怒ったような顔でうさ麻呂を見つめている。
「心配するだろ!?勝手にどっか行くなよな!!」
燐はそう言うと、男女に小さく頭を下げた。
スイマセン、と謝っている。
「よかったわね、お兄さんが見つけてくれて」
「じゃあな。坊主。もう、兄ちゃんとはぐれるなよ?」
女が笑顔で手を振り、男がうさ麻呂の頭をごしごしと撫でて去っていく。
うさ麻呂はそんな二人の後ろ姿をぼんやりと眺めた。
燐がうさ麻呂の頭にポンと手を置く。
「ほら、皆のところに戻んぞ」
その声は、もう怒ってはいなかった。
「そーいや、玲薇の奴こねーのかな?」
連絡をしたっきり、何もない。
うさ麻呂に背を向け、先に行こうとする燐の手に、気づけば手を伸ばしていた。
ぎゅっと握りしめると、燐が驚いたような顔で振り向いた。
「うさ麻呂?」
「・・・・・・・」
無言で、燐の腰のあたりにしがみつく。
燐の身体はあたたかかった。
檻の中に入ってまで一緒に寝てくれた人のぬくもりに、
うさ麻呂の心が切なさにちぎれそうになる。
燐がいる。そばにいてくれる。
このやさしい手を、もう放したくない。
でも、燐のそばには常に玲薇がいる。
自分が一番近くにはいれないのか・・・。
はぐれていた時の恐怖は薄らいだのに、別の恐怖がうさ麻呂の心を支配する。
あの真っ暗な闇の中に戻りたくない。あそこは、とても淋しい。
(もう・・・ひとりぼっちは・・・イヤじゃ・・・)
胸の奥に次々とこみ上げてくる想いに、
少しでも気をゆるめると涙があふれ出てしまいそうで、
かじりつくように燐にしがみついた。
そんなうさ麻呂を戸惑ったように見つめていた燐の目が、
ふっとやさしくゆるんだ。前髪のあたりをくしゃりとかきまぜた手が、
ひょいと小さな身体を抱え上げる。
「皆のとこに戻る前に、ちょっと寄り道してくか?」
悪戯っ子みたいな顔で笑う燐の声は、お日様みたいにやさしくて、
うさ麻呂は思わずこくんとうなずいていた。