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夢小説設定
深紅の光に包まれる男を、かたわらの台座の上から眺めているシュラ。
「上々・・・やるじゃねぇか」
そう言うと、唇の端を吊り上げる。
「ほんじゃ、こっちも」
自身の立っている魔法陣を見やり、パン、と柏手を打つ。
素早く印を結び、それに合わせて詠唱を開始する。
よどみないその詠唱に応じるように、魔法陣が青い光を放つ。
続いて、シュラの足下の床から現れた蛇がしなやかに蠢道(しゅんどう)しながら、
陣の中央へと這いずっていく。
蛇が円の中心で止まるのを見はからい、シュラが宙に印を切る。
直後、青白く燃え上がった蛇が、その場にぐしゃりと崩れ落ちる。
その身体が光の波紋となり、円の中心から外側へと瞬時に広がっていく。
やがて、シュラが立つ台座を覆っていた青い光が消え去り、
男のいる台座の赤い光だけが残った。そして、立坑全体に広がっていく。
深紅の光が坑道を包みこむ。
結界が張り直されたことを告げるその光に、
詠唱部隊からわっと歓声が上がった。
腰に手を当てたシュラが、ふうっと息を吐き出す。
男は深く被った編み笠の下から、感情の読みづらい眼差しを、
赤く染まる坑道の底へと向けていた。
幽霊列車の先頭車両の屋根を、匍匐前進の格好で進んでいる雪男と玲薇。
向かい風が強く、息つきもままらなかった玲薇の前に身体をやり、
風の抵抗を弱めてやる。
「雪男」
「大丈夫」
服を掴む形になるが、互い支えていれば怖くない。
前にいる雪男が動きを止めたので、玲薇はそこでやっと一息ついた。
だが、それもつかの間にしかすぎない。
「あと、五分・・・」
雪男は、自分に言い聞かせたのかもしれない。
ここに来るまで、雪男は話してくれたから。
『玲薇はいてくれるだけでいい』
『え・・・』
『いざとなったら、逃げ出せる準備だけしておいて』
私だって戦える。そう言おうとしたものの、ついていくので精一杯の今。
・・・今は、足手まといの何者でもない。
でも、気は引き締めなければ。役に立てるのなら、立ちたいから。
玲薇の心境なぞ知らず、雪男は眼鏡の奥の両目を細める。
その時、背後でドアが蹴り破られる音がした。
反射的に振り返った雪男に、玲薇もゆっくり顔を動かす。
車両と車両のつなぎ目から姿を現した燐の後頭部が映った。
この場にいるはずのないその姿に、雪男が眉をひそめる。
「・・・兄さん?」
「あ」
「雪男!」
後方の屋根を探していた燐が、振り向いて弟の名を叫ぶ。
そして、先頭車両の屋根によじ登ってきた。
「コイツを祓うの、ちょっと待ってくれ。今、しえみが霊を助けてんだ」
「「!?」」
一瞬の驚きの後で、険しい表情になった雪男。
「霊・・・?」
列車の中にいる霊を見ていない玲薇は首をかしげるも、
雪男のリアクションからしてとんでもないことが起こるのだろうと悟ってしまう。
「どういうこと?兄さん」
次の瞬間、大きく視界が開けた。三人の頭上に満点の星空が広がっている。
そして、列車と横に並んで飛ぶリニュウの姿。
今列車は、長いトンネルを抜け、正十字学園町をぐるりとまわる鉄橋の上を走っていた。
足下からぼこぼこという不気味な音が聞こえる。
視線を下げた雪男の顔が、強張った。
「!!」
いつの間にか、無数の浮腫(ふしゅ)が列車の表層に現れていた。
「ひっ」
思わず小さな悲鳴を上げる玲薇を抱き寄せ立ち上がらせる。
その浮腫は、それぞれが意思を持っているかのようにびくびくと蠢いている。
虚無界に戻るために正体を現すのは、午前0時のはずだ。
なのに、もう変化が始まっている・・・。
「上々・・・やるじゃねぇか」
そう言うと、唇の端を吊り上げる。
「ほんじゃ、こっちも」
自身の立っている魔法陣を見やり、パン、と柏手を打つ。
素早く印を結び、それに合わせて詠唱を開始する。
よどみないその詠唱に応じるように、魔法陣が青い光を放つ。
続いて、シュラの足下の床から現れた蛇がしなやかに蠢道(しゅんどう)しながら、
陣の中央へと這いずっていく。
蛇が円の中心で止まるのを見はからい、シュラが宙に印を切る。
直後、青白く燃え上がった蛇が、その場にぐしゃりと崩れ落ちる。
その身体が光の波紋となり、円の中心から外側へと瞬時に広がっていく。
やがて、シュラが立つ台座を覆っていた青い光が消え去り、
男のいる台座の赤い光だけが残った。そして、立坑全体に広がっていく。
深紅の光が坑道を包みこむ。
結界が張り直されたことを告げるその光に、
詠唱部隊からわっと歓声が上がった。
腰に手を当てたシュラが、ふうっと息を吐き出す。
男は深く被った編み笠の下から、感情の読みづらい眼差しを、
赤く染まる坑道の底へと向けていた。
幽霊列車の先頭車両の屋根を、匍匐前進の格好で進んでいる雪男と玲薇。
向かい風が強く、息つきもままらなかった玲薇の前に身体をやり、
風の抵抗を弱めてやる。
「雪男」
「大丈夫」
服を掴む形になるが、互い支えていれば怖くない。
前にいる雪男が動きを止めたので、玲薇はそこでやっと一息ついた。
だが、それもつかの間にしかすぎない。
「あと、五分・・・」
雪男は、自分に言い聞かせたのかもしれない。
ここに来るまで、雪男は話してくれたから。
『玲薇はいてくれるだけでいい』
『え・・・』
『いざとなったら、逃げ出せる準備だけしておいて』
私だって戦える。そう言おうとしたものの、ついていくので精一杯の今。
・・・今は、足手まといの何者でもない。
でも、気は引き締めなければ。役に立てるのなら、立ちたいから。
玲薇の心境なぞ知らず、雪男は眼鏡の奥の両目を細める。
その時、背後でドアが蹴り破られる音がした。
反射的に振り返った雪男に、玲薇もゆっくり顔を動かす。
車両と車両のつなぎ目から姿を現した燐の後頭部が映った。
この場にいるはずのないその姿に、雪男が眉をひそめる。
「・・・兄さん?」
「あ」
「雪男!」
後方の屋根を探していた燐が、振り向いて弟の名を叫ぶ。
そして、先頭車両の屋根によじ登ってきた。
「コイツを祓うの、ちょっと待ってくれ。今、しえみが霊を助けてんだ」
「「!?」」
一瞬の驚きの後で、険しい表情になった雪男。
「霊・・・?」
列車の中にいる霊を見ていない玲薇は首をかしげるも、
雪男のリアクションからしてとんでもないことが起こるのだろうと悟ってしまう。
「どういうこと?兄さん」
次の瞬間、大きく視界が開けた。三人の頭上に満点の星空が広がっている。
そして、列車と横に並んで飛ぶリニュウの姿。
今列車は、長いトンネルを抜け、正十字学園町をぐるりとまわる鉄橋の上を走っていた。
足下からぼこぼこという不気味な音が聞こえる。
視線を下げた雪男の顔が、強張った。
「!!」
いつの間にか、無数の浮腫(ふしゅ)が列車の表層に現れていた。
「ひっ」
思わず小さな悲鳴を上げる玲薇を抱き寄せ立ち上がらせる。
その浮腫は、それぞれが意思を持っているかのようにびくびくと蠢いている。
虚無界に戻るために正体を現すのは、午前0時のはずだ。
なのに、もう変化が始まっている・・・。